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天使に願いを (仮)  作者: タロ
(仮)
61/105

番外編 ドリームストーリー

サブタイトル通り、夢の話です。


寝静まったキャラクターたちの夢を覗き見ます。


「波ぁーーーーっ!」

 椿の掌から、エネルギー波が出た。

 ズガァンという凄まじい破壊音と共に、エネルギー波の当たった建物のように大きな岩が砕け散った。

「はぁ…はぁ…」

 体中の全てのエネルギーを使い切った椿は、膝に手をやりながら肩で息をしていた。

「今の俺では、この程度か…」

 額から流れる汗を拭い、椿は言った。

「もっとパワーが要るな」

 そう危機感を抱き、椿は、夢の中で修行に励んだ。



「わぁー、すごぉい!」

 お菓子で出来た家を前に、榎は歓声を上げた。

 その家の中から、住人であるリスのアマリリスが出て来て、言った。

「すごいだろ。食ってもいいぜ」

「えっ、いいの?」

 喜びを隠し切れず、榎は早速お菓子の家を食べようとした。

 だが。

「おいおい。いきなりかりんとうの柱から食うか?」

 と呆れを滲ませるアマリリスに止められた。

「えっ?ダメ?」と榎は、かりんとうに伸ばした手を止めた。

「ダメって…柱食ったら、家崩れるぞ。もう少し考えて食えよ」

「じゃあ、どうすればいいの?」

「ん~、まずはやっぱり屋根かな。屋根のクッキーなら、食べてもすぐに家が崩れる事もないしな」

「でも、そしたら雨とか振ったらマリーちゃん濡れちゃうよ。家具ならいいんじゃない?」

「いやいや、こっちも生活があるからなぁ。家として形だけの箱が残っても生活出来ないんじゃ、やってらんねぇしさぁ」

「じゃあ、どこなら食べてもイイの?」

「ん~。ギリ、ドアノブ」

「ホント?ドアノブ無かったら、家から出られないよ?」

「そうだよなぁ」

「あの…私、我慢するよ。どっかでお菓子買って食べる」

「そうしてくれる?」

 榎の夢の世界は、平和だった。



「あ、もう少し奥の方まで」

 カイは言った。

 しかし、せっかく大好きな女性・柊に膝枕してもらって耳かきしてもらっていたのに、興奮してしまい、寝ていられなかった。

 顔を紅潮させ、夢から覚めてガバッと起き上がった。

 起きて、カイは後悔した。

 なぜ、あの幸せを堪能しなかったのだ。なぜ、起きたのだ、と。

 ぼんやり覚えている幸せをもう一度味わいたく、カイはすぐに目を閉じ、夢の世界に入り込もうとした。

 だが、その夢の中の幸せが大き過ぎ、興奮して寝付けない、可哀想なカイだった。



「はい、いいですかペンギンさんたち」

 海の上に浮かぶ氷の上で、十六夜は声を張り上げた。

「ルールを確認します」

 横一列に並ぶペンギンを眺め、十六夜は言った。

「助走は十メートル。線の所で踏み切ったら、あとはお腹で氷の上を滑り進む。一番遠くまで進んだペンギンさんが、栄えあるキング・ペンギンですよ」

 十六夜の声に反応し、大勢のペンギンが口々に興奮の声を上げた。

「それじゃあ、行きますよ!」

 十六夜が言うと、ペンギンたちはレース前のスプリンター然とした緊張感を漲らせた。

 十六夜は右手を上げ、「ゴー!」とその腕を勢いよく振り降ろした。

「はい、ストップ!」

 スタートの合図の直後に発せられた十六夜の声に反応し、流れるように腹で氷の上を進んでいたペンギンたちは、何事かと動きを止めた。

「ペン太、踏切が線を越えてました!ファウルです!」

 ペン太と名指しで指摘されたペンギンは、悔しそうに地団太を踏んだ。

「いいですか。もう一度やりますが、次ファウルしたら失格ですよ」

 そう言われ、一回目以上の緊張感が、ペンギンたちに広がった。

 ペンギンたちは、気持ちを整え、十六夜の号令を待つ。

「それじゃあ、行きますよ」

 そう言い、十六夜は右手を上げた。

「ゴー!」

 一斉に助走して、ペンギンたちは腹で氷の上を滑り始めた。

「おっ…おっ…」

 一匹、また一匹と勢いを失くし、脱落していく。

 そして、その中で一匹、最後まで滑り続けたペンギンがいた。

「優勝は……キング・ペンギンは……ペン吉に決まりだぁ!」

 感動に声を震わせながら、十六夜は言った。

 ペンギンたちは、一斉にペン吉を祝福したそうだ。



「いい加減にしてください!」

 とうとう耐え切れなくなり、篝火は怒鳴った。

「私も、女優である前に一人の女なんですよ。何でプライベートまで細かく規制されなきゃならないんですか?」

 不穏な空気を嗅ぎ取り、周囲の人間が篝火に抑えるように言うのだが、篝火は止まらない。新しく貰った映画の台本をバシバシ叩きながら、さらに声を張り上げた。

「これも、映像化不可能と言われた作品を映画にするからって私を起用するのは仕方ないけど、あまりにも私におんぶにだっこじゃありません?スケジュールにしてもそう!もう少し演者のことを考えてください!」

 篝火の機嫌を損ねてしまい、誰もが映画の完成を危ぶんだ。

 しかしその時、篝火専属の敏腕マネージャーが動いた。

「何よ?」

 不満を撒き散らす篝火に、敏腕マネージャーは耳打ちした。

 途端に、篝火の表情に変化が生じた。

「えっ?エクレア買ってくれるの?」

 あと一押し、とさらに敏腕マネージャーは耳打ちする。

「えっ?二個も?」

 篝火は、コンビニスウィーツを買ってもらえると聞いて、失いかけていたヤル気を取り戻し、笑顔になった。

 無事に映画も撮り終わった。

 映画は大ヒット。

 エクレア、ちょー美味い。

 篝火は、最高の夢を見た。



「大きくても肩凝るだけ出し、いいことなんてないよ」

「ホント、胸が大きいってだけで似合う服も限られるしさぁ」

「高橋さんが頭なでてくれた~♡イイ子イイ子してくれた」

「あ、高橋さん、ダメです!今日お昼、餃子食べちゃったから」

「にゃへへ~…」

 柊は、眼を覚ました。

 呼吸が荒い。とんでもない夢を見た、そんな気がしたからだ。

 抱き枕が、不自然なほどに上下に綿が寄っていた。

 そういえば、そう思って胸に手を当てた。

 大きかったはずの胸は、いつも通りぺったんこだった。

「はぁ……」

 落胆し、柊は盛大な溜め息をついた。



「おっ…」

 石楠花は、目の前に立ちはだかる駄菓子を見つめた。

 駄菓子は、一体ではなかった。

 甘いの、しょっぱいの、辛いの、酸っぱいの、いろんな種類の駄菓子が大量に肩を組み、石楠花の前に壁の様に立ち塞がった。

「なんとまぁ…」

 石楠花は、その絶景に見惚れた。

 が、すぐに気付く。

「いやいやいや。有り得ないだろ、こんなん。これは、夢だな」

 そう察し、石楠花は頬っぺたをつねった。

「ほら、痛くない」

 石楠花は、これは夢であると確信した。

「だが…ききっ」石楠花は、不気味な笑みを浮かべた。「いくら夢だからと言って、みすみす腐らせるのもバカな話だ」

 石楠花は、片っ端から駄菓子を食べた。

 食べ切れないほどの駄菓子の壁を、寝過してまで食べ続けた。



「楸さん。俺、楸さんの相棒で良かったよ」

「楸さんは浴衣似合うっすね。もう、浴衣の方が気ぃ遣うぐらいっすよ」

「つーか、俺みたいな便所コオロギが楸さんと口利いてすんません」

 最悪な気分、最悪な目覚めで、楸は起きた。

「いや…あの、椿。『楸さん』って呼んでくれるのは嬉しいけど、そんなに卑屈になられると、逆に引くんだけど」

 楸は、笑顔で話しかけて来た夢の中の椿を思い出し、吐き気を催した。

 あれだったら、「クソ天使」と呼ぶふてぶてしい椿の方が少しはマシかな。

 そう思った楸だった。



「俺も、まだまだだな…」

 死屍累々と横たわる敵を前に、椿は呟いた。

 起きたら、アレは夢だったのだ、と気付くことになるのだが、それでも椿は満足だった。

 そして、目覚める。

 夢は、叶えるものだ。

 そう自分に言い聞かせ、いつの日か手からエネルギー波を出せる日が来るかもしれないと思いながら、椿の一日は始まった。 


荒唐無稽でアホな話でスミマセン。

特に十六夜と篝火は、ホントにふざけてしまいました。


最初は、エレルギー波や空中浮遊のような特殊な能力に目覚めた椿を中心として何かするつもりだったのですが、話が思い浮かばず、それぞれの短い夢の話になってしまいました。


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