番外編 男たちの座談会
ものっそいグダグダな内容です。
「普通にしていて谷間が出来る位って、どんだけ胸大きいんですかね?」
何の脈略も無く、十六夜は言った。
場所は、相も変わらずとっ散らかっているが慣れてしまえばなんてことない、十六夜の部屋。そこに、部屋の主である十六夜と、椿、楸、カイがいた。男四人は、物件を買ったりして日本一の社長を目指す〝すごろく″のテレビゲームをやっていた。
その最中、唐突に十六夜が先の事を言ったのだ。
一同は、戸惑った。十六夜の発言に引いたという事もあるが、十六夜の疑問に対する明確な答えを誰も持ち合わせていなかったからだ。
「知らね」と いち早く、椿が投げやりに答えた。
「でもさ、実際どうなんだろうね?」と興味を示したのは、楸だ。「谷間はもとより、札の現金を挟めるレベルって、どっからなんだろ?」
「でしょ。気になりますでしょ?」と十六夜は身を乗り出した。
「別に気になんねぇよ。つーか、寄せりゃあ意外と挟めんのかもよ」と素っ気ない椿。
「でも、どんなに頑張っても柊は無理だよ」
「おい!」柊を侮辱するような楸の発言に、カイは黙っていられなかった。「柊さんをバカにすんなよ!柊さんの魅力は、そういうトコじゃねぇだろ」
「じゃあ、どんなトコ?」
楸に訊かれ、カイは口ごもった。
いざ好きな人の好きなところを話すとなると、言い尽せないほどに在るのだが、気恥ずかしくて言えなくなる。
「もう少し胸があったら……イマジン」
「うっせぇ!」十六夜の発言に顔を赤くしながらも、カイは怒鳴った。そして、平静を取り繕ってから、「俺は…柊さんが好きなんだよ。他でもない、今のありのままの柊さんだ。見た目とか…んなこと関係なく、俺は柊さんが好きなんだよ。どんなトコとか、んなもん全部だ、全部!」と更に顔を赤くして言った。
「「「おぉ~!」」」
カイ以外のヤツらから、歓声が上がった。
「でも、確か一目惚れだったよね」楸が言った。
「ぐっ…」痛い所を突かれ、カイは口ごもった。が、「確かにそうだけど、見た目だけじゃなく、中身も素敵だったんだよ。てか、見た目からでも好きにならねぇと、俺みたいなヤツ、柊さんみたいに素敵な人と接点持つことなんてできねぇだろ」とカイは開き直った。
「なるほど」と十六夜は、手をポンとたたいた。「どんなに美味しい物でも、ゲテ物には手を出しづらいってことですか?」
「……なんか釈然としねぇ例えだな…」苦い顔をして、カイは言った。
「てか、あんなネギは置いといて、胸はどうなったの?」
赤マスに止まって負債を背負ってしまい所持金の減った楸が、語気を荒くした。
「どうもなってねぇよ」椿が言った。「つーか、稚内の後の鹿児島って、嫌がらせだろ」
「どうもなってねぇくねぇですよ」十六夜は言った。
「あ?」
「椿君は知りたくないです?」
「何で日本語少し下手になってんだよ?」とカイにつっこまれたが、十六夜は止まらない。
「男達をバカにさせる、魔の脂肪谷!そのミステリー」
「だって興味失せるような言い方すんだもんよぉ。っと、『とっきゅうカード』ゲット!」
「そう言えばさ」と楸。「体中の脂肪を集めて寄せて上げるって、あれどれ程の効果あるの?」
「体中ってスゴイな」と感心するカイ。「脚の方はどうすんだ?」
「いや、さすがに脚から集めるほどひっ迫してねぇだろ…」と呆れる椿。
「でもさ、背中から集めるってすごくない?」と十六夜。「そして、サイコロ三つ使って5しか進めないって逆にすごくない?」
「っせぇ!」と5しか進めない椿。
「それなら普通にさいころ振ればいいのに、って話だよね」
「っせんだよ、クソ天使!」
「椿君の鈍行は置いといて」と十六夜。「ぽっちゃりだけどAカップの人が、体中の肉を集めて寄せて上げてD以上になろうもんなら、これもう一種の人体錬成になりませんかね?」
「たしかにね」と笑う楸。「それで、くびれとかできちゃうのね」
「でもよぉ」と不思議そうなカイ。「楸なんか痩せてるのに、くびれとかねぇよな。男には出来ねぇのか?…げっ、冬の赤マスえげつねぇな」
「そう言えば、そうね」と自分の体をチェックする楸。「俺も痩せてる方だけど、キュッと締まったウエストじゃないね。くびれだけなら、柊の方があるかも」
「そこで張り合ってどうすんだよ」と椿。
「へい、鹿児島一番乗り!」と十六夜は、握った拳を高く上げた。
「「「ああぁぁ!」」」
椿に、貧乏神のアイツが憑いた。
「次は青森かよ…」と貧乏神に取り憑かれた椿が力なく言った。
「そういえばさ、二の腕の感触と胸の感触が同じって、ホントですかね?」
一気に所持金が増えて裕福になったホクホク顔の十六夜が言った。
「マジかよ?」とカイは、初耳だという驚いたリアクションをした。
「じゃあさ、『ちょっ、待てよ』とか言って二の腕掴んだら、それもうセクハラじゃん」と楸。「待てよも何も、お前が『ちょっ、待てよ』じゃん」
「んなの、テキトーだろ」と貧乏神に取り憑かれて不機嫌な椿。「つーか、二の腕なんて大体柔らかいから、確かめようねぇだろ。柔らかいくくりで、テキトーだよ」
「でもさ、一つの指針にはなるよね」と楸。「柊みたいに細く鍛えられた腕してるヤツは、そんなに柔らかくないし大きくないぞ、って」
「おい!」とムッとしたカイ。「いちいち柊さんを引き合いに出すなよ」
「つーかよ」と椿。「よく考えたら、いやつーかよく考えねぇでも、二の腕触る機会なんて無くね?…おっ、『リニア』ゲット」
「たしかに…」と楸。
「言われてみれば、そうかもね」と十六夜。
「てか、どこにしたってそもそも触れることからして無理だ」とカイ。
「だろ?」と、全員が納得したことに得意気な椿。「思い出してみっと、俺も、榎に触ることあっても大概頭だしよぉ。二の腕なんて、どんな機会で触んだよ。…っち」
「さすが椿君!」と歓声を上げる十六夜。
「ホント、さすが椿」と楸。「サイコロ五つ振って、6しか進めないとか、奇跡だよ」
「狙っても出来ねぇよな、普通」とカイ。
「っせんだよ、オメェら!」
「東北の物件は基本安いな」と青森に一番乗りしたカイ。「さっきも盛岡買い占めれたしよ」
「ドンマイ、椿」
「っせぇよ!何の慰めだ、クソ天使!」
「ボンビーさん、まだ椿君から離れたくないってさ」と十六夜。「それにしてもさ、何年経っても分からないもんだね、魔の脂肪谷の魅力、その秘密は」
「そうだな」と椿。「あの武術の神様と言われた男が『パフパフしたい』っていうぐらいだからな。よっぽどなんだろ」
「パフパフって、よく考えたらスゴイね」と楸。「……あっ、カイにはわからないかもね」
「あ?」カイは、怒りで語気が荒くなった。しかし、「柊さんだってな…」とそれだけ言うと、顔を真っ赤にしてショートしてしまった。
「つーか、おい!」
椿は、慌てた。テレビ画面の中に映る貧乏神に、変化が生じたからだ。
「キ~ング・ボ~ンビ!」と十六夜は、低い声で言った。
「サイコロを十個振って、それで出た目の掛ける何倍のお金を捨てるって。正気の沙汰じゃないね。……あ~あ、こんな時だけ大きな数字を出せるんだから、おちゃめな椿くんは」
「っざけんなよ!おい!」
男たちの座談会は、いつも成果を上げずにグダグダに終わる。
最近やっていないし初期の作品しか知らないので、ゲームについて間違いがあるかもしれません。たしか、東北の中だと宮城 (というか仙台?)は高いんですよね。
男四人のアホな話になってしまいましたが、ご容赦ください。それにしても、セリフばっかだ。




