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天使に願いを (仮)  作者: タロ
(仮)
55/105

番外編 魂の命令

これは……何で書いたんだっけ…?


そういうお話です。

「出てけ 椿!」

「っけんな!お前が出てけ、エロガキ」

 椿とレイラは、ケンカしていた。

「ちょっ、二人とも。あんま大きな声でケンカしないで」

 慌てて榎は二人の仲裁をする。しかし、榎は二人と言うが、肉体のない魂だけの存在となった幽霊のレイラは、椿の身体に憑依した状態で喋っている。つまり椿は、傍から見れば自分一人だけで言い合いのケンカをしている事になる。その様は、見ていて非常に怪しいし、なんか危ない。

 だから、榎は慌てて止めに入ったのだ。

 椿が周囲から不審者だと思われてしまわないように。


 落ち着いた所で落ち着いて、榎立ち会いの下、椿とレイラのケンカは再開した。

 が、まずはレイラが一言「それにしても、良く俺が入ったって分かったな」と先程の椿の反応について、冷静にコメントした。

 先程とはレイラが椿の身体に入った時のことだ。その時、レイラはいきなり椿の身体に憑依して、椿の隣を歩く榎の手を不意打ちに握ろうと企んだ。が、レイラが憑依してすぐ椿は、「おい」と不満そうな声を出した。「レイラ、今 入っただろ?」と。

「ホント、私も気付かなかったのに、椿君よく気付いたよね」と榎も感心した。

「カッ。何回入られてっと思ってんだよ。いい加減、来た時に感じる僅かな不快感を察知するくらいはできるっつーの」

 不機嫌そうな顔をして椿は、榎に言い返した。

「でも、いばれる事じゃないよな」

「っせぇ!エロガキ!」

 椿がレイラに怒鳴り、ここでケンカ再開。

「つーかお前、俺の身体入って今度は何しようとしやがった?」椿は訊いた。

「別にぃ~。ただ榎ちゃんの手が寂しそうだったから、俺がその寂しさを埋めてあげようと思っただけ」レイラは答える。

「は?何言ってんだ、お前?」

「何言ってんだって、それぐらい悟れよ、バーカ」

「あ?」

「榎ちゃんの手を握ろうと思った、そう言ってんの。You know?」

「……イエス。いや、イエスじゃねぇよ!お前、何しようとしてんの?」

「何しようとしてんのって、手を握ろうとしたっつってんじゃん。ただそれだけじゃん」

「開き直ってんじゃねぇよ!」

「…え、何?二人はまだ、手を繋いだこともないんですか?プラトニック・ラブですか?」

「は?…ぷらがどうとかはしんねぇが、手ぐらい握ったことあるっつーの」

「はあ?俺まだですけど!」

「しらねぇよ!」

 ここで、一度休憩を挟みます。

 二人のデリカシーのない言い合いに榎が顔を赤くしてしまったことを考慮しての休憩ではなく、このままでは椿の身体が持たないからだ。椿とレイラは今、ハイペースな口ゲンカをしていた。もしも二人が別々の身体でしたのなら、相手が喋っている間に息を吸う事も出来るだろう。が、二人は今、椿の身体一つで口ゲンカしている。相手が喋り終えると、すぐに自分が言い返すのだ。これでは体内の酸素が減っていく一方で、終いには息切れしてしまう。

 だから、休憩が必要なのだ。

 では、椿の体内に酸素がたっぷりと取りこまれた所で、再開。

「てゆうか、え?ぶっちゃけ、椿と榎さんはどこまで行ったの?」レイラは、訊いた。

「あ?さっきは駅地下のスイーツ展を見に行ったから、駅までだ」椿は、答えた。

「そういうこと言ってんじゃねぇよ!」

「あ?」

「あ~でも、もしデート中だってなら謝る。もっと盛り上がってから、また来るね」

「もう来んな!つーか、別にデートじゃねぇし」

「はい?」

「俺と榎の休日があったから、何となく会って、何となくふらついて、そういえば駅地下で秋のスイーツ展やってるって榎が言うから行ってみて、今はその帰りだよ」

「はいぃ?それデートじゃん。てか、何の目的も無く並んで散歩って、もはや老夫婦のデートじゃん」

「誰が老夫婦だよ、誰が!」

「榎さんはまだピッチピチだから、椿だけがクソじじいで」

「で、じゃねぇよ!」

 ここで、二度目の休憩を挟ませていただきます。

 椿が余計に叫び過ぎ、体内の酸素が激減してしまっていた。

 あまり酸素を吐き出し過ぎないように、それを意識し、再開。

「つーかさ、お前マジで出てけよ」椿は、心底迷惑そうに言った。

「やだね」レイラは、あっさりと椿の要求を却下する。「デートじゃないって言うなら、俺もお邪魔させてもらう。デートであっても、お邪魔させてもらう」

「ちっ!……言っとくが、榎に妙なことさせねぇぞ」

「はて?妙なこととは?」

「すっとぼけんじゃねぇよ!抱きついたりキモい事言ったり、お前がいつもしている事だ」

「なんでぇ?」

「なんでぇ、じゃねぇよ!つーか、エロいことしたいだけなら、エロい店 入ったり女風呂や女子更衣室覗いたりすればいいだろうが」

「うわぁサイテー、椿君」

 椿とレイラの口ゲンカに割って入った榎が、女の敵を蔑むような目で椿を見た。

「全くだ」レイラも、榎の意見に同意する。

「おい!」

「俺はなぁ、女のコと楽しくお喋りしたりじゃれ合ったり、そういう お付き合いをしたいんだよ。いつまでも傍観者でいるのは耐えられない」レイラは、強く訴えるように言った。「覗きとかそんなんはなぁ、たまにで充分なんだよ!」

「あ、することはするんだ」

「あったり前だ!せっかくの霊体、地面スレスレを仰向けになって流れて行くことだって経験済みさ」

「それでスカートの中を覗きまくった、と。ホント、サイテーのエロガキだな」

「へへっ。ひがむなひがむな」

「ひがんでねぇよ!」

「だからな、椿。お前も霊体に成って好き放題できるんだから、俺が唯一感覚を共有することが出来るほど相性のいいお前の体、これを俺によこせ」

「ヤダって言ってんだよ!つーかお前、もはや悪霊になってんぞ」

「知ったこっちゃないね」そう言うと、レイラは視線を榎の方に向けた。「ねぇ、榎さん。俺とデートしない?」

「えっ?」突然の誘いに、榎は戸惑った。

「大丈夫。椿が眠れば、身体の主導権は完璧に俺のものになるから、邪魔は入らない。俺が一度 椿の身体から出るから、榎さん、椿をぶん殴って気絶させて。そこに俺がもう一度入るから、俺とデート行こう」

「えっ、ちょっ…」

「大丈夫。それに、このままだと椿、性犯罪者になるよ。我慢できなくなった俺が、何処の誰とも知らない女の子にセクハラするかもしれないからね。ね、榎さん。そんなことにならない為にも、俺とデートしよ」

 レイラは、笑顔で榎に語りかけた。

 が、そのレイラの入った椿の顔から、笑顔が消えた。

「榎」椿の方が、榎に静かに話しかける。「この後さ、ちょっと付き合ってくんね」

「え?」

「俺に悪霊が付いているみたいだからさ、除霊しに行くのに付き合ってくれ」

「ちょっ…椿!」慌てたのは、レイラだ。「悪霊って、まさか俺のことじゃないよな?」

「まさかでおめぇだよ!榎もついて来てくれれば、ほら、念願の除霊デートだ」

 椿は、レイラが怯える様な、不気味な笑みを浮かべた。

「ぎゃー!助けてぇ榎さん!抱きついてでも、このバカを止めて!」

「っせぇ!行くぞ、榎。最寄りの寺ってどこだ?」



「知らなかったぁ。寺って、パフェとかも出してくれるんだね。まるで、喫茶店みたいだ」

 レイラは、言った。

「っせぇよ」と椿は、不機嫌さを露わにした。

 三人は、榎の意向で 馴染みの喫茶店〝スダジョーネ″に来ていた。

 そこで軽食を食べて、今はデザートにパフェをつついている。

「いいでしょ、椿君」嬉しそうにパフェを食べている榎が、椿に言った。「レイラ君も楽しい経験をしたり美味しいものを食べたりして、少しでも未練を消してあげたいでしょ。デートじゃないけど」

 榎は、デートじゃないけど、を強調して言った。

 だが、椿は何も感じない。

「カッ。このエロガキがパフェで満足するとは思えねぇけどな」

「そうだね」どこか物足りなさそうに、レイラは言った。「確かにご飯は美味しかったし、パフェも美味しいよ。でもさ、せっかく一つのパフェを女のコと食べているワケだし、自分の手で食べるのは、違うんじゃないかって思っちゃうよね」

「自分の手って、俺の手だろ」と椿は、呆れて嘲笑した。

「うっせんだよ、椿!」と椿に文句を言ってから、レイラは「だからさ、榎さん。俺に、あ~んしてちょうだい」と榎にリクエストした。

「カッ。安っぽい理想だな」

 と椿は呆れた。が、それでレイラが止まることはない。

 榎も、レイラの気持ちを蔑ろにすることはなかった。それに、それぐらいなら、そういう思いもあった。

「じゃあ…はい、あ~ん」

 少し照れながら榎は、スプーンをレイラの方に差し出し、パフェを食べさせようとした。

 その榎から差し出されたパフェを食べようと、レイラは構えた。が、レイラはパフェを食べる事は出来なかった。

 椿が邪魔をしたからだ。

 椿は、腕を伸ばしてパフェに刺さっていたポッキーを榎の口に突き刺すことで、距離を保った。

「ちょっと椿!邪魔しないでよ!」

「だって、榎がポッキー食べたそうにしてるから」

 レイラの邪魔を出来て、椿は満足だった。 






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