表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天使に願いを (仮)  作者: タロ
春夏秋冬の半分(仮)
4/105

第三話 天使の羽でバドミントン(後篇)

前回の続きです。



 翌日。俺たち三人は、中学校の校門前に集まった。

 昨夜、天使から『明日は喫茶店に集合。バドミントンするから動ける格好でね』という内容のメールが来たが、喫茶店に集まると無駄話をする気がしたので、中学校に直接集まるように訂正させた。

 そして今日、俺と榎は、言われたとおりに動ける格好ということでジャージで来たが、動ける格好を指示した張本人の天使は何故か、いつも通り浴衣に下駄を履いている。

「おい。お前、動ける格好で来いって言ってたよな?」

「動ける格好で来いって、楸さんは言ったよ」と、天使は平然と言う。

「じゃあなんで浴衣で来てるんだよ?」俺なんてちゃんと運動靴まで持参しているのに。

「俺にとって動ける格好っていうのはコレなんだよ。そんなこと言ったら椿だって、運動着にニット帽はおかしいだろ」

「しょうがねぇだろ。昨日は時間が無くて他のトレードマークを探せなかったんだからよ」

「なにそれぇ、バカじゃないのぉ?」

「んだと、クソ天使!」

「ほら二人とも、喧嘩してないで行こうよ」

 天使と無駄な言い合いをしているうちに下校する中学生の姿が増えてきた。確かに喧嘩している場合ではない。それに校門前で目立つのもまずい。一人浴衣を着ているが、早急にOBとして自然に第二体育館に行かなければ。

 第二体育館に無事着いたはいいが、バドミントン部がまだ活動してる音が外にまで聞こえたので、昨日と同じように物陰に隠れて他の部員が出て行くのを待った。

「なぁおい。浴衣で来てどうするつもりなんだ?なんかアイテムでも持ってきたのか?」

 待っている時間がまた暇だったので、ヤル気を感じさせない浴衣姿の天使に訊いてみた。

「いや、五十嵐さんに話はしてみたんだけど、あの人はバドミントンが何かも分かってなかったんだよ」お前も知らなかったくせに。

「じゃあ何もないのか?」

「いや、だから五十嵐さんにバドミントンは羽を打つスポーツですって説明したんだよ。そしたら、野蛮だなって嫌がってたけど、明日までには何か作っておいてくれるってさ」それって、今日で仕事終わらないこと前提か?

「それじゃあ、天使は今日どうすんだよ?」

 そう訊くと、何の根拠があってか、天使は自信満々に自分の頭を指しながら「俺は今日は、ここで勝負よ」と言った。今日の天使の勝負はボロ負け決定だな。「もし今日で終わったら、五十嵐さんには悪いけど、せっかく作ってもらったアイテムは俺のおもちゃ箱行きだな」おもちゃ箱って何歳だよ。ホント、五十嵐さんに悪いな。つーーか、どこに勝算を見出してるんだ?

「あ!ねぇねぇ、みんな出て行ったよ」

 榎がそう言うので体育館の出入り口の方を見ると、確かにバドミントン部員らしき中学生たちが出て行った。あの少年の姿は見えないから、今日も残って練習しているのだろう。

 他の部員たちの姿が見えなくなってから、俺たちは体育館に入った。

「よう、少年。今日も励んでいるかね?」

 真っ先に入った天使は、裸足でペタペタと歩きながら少年にあいさつした。

「…ホントに来たんですね」

 少年は素振りしていたのを止め、礼儀の欠片も無いあいさつをした。

「当たり前だろ。昨日約束したじゃないか」

 天使はやる気の見えない服装で来ているくせに、言うことだけは一人前だ。

「これ、ありがとな」俺は、少年に昨日借りたDⅤDを返した。

「どうも。参考になりましたか?」

「それなりに。まぁ俺たちも邪魔するつもりはないから、そう邪険しないでくれ。ところで、余っているラケットあるか?」

「ああ、はい。部室になら」

「貸してくれ」

 俺が頼むと、少年は部室までダッシュでラケットを取りに行ってくれた。

「椿。さっそく邪魔してるぞ、お前」

 天使が何か言っているが無視して、俺と榎は、少年が戻ってくるのを待つ間に準備運動を済ませることにした。



 少年は結構早く、ラケットを二本持って戻ってきた。人数分は無かったと言うが、もしかしたら浴衣の男は役に立たないと判断したのかもしれない。

 榎は「ありがとう」とラケットを受け取り、早速羽を落とさないように、ポーンポーンと軽く上に打ち始めた。落とさないようにと体育館を走り回っている。落とさないのはすごいが、ちょろちょろと邪魔だ。

「悪いな、少年。ラケットありがと」

「いいえ、別に」

「それにしても息もほとんど乱れてないな、お前」

「ええ、まあ。これくらいなら」

 ここから部室棟まではそこまで近くもなかったはずだ。

 一応、さっきの天使の言葉も耳には届いていたし、俺も気になっていたことがある。だから、少年が靴ひもを締め直すのを待ってから話しかけることにした。

「なぁ、少年。お前からしたら迷惑かもしれないけどさ、俺たちは何かお前の力になるつもりで来てるからさ。まぁ焦る気持ちもあるだろうけど、最悪 悪循環から抜ける為の気分転換だとでも思って付き合ってくれ」

「ああ、はい。ありがとうございます」

 昨日帰る途中で、もしかしたら人助けどころか、これからやることは俺たちの自己満足なんじゃないかと不安になった。だから、こちらが脅迫せずとも、たしかにぎこちなかったが少年が素直に受け入れてくれて少し安心した。藁にもすがる思いなのかもしれない。まぁ、その藁が少年の助けになれるかは分からないが。

「それじゃあ、椿から行くか」

 アメを咥えて壁に寄り掛かって座る、消えかけていた不安をあおるような態度で天使が言った。ホントに大丈夫だろうか?



 俺の作戦開始。

「なぁ、少年。試合してみないか?」

「え、お兄さんと?できるんですか?」

「まあな」

 試合しようという俺の提案を受け入れ、少年は、ノック用の羽の中から状態のいい羽を選別してくれている。

「どうするつもりだ、椿?」天使が座ったまま訊いてきた。

 一応作戦なので、俺は、少年に聞こえないように天使のところに近づき答える。

「どうするって、試合するつもりだよ。俺たちが技術的なことを教えられるわけ無いだろ。だから、取り敢えず試合してもらって、それで自信取り戻してくれたら解決だろ」

「そんな上手くいくか?」

「まぁ見てろよ」

「見ててやるから、帽子は取ったらどうだ?」

「いやだ」トレードマークは簡単には取れないんだよ。

 天使から離れ、俺は少年のいるコートに向かう。少年は羽を準備して待ってくれていた。一面だけ残っているコートに入り、試合前のアップということで軽く打ち合う。俺は昨日見たDⅤDを思い出し、イメージを固めてから臨んだので、多少のヘマはあったがなんとかできそうだ。

「よろしくお願いします」

「おう、よろしく」

 アップも終わり、少年からのサーブで試合を開始した。最初はお互いに小手調べ、少年は気を使っているのかもしれないが、スマッシュのような強い球は打たずにラリーを続けている。

 それにしても、DⅤDで見て思っていたより動きづらい。羽もうまく当たらない。バドミントンなんて、何か公園とかで笑いながらポコポコ打っているのを見たことしかないから、昨日DⅤDを見た時は驚いた。人も羽もかなり速く動く。やってみると結構バドミントン難しいな。

 俺がそんなことを考えながらやっていると、少年は少しずつギアを上げてきて、速い球と遅い球を使い分け緩急をつけて攻めてきた。その攻撃は、ホントにスランプ中なのか、と疑う様なレベルだ。

「どうした、椿ぃ。やられっぱなしだぞ」天使がやじり始めるのも無理はないと思えるくらい防戦一方ではあったが、アイツに言われると腹立つ。

「ちょっとタイム」

 五点差がついたところで、休憩を取らせてもらった。このままだと俺はただ負けてしまう。それは嫌だ。

 もう一度イメージをし直す必要があった。プレイしてみて分かったイメージとの誤差。体感した羽の速度。ラケットに当てる感覚。それらを踏まえ、もう一度イメージする。そして、昨日見た選手のように動きたいと願う。あの人たちみたいにもっと速く、もっと強く。このまま負けたくない。俺は勝ちたい。

「よし、再開するか」

これでいける。



「バカだろ…椿…。何で勝つんだよ?」

「いや、その…悪い」

 試合が終わり、少年から離れて、天使と二人で反省会。榎はまだ羽をポンポンやっていて欠席。あいつ、少し巧くなってる。

 試合を再開してから、俺はイメージ通りのプレイができるようになっていった。最初よりも足運びがスムーズになったし、羽もよく見える。羽を打ち分けることもできるようになっていった。中盤くらいまではまだ少年と互角の試合くらいだったはずだ。だが途中から楽しくなってしまい、本当に負けたくなくなってしまった。その結果、勝ってしまった。

「それにしても、椿の〝力″ってホントにすごいモンなんだな」

「まぁな」

「でも、事今回にあっては、勝ったら意味無いだろ」それに関しては何も言い返せない。

 本来は試合を通して自信を回復してくれればと思い始めたのだが、俺が勝ってしまった。初心者の俺が予定通りプレイできたのだが、俺の勝利という結果は、俺の作戦の唯一にして最大のミスだ。

 少年はさらに落ち込んだのか分からないが、試合の後も休まずにフットワークを鍛えている。申し訳ないことをした。

 ということで、俺の作戦失敗。



 天使の作戦開始。

「まったく。椿はダメダメのダメだな。ついでに言うなら、ダメだ」

天使はやっと重い腰を上げたかと思うと、俺を罵った。確かに俺の作戦は失敗したが、そこまで言うか。

「じゃあ次はお前がやれよ」

「そのつもりだよ。まあ、楸さんに任せなさい」

 浴衣のお前に何ができるんだと思っていたら、天使は少年の方に近づいていく。まさか、お前も試合するとか言わないよな?

「なぁ、少年。もう一度あのダメな帽子と試合してみてくれないか?」ダメな帽子って誰だよ?

「え、またあのお兄さんとですか?」ダメな帽子って俺だったのか。羽引き千切るぞ、ダメ天使。

「少しでいいんだ。あんなヤツでも、キミの参考になるところはあると思うし、今度は俺がアドバイスしてあげるから」

「あぁ、はい。分かりました。お願いします」

「ほら、椿。早く来いよ。もうへばったのか?」

 いや、少しは疲れてるよ、実際。それに、また俺とやってなんか意味あるのか?あいつもアドバイスなんてできないだろ。

「お兄さん。よろしくお願いします」

少年が俺に頭を下げて言う。その雰囲気は、まさか俺が素人だとは思ってもいないようで、コーチのような指導者に対するそれと似ていた。経験者が途中から勘を取り戻して、自分を負かしたのだとでも思ってくれていればいいな。

 仕方なく屈伸運動をしてからコートにまた入ると、寸前まで少年の背後のコート外にいたはずの天使が消えていた。アドバイスするって言ったヤツがどこに行ったんだと思ったが、もしや姿を消しているだけなのでは、と気づいた。

「まさか、あいつ…」

 嫌な考えが浮かぶ。というか、あいつの頭で考えつくこと、そしてあいつの能力でできることと言ったら高が知れる。

「おい、榎」

「え、なに?あー落としちゃった!」まだやってたのか。

 俺に非難する目を向ける榎を呼び寄せ、俺たちの試合を見ているように頼んだ。「応援してあげるね」と言われたが、さっき応援無しで勝ててしまっているから断った。途中で口を挟まずに、ただ見ていてくれればいい。

 今度はアップなしで大丈夫だろうということで、さっそく少年とネットを挟んで向き合った。

「よろしくお願いします」

「おぉ」

 今度は俺のサーブで試合が始まった。

前の試合の時も思ったが、スランプ中だと言う割には、この少年は巧い。まぁ、中学生のレベルがどの程度なのかは分からないが、少年はミスも少なく、よく動けている。と思う。

 俺はさっきより下手にプレイしたら失礼だし、少年が疑念を抱くことがあると厄介だと思ったので、できる限りさっきと同じようにやっていた。

 少年は高く打つショット、『クリア』と言ったか、とりあえず高く打ち、俺のコートの後ろの方を狙った。だんだん感覚がつかめてきたので、少年が打った球がアウトになるのが分かった。それでも一応追いかけてみる。球は、確実にコートの外に落ちるような軌道で飛んでいた。だが、急に何か壁にでも当たったように少し不規則な動きをしたかと思ったら、コートの中に落ちた。やっぱり。

 その後も、主に俺のコートの方で球は予想外の動きを見せる。アウトすると思った球が入ったり、クリアした球が放物線的にあり得ない軌道で落ちてきたりする。少年には羽も抜け落ちて壊れかけた球が不規則な動きをしているだけと映るかもしれないが、確実におかしい力が働いている。



「ごめん。やっぱり久しぶりにやって、連戦は辛いわ」

 試合の中盤くらいのところで、俺はそう言って試合を止めてもらった。連戦は確かに辛かったが、できないことはなかった。ただ、こんな試合は無駄だろう。

 少年は「ありがとうございました」と律義に頭を下げ、いつの間にかまた姿を見せた天使のところに行きアドバイスを貰っている。あのクソ天使がどんなクソアドバイスをするのか気にはなったが聞かなかった。それよりも俺は、榎に確認したいことがある。持ってきていたタオルで汗を拭きながら、俺側のコートの後ろで体育座りをしていた榎のもとに行く。

「どうだった?」

「椿君、バドミントン上手だね。カッコ良かったよ」榎が拍手で迎えてくれた。

「あぁ、ありがと。そうじゃなくて、あの天使は何かしてなかったか?」

「天使さん、飛んでたよ!」

目をキラキラさせて言う。天使が飛んでるところを見たのは初めてだったのか。

「それで、飛んでなんかしただろ?」

「うん。手では球を叩き落としたりしてたよ。でも、翼も出さずに飛ぶのってなんか変だね」あいつはほとんど変なんだよ。

「サンキュ、榎」

「どういたしまして」

 俺の確認作業が終わり、少ししてから天使もアドバイスし終わったようで、俺たちの方にペタペタと間抜けな足音を立てて近付いてきた。あいつは何を長々とアドバイスできたんだ?

「どうだった、俺の作戦?榎ちゃんが見てたってことは気づいたんだろ、椿も」

「ダメだな」と俺。

「ダメだよ」と榎。

 天使の作戦は、少年に自信を取り戻させるために試合で不正を働こうというものだった。もちろん少年には知る由もないが、天使が姿を消して相手側に不利になるように手を加える。それで、少年を勝たせようとしていたのだ。

「え、なんで?」

「ズルはダメだよ、天使さん」

「ああ。それに、あれじゃ根本的な解決にはならないだろ」

「なんで?少年に自信を取り戻させることが目的だろ。ならいいじゃん。見てよ、あの少年の顔を」

 そう言われて少年の顔を見てみたが、何一つ変わっていなかった。また、フットワークを鍛えている。天使のアドバイスが意味不明すぎたのか、さっきの試合に少年も違和感があったのかは分からないが、とても自信を取り戻せたようには見えない。

 ということで、天使の作戦失敗。



 榎の作戦

 少年はまだフットワークを鍛えている。よく疲れないものだと、感心する。

 俺たち三人は、少年に聞こえないように体育館の隅に集まり、反省会兼作戦会議をしていた。既に俺と天使の作戦は失敗しているから、次の榎の作戦は慎重に行こうということで急きょ設けられた場だ。

「まったく。二人とも何やってるの?」

 俺たちの報告を聞いた榎は、俺たちを責めてきた。榎は天使の作戦と結果については知っていたが、俺の作戦とその結果については遊んでいて知らなかったということで説明したら、この様だ。つーか、遊んでたやつに言われたくない。

「ごめんね、榎ちゃん。全ては椿のバカが原因で」

「何言ってんだよ!お前だって失敗してんだろうが!」

「楸さんだって言ってんだろうが!」なんで今、そこにキレる?

「いい加減にしなさい!」

 怒られました。

 俺と天使は、同じ作戦失敗のダメ野郎ということで、榎に正座させられた。体育館での正座は結構きつい。昨日少年に正座させたことを本当に申し訳なく思うほどに。まぁ、榎も本気で怒っているわけではないので、正座の罰はすぐに許してくれた。

「それで、榎は何するか考えてきたのか?」俺はしびれた足を伸ばして、榎に訊いてみた。

 今日ずっと遊んでいたくせに、俺たちの失敗を責め立て正座までさせたのだから、榎には何か名案があるのだろうか?まぁないだろうが。

「えへへ、考えつかなかった。ごめんね」榎は笑いながら答えた。予想通り。

「別に予想はついていたから怒りはしないが、じゃあなんでお前はジャージで来たんだよ」

「だって、天使さんから動ける格好で来てってメールが来たんだもん」

「動ける格好で来ても、動く予定が無いんだったら意味無いだろ」

「意味あるよ。動いたもん。さっきだって、連続で羽を三十回も打てるようになったし」それって、遊びじゃねぇかよ。

「すごいね、榎ちゃん」おい、天使。榎を甘やかすな。

 ということで、榎の作戦失敗。というのも味気ないので、今から作戦会議スタート。

時間もあまりないので早く済ませるぞ。

「榎ちゃんって運動できるの?」

「うーん。あんまりできないかな」

「できるわけないだろ。こいつマネージャーだったんだぞ」

「それって帰宅部のだろ?」帰宅部の活動をバカにするなよ、天使。

 取り敢えず、方向性を決めよう。

「榎は運動以外で少年に自信を取り戻してもらう方法を考えた方がいいだろ」

「運動以外って何、椿君?」

「わかった!もし今度の試合で勝ったらデートしてあげる的なご褒美だろ、椿」

「別にデートじゃなくてもいいんだが、そういう感じだな。精神的な面で励ますというか」

「え、でも私…デートはちょっと…」いや、だからデートじゃなくていいんだって。

「やっぱりデートは無しだよね。榎ちゃんも好みの問題があるし」だからデートから離れろよ。

「うん。中学生とは…ちょっと。それに私、できれば同い年か年上の人の方がいいな」榎にも男の好みがあったとは、ちょっと驚きだ。

「マジで!?俺 年上だよ、たぶん百個くらい。今度デートする?」

「何デートに誘ってんだよ、エロ天使!」

「別にデートに誘うのはエロくないだろ。そんな考えだから、椿は羊なんだよ」

「は?羊ってなんだよ」

「喧嘩しないで。じゃあさ、今度三人で遊びに行こうよ!」おーい。話逸れすぎだよ。何で遊びに行く話になってんの?

「え~。椿も一緒かよ」俺だっていやだよ。

「みんな一緒の方が楽しいじゃん」

「あの、すみません。そろそろ僕も上がりたいんですけど」

「「「うわっ!」」」

 いつの間にか俺たちのそばに少年が来ていた。俺たちが無駄話をしている間に、少年は今日の練習を終えていたらしい。

 ということで、作戦会議失敗。



 俺たちはモップをかけ、コートや散らかっている羽を片付けた。結局、今日は少年の自信を取り戻してあげることはできなかった。

「ありがとうございます。片付けまで手伝ってもらって」

 そう言った少年の顔は相変わらず元気がなかった。

「いや、俺たちこそごめんな。何かロクなこともできずに」今日でカタを付けるつもりで来ていたのだが、力になることができなかったことを俺は謝った。

「いいえ。お兄さん強かったですし、試合できてよかったです」

 なんか最初にあった時よりも素直というか、礼儀正しいな。まぁ、最初はこっちが怪しかったせいもあるか。

「なぁ、少年。また明日も来ていいか?」俺は断られる気がしたが訊いてみた。

「いや、いいですよ。無理しなくて」やっぱり断られた。

「遠慮すんなよ。明日は面白い物も持って来てやるから」

 いち早く帰ろうと玄関でもう下駄をはいている天使が明るい声で言った。お前が五十嵐さんのアイテムを楽しみにしているだけなんじゃないか?

「…じゃあ、はい。お願いします」

 そう言って、また明日来ることを約束した。

 また鍵を返さないといけないからということで、少年とは体育館を出てすぐに別れた。

 俺たちも誰かに見つかるのを避けるために急いで校門へ向かう。

「ねぇ、ちょっといいかな?」

 校門を出て少し歩いたところで、榎が俺たちを呼びとめた。

「何だよ?」

「うん。あのさ、明日もこの時間にここに来るんだよね?」

 何かバツが悪いように、榎の態度はハッキリとしない。

「ああ。さっき少年と約束しただろ」

「どうしたの、榎ちゃん?」

「あのね、明日私バイト入ってるから来れそうにないの」

 榎は落ち込んでいるようで、さっきの少年のように元気がない。

 一人暮らしをしている榎がバイトをしていることは知ってはいたが、何をしているのかまでは知らない。明日のこの時間、バイトが入っている事も当然知らなかった。

「えー。じゃあ明日は椿と二人かよ」マジかよ。

「バイトならしょうがないだろ。別に天使の仕事はお前がやらなくてもいいんだし、そんなこと気にするなよ」

「でも、私だって二人の仕事の手伝いしたかったよ。それに中途半端に投げ出すみたいでいやだし」遊んでいるだけだと思ったら、意外にも真面目に取り組んでくれてたんだな。天使よりも真剣なんじゃないか?まぁ役に立つかどうかは別として。

「榎ちゃーん、っが!」

 何故このタイミングなのか榎に抱きつこうとした天使を、浴衣の襟を引っ張って止めた。

「まぁ、俺一人でも充分なんだが、足引っ張るこの天使もいるし、明日じゃ終わんないかもしれないから、そん時にまた来いよ」

「げほっげほっ。そうだよ、榎ちゃん。椿のバカじゃ頼りないし。それにこれからも手伝ってもらうことがあるかもしれないから明日一日ぐらい俺らに任せて」

 そう言うと、天使はアメを取り出し榎に渡した。天使がそんなに人間の力を借りていいのかよ。

「…うん。じゃあ明日は任せるね」

 榎はアメを受け取り、笑顔になる。まったく、このガキのご機嫌を取るのも疲れる。

 その後は、天使が明日の報告をすることを榎と約束し、俺たちは別れた。

 帰り道の途中、俺は明日どうしようか考えていた。少年の自信を取り戻す方法もだが、トレードマークのことが問題だ。予想以上に汗をかいてしまった。天使の言う通り、試合する時くらい帽子を取ればよかったと今更ながら後悔する。明日どうしよう。取り敢えず、帰ってすぐにファブるか。



 翌日、俺は何とか天使との待ち合わせ場所である中学校の校門前まで来た。今日は天使から服装の指定も無かったので、ジャージではない。トレードマークも幸い汗臭さは無く、乾いていたので被っている。

「おい、どうした椿。なんか変だぞ?」

 先に待っていた天使も浴衣に下駄といういつも通りの服装で、アメを咥えている。俺に気付いた天使は、不思議そうに俺に訊ねた。

「いや、ちょっとな」

 天使が不思議に思うのも無理はない。俺の歩き方は、明らかにおかしい。

「まさか、筋肉痛にでもなったのか?」

「…まぁな」

 俺がそう認めると、天使が「マジで。椿、鍛えてるって言ってたよな。だっせぇ」と笑い始めた。うるせぇ。おい、今脚に触るな!腕もだ!

 天使が言う通り、俺は今日、ほぼ全身が筋肉痛になっている。おそらくというか、確実に、昨日少年と試合をしたことが原因だ。

 俺の力は有力だが、その反面として副作用もある。力を使って、普段はできないことを可能にするので、その時の運動に身体がついていかないことがある。仮についていけたとしても、通常の肉体の限界を超えたことをする時は身体に相当の負担がかかる。今回の場合、副作用として筋肉痛になったわけだ。しかも、ほぼ全身。かなり痛い。

 俺は、副作用無くこの力を有効に使えるようにするためにも、普段から走り込みや筋トレなどのトレーニングをして肉体の鍛錬をしてきた。さらに言えば、イメージトレーニングなどの鍛錬もしてきた。そのおかげで、昨日はやったこともないバドミントンをできたわけだが、そのおかげで、筋肉痛。たぶん、スポーツの場合、普段使わない筋肉を使うからだろう。

 それにしても、いくら素人がプロ選手の真似をしたとはいえ、ここまで筋肉痛になるなんて、ちょっとショックだ。歩くと、尻も痛い。バドミントンって大変だ。

 俺が筋肉痛だと知り、天使ははしゃいでいる。「ほら、椿。早く行くぞ」とか言って、今まで見たことが無いほど仕事に積極的だ。

「ちょっと待てよ。歩くだけで痛いんだから」

「なんだよ、しゃーねぇーなぁ」

 先に歩きだしていた天使は、笑顔で戻ってきて俺の後ろに回り込む。

「おい、やめろ!いってぇ!」

 押すんじゃねぇ!



 俺と天使が体育館に着いた時には既に部活は終わっていて、少年が一人で残って練習しているだけだった。昨日とほぼ同じ時間に校門前に集まったのに、体育館に来るまで時間がかかったのは、俺の筋肉痛を天使が攻めてきて歩けなかったからだ。

「よう、少年。相変わらず頑張ってるねぇ」天使が裸足でペタペタと足音を鳴らし、少年にあいさつする。俺は申し訳ないが、軽く手を上げるだけのあいさつをして、座らせてもらう。

「あ、こんちはっす。あっちのお兄さんどうしたんですか?」

 少年が変な歩き方をしていた俺に気づいて天使に訊ねた。

「ああ。あいつはね、昨日キミと試合をした時にちょっと無理をし過ぎて筋肉痛なんだってよ。バカだろ」バカってなんだよ。

「へぇ~。まあ久しぶりにやったんですよね?それであんだけ動いてたら筋肉痛にもなるかもですね」そうなんだよ。分かってくれるか、少年。

「そんなことないだろ。少年だって昨日もハードな練習してから試合してんのに、今日はケロッとしてるじゃ。」

「僕は毎日部活やってますし。それより、あの、もう一人の人は、いない…んですか?」

 少年がモジモジして天使に訊ねる。そんなことより練習したらどうだ?

「ああ、榎ちゃん?今日はバイトがあるから来れないんだってさ。何、少年。もしかして榎ちゃんが来なくてさみしい?」少年を肘でつつきながら天使が言う。

「いや、違いますよ!ただ、いないんだなって思って」

 少年は、不自然なくらい語気を強く反論した。照れているようだ。

「はははっ。じゃあそういうことにしといてやるよ。ということで、榎ちゃんもいないし、あいつも見てのとおり使い物にならないから、今日は俺が持ってきたアイテムでも使って練習しよう」

「あ、はい。お願いします」



 天使の作戦2開始。

「とりあえず、こんな物を持ってきたんだけど」そう言って、天使は浴衣の袖口に手を入れる。またそこに入れているのか、と呆れて見ていたら、そっからバドミントンのラケットを取りだした。

「ちょ、ちょっと待てよ」俺は、つっこまずにはいられなかった。「明らかにサイズがおかしいだろ。何でラケットが袖口から出てくるんだよ?」

「なんだよ、筋肉痛」天使が取りだしたラケットを肩に当てながら俺の方を向く。

「筋肉痛って呼ぶな。それに少年も不思議がってるだろ」

「小さいことは気にするなよ。これは実は折りたたみのラケットだったとか、そんなことでいいだろ」

「いや、嘘だろ!」

「嘘だよ」

 シレッとそう言うと、天使は少年の方に向き直り、ラケットの説明を始める。結局、ラケットが凄いのか、あの浴衣が凄いのか分からないまま、俺は放置された。

「このラケットは俺の知り合いの五十嵐さんって人が作った物なんだけど…」

「あの、すみません」

「なんだよ。まだ説明し始めたばっかだろ」天使は話を途切れさせられて不満そうに口をアヒルみたいに曲げる。

「いや、使用していいラケットには規定があって、たぶんそれはダメです」と遠慮がちに少年は言う。「せっかく持ってきていただいたのに、アホのあなたが持ってきた物では役に立つかどうか以前のレベルです」と、そう言ってもいいのに。

「え、そうなの?」

 全く予想だにしていなかったようで、天使は目をパチパチとしばたたかせている。

 天使が持ってきた五十嵐さん作のラケットは未使用のままお役御免となった。

 ここで、五十嵐さんの苦労を全くの無駄にしない為にも、ラケットの説明をしよう。つーか、天使が諦められないようで、勝手にラケットの性能を話し始めた。

 このラケットは、見た目は普通のラケットと違いはほぼ無い。規定より少し大きいくらいだ。ただ、五十嵐さんがどういう資料に目を通したのかは知らないが、デザインは微妙というか、少年いわく古臭いらしい。

 まぁ、見た目よりも問題はその性能だ。普通のラケットだと、軽さや、羽をはじく感じ、コントロールなどが性能の話になるらしい。ただ、五十嵐さんのラケットはそんなところは気にしていない。軽く打つショットやクリアなどのショットは普通のラケットと変わりなく打てる。ただ、スマッシュを打つ時にだけこのラケットはその真価を発揮する。スマッシュを打つとラケットが自動認識したら、一瞬だけガットという紐を通している穴から勢いよく空気を噴射し、ラケットを振る速度を急激に増してくれる。それで、スマッシュの威力を上げようということらしい。ちなみに、ラケットの名前は「破壊力が凄いラケット」だそうだ。わかりやすい。

 どういう物なのか実際にスマッシュを打って見せるというので、少年に軽く教わってから天使はコートに入った。少年が上げてくれた羽を天使が打つらしい。しかし、結果から言うと、初心者の天使が羽を正確に打つことはできなかった。

 ただ、それは天使の運動神経どうこうではない。

 スマッシュを打つ動作をラケットが認識し空気を噴射したら、天使の手からすっぽ抜けてしまったり、ラケットが誤認して変なタイミングで空気を噴射してしまったり、それどころか、空気は一方向にしか出ないようで、スマッシュを打とうとしたら本来出るべき方向とは逆に空気が噴射してしまい、天使は肩を痛めた。少年が使わなくてよかったと心から思う。

 天使も自分が痛い目に遭い、このラケットは使えないとようやく認めた。

 ということで、天使の作戦2失敗。



 天使の作戦3開始。

 五十嵐さん作の「破壊力が凄いラケット」は壊れた。最後の一撃を打とうとした時に、天使の肩をひねり、天使の手からすっぽ抜け、床にたたきつけられた結果、ぽっきり折れた。床に傷が無いところを見ると、ラケットの強度が弱かったのだろう。

「あ~肩いてぇ~。さっきのはダメだったな」

「そうですね」

「まぁ次のもあるし、気にするなよ」勝手に自爆しただけのくせに少年を励ましながら、また浴衣の袖口に手を入れた。次もあるのか。

「なぁ、少年。昨日試合してるのを見てて思ったんだが、てゆうか五十嵐さんが言ってたんだけどさ、バドミントンの羽ってかなり速く動くよな。そうなると動体視力ってかなり重要だと思わないか」

「はい、そりゃ、まあ」

「だろ。だから動体視力を鍛えるアイテムを持ってきたんだ」

 なるほど。天使の言うことは確かに正しいと俺も思う。昨日調べたが、バドミントンのスマッシュの初速は最速で時速400㎞を超えるらしい。まぁ中学生の打つ球なんてたかが知れているとは思うが、それでも速いことは速いだろう。だとすると、速い球を目で追うためにも動体視力は重要だろう。こいつもやっと役に立つ物を持ってきたか。

「じゃじゃじゃ~ん。こ~れ~」また変なダミ声でそう言うと、天使は金色の球を出した。

「何ですか、これ?」天使から金色の球を受け取ると、少年は訊いた。

「だから、動体視力を鍛えるアイテムだよ。少年は、結構昔の映画でさ、魔法学校を舞台にしたファンタジーなんだけど、知ってる?」

「ああ、はい」

 それなら俺も知っている。何部作かになる大長編の映画だったはずだ。かなりの大ブームだったらしく、俺も見てみたんだが、最初の一、二作目で挫折してしまった。彼の学校生活はあのあと平穏無事といったのだろうか?

「五十嵐さんも全部ではないけどその映画を見たことがあるんだってさ。それで、その映画に出てくるゲームで使われる球がこれなんだよ。羽がついた球を目で追うならこれがピッタリだって言って作ってくれたんだ」

そう言うと、天使は少年から球を返してもらい起動させた。

 起動した球からは、羽が出てきた。鳥とかの翼よりハエの羽に近い。ただ、サイズはハエのとは比べ物にはならなく大きいが。等と俺がそんなことを思っていたら、それは、高速で羽を動かし始めていた。

 うろ覚えではあったが映画で見たことのある物のレプリカ的な物が目の前にあることに少しの感動を覚えたが、同時に嫌な予感もしていた。

「なぁ。その球でどうするんだ?」俺は座ったまま天使に訊いた。

「どうするって、打つんだよ。そんなに硬くないから普通のラケットで打っても大丈夫らしいよ」

「そうか。ちなみに、五十嵐さんは映画の物とそっくりに作ったのか?」

「ああ、たぶんな。あの人はこういうの好きだから手は抜かないはずだ。細部まで、そっくりに…」

 ここにいる三人は一応ではあるがその映画を知っていたので当然、この球も知っていた。だからこそ天使の話を聞いて、おそらく共通の悪い予感を抱いた。

 天使の手から離れた球は機敏に動き始めた。最初は細かい動きだったので、天使が抑えつけようとしたのだが、遅かった。

 映画の物とそっくりに作られた球は、縦横無尽に飛び回り始めた。とてつもない速さ、目視することも難しいほどの速度だ。

「さぁ、少年。打ち返したまえ」頭を抱えて、いち早く体育館の隅に逃げていた天使は偉そうに動体視力のトレーニングを開始させた。

「む、無理ですよ!」少年は必死に見ようとしている。無理するな。

「おい!あれはどうやったら止まるんだよ!」

 俺も少年には悪いが体育館の隅に避難してから天使に訊いた。

「そりゃ、キャッチすればかな?そうだ、チャンスだぞ椿。あれを口でキャッチできればお前も本物の主人公だ」

「うるせぇよ」あれを口キャッチなんて、正気の沙汰ではない。「お前が持ってきたんだから、お前が止めろよ」

「無理。楸さんにはできません」



 その後も金色の球は飛び回っていた。だが、数分もすると明らかに速度を落とした。目でも簡単に追えるようになっていた。なんだ、電池切れか?

 俺は身体が動けば口でも何でもキャッチしてやれたが、運悪く今日は身体が動かない。

 そんな俺の代わりに、少年が羽を止めてくれた。球を壊してしまうことを避けるためなのか、ラケットを傷つけないためなのか分からないが、素手で取った。

 あれだけ飛び回っていたのに体育館に傷一つないのは、五十嵐さんの技術力なのか、それとも運が良かっただけなのか、どちらだろう。

「ふぅ。危なかったな」少年から球を受け取り、袖口にしまいながら天使が言う。

「はい。あれじゃ動体視力は鍛えられても危なすぎです」

「はははっ。ホントだな。これもちょっとダメだったな」危険物を持ちこんだ張本人が笑いながら言う。

 ということで、天使の作戦3失敗。



「悪いな少年。俺が今日持ってきたアイテムはこの二つだけだ」

 昨日と違いまともな練習をしていないのに疲労感だけはあったので、俺たち三人は一か所に集まり座っていた。

「あんな危険物、二つでも多いくらいだよ」

「何だよ、椿。お前なんて今日は何にもしてないじゃん」

「俺は昨日の試合で疲れてるんだよ。プロ野球のピッチャーだってローテーションで休みを取りながら投げるだろ」

「甲子園のピッチャーはほとんどのヤツが連投してるじゃん。己の身体を酷使してでも戦場に立つ。あれこそ本物のヒーローだろ。椿と違って」

「甲子園だってピッチャー代えるだろ。それにマウンドは別に戦場じゃねぇし」

「戦場だよ。一度男が闘う決意をして立ったら、どこだって戦場だよ。俺レベルになると、トイレですら戦場だ」

「毎日、毎日、戦場に立たれて大変そうですね」

「まぁな。でも、ホントの真剣勝負の時は座ってるけど」

「あの、すみません」

 天使の無駄話に耐えられなくなったのか、少年が割って入ってきた。少年は「耳元でギャーギャーうるせぇよ!つーか、お前はどんだけ必死になってトイレに行くんだ」と怒ることは無かった。怒るというよりも、やはりまだ落ち込んでいるだけのようである。

「すみません。せっかくお兄さん方は協力してくれるって言ってるけど、やっぱりいいです」と少年は、俯きながら言った。

 俺はてっきり、邪魔にしかなっていない俺達を追い出すために、少年がやんわりと断っているのかと思った。

「なんでだ、少年。やっぱり俺たち邪魔だったか?」

 天使も自分の無能さが分かったのか、少年に訊ねる。

「いや、そうじゃなくて。せっかく来てもらってるのに、全然僕も調子が戻らないし、悪いなぁって」

「気にするなよそんなこと。なぁ、椿」

「いや、いいんです…ホント。僕なんてこの程度だっただけですから」

 少年がそう言うのを聞いて、天使は一歩引いて訊ねる。

「このままで、今度の大会とやらはどうするつもりだ?」

「僕がいてもみんなに迷惑をかけそうだし、このままだったら先生に言ってレギュラーを代えてもらおうかなって…」

「そんな…せっかく試合に出られるんだし、自分からやめるなんて…」

「やらなくてもわかります!」天使の声を遮り、少年は言った。「やらなくても、勝てないって…」

「いいのか、それで?」

「…はい。あ、でも一応今後も練習はするつもりです。巧くなれるかもしれないし」

「そっか」

 俺は、天使と少年の会話を黙って聞いていたが、どこか釈然としなかった。なんか納得できない。こんな時ってどうしてたっけ?

「少年がそう決めたんなら、それでもいいけどさ。…ん、椿。どうしたんだ?」

 俺は、痛む身体に鞭を打って立ちあがった。痛いな。そして、天使が話しかけるのを無視して少年が自分の荷物を置いている場所に行く。なんだ、こいつ。ラケットを二本も持ってるのか。だったら一本貸してくれればよかったのに。

「あの、それ僕のラケット。どうするつもりですか?」

 自分のラケット、大袈裟に言うなら武士の刀と同じで自らの魂とも呼べるラケットに手を伸ばす俺に、少年は尋ねる。ああ、腰曲げるだけでも痛いな。

「これか?これは俺が貰ってく」俺はラケットをケースごと持ち、答えた。

「え?」

 少年は驚いているようだが、天使は興味もなさそうに浴衣の袖口からアメを取り出し舐め始める。俺には都合がいいことで、口をはさむ気はないらしい。

「まぁ俺はラケットなんていらないけど」

「何言ってるんですか、返してくださいよ…」

「やだ」

「僕、それが無いと練習できないんですよ。返してください!」

 やっと少年は怒った。つーか、やっぱりそう言うんだ。

「ラケット無くても練習ならできるだろ。走ったり筋トレしたりか?」

「いや、でも…」

「なんかさ、お前見てるとただただ辛そうなんだよ。そりゃ目的に向かって努力するんだからヘラヘラ笑ってるのも変だけど、お前はただ辛そうなんだ。俺が学生の時の周りにもさ、お前みたいに努力してるヤツはいたけど、そいつらは楽しそうっていうかイキイキしてるように見えたんだよ、お前と違って」

「だからって、何でラケットを」

「最初に言っただろ。俺たちはお前を助けるって。だから、お前を苦しめている原因と思われるこのラケットを処分してやるんだ」

「ちょっと待ってくださいよ!処分ってなんだよ?」

ラケットを持って体育館を出て行こうとする俺を少年が呼び止めようとする。

「特別に今日と明日だけは俺が保管しておいてやる。また明日の夕方、部活前にはこの学校の校門前にまでだったら来るから、ラケットを返してほしかったら来いよ。まぁ、返すかどうかは分かんないけど」

 俺は少年の方を振り返らず、そう言って体育館を出た。こんな感じで大丈夫かな?

 それにしても、身体いてぇ。


     楸 Ⅱ


 …………

「…………」

 …………

「…………、ん?」

 あれ、もしかして、また俺のパート?

 マジかよ。油断してたぁ。てっきり今回は一回だけで俺のモノローグは終わりだと思ってたよ。もぅ完全に気を抜いてた。

 まぁ、俺は今回がモノローグやるの初めてだし大目に見てもらえないかな。

 初めてってことで、仕切り直させて。


     楸 Ⅱその2


 あ~あ。椿のヤツ行っちゃったよ。少年は少年でどうしたらいいか分からないって感じだな。

 椿のバカの考えてることはなんとなくわかるけど、この状況、俺がフォローしないとだよな、やっぱり。

 ということで、俺は茫然としている少年に話しかける。

「なぁ、少年。椿、あいつはさ、あんなことしてるけどバカなだけで、別に悪い奴じゃないんだ。説得力無いかもしれないけど。俺は、さっきの言動にも意味はあるんだと思うんだ。だからさ、ちょっと今夜一晩くらいは考えてみてくれないか?そして、できれば明日はちゃんと来てくれ」

 そう言った俺は、パートナーのいい所も照れながら説明できるいいヤツみたいだ。特に「説得力無いかもしれないけど」のところで、髪を掻きながらはにかんで言うところなんてなかなかカッコイイ。

 少年は黙ってうなずいた。とりあえずはこれでいい。少年には悪いが、今日は俺も帰らせてもらおう。片付けは一人でやってくれ。

 そうして、少年を一人にしようと気を遣い、俺はその後黙って体育館を出た。しかし、体育館を出てすぐに、もしものことを考え少年に助言をした。できる男ってのは、もしもの時の対処ができる。

 少年への助言もそこそこに、俺は椿を追った。椿は校門を出てすぐのところで見つかった。筋肉痛で歩くのもしんどいらしく、ゆっくりとした妙な足取りだ。

「おい、待てよ椿」

 俺が呼びかけると椿は立ち止まり、こちらを振り返った。

 少年から奪ったラケットケースを肩にかけ、椿は黙ったままだったので、俺は椿の行動の真意を訪ねる。

「なぁ、そのラケットどうするつもりだ?まさか本当に捨てるのか?」

「んなことするわけ無いだろ」

「じゃあ何であんなことしたんだ?」

 そこで椿は、「いいか」と前置きをして説明を始める。

「あの少年は大会のレギュラーに選ばれたことでプレッシャーを感じているんだと思うんだ。少しでも期待に応えようと思って、さらに追い込まれてるんだよ。だからあんなに辛そうだったんだ。それで俺は考えたんだけど、こういう時に漫画とかだと、バドミントンが好きだったっていう純粋な気持ちを思い出させようとするだろ。その気持ちでスランプから脱出するんだ。だから、少年にもそう思ってもらうために、敢えてラケットを奪ったんだよ」自分のしたことに自信があるのか、ほくそ笑んでいる。

 椿の考えは、俺の予想していた範囲内だった。

 さて、どうするか。別に椿の考えを真っ向から否定するつもりは無い。俺がさっき少年に助言もしたし、これで解決するかもしれない。でもなんか面白くない。椿は今、筋肉痛で苦しんでいるが、更に苦しんでもらおうかな。心身ともに。ここでそうしておくのも椿のためだろう。ホントはやりたくないけど、心を鬼にして、椿を追い詰めよう。

「椿は何でそう思うんだ?」

「どういうリアクションするか確かめたくてラケットを取ったんだけど、少年は、練習できなくなるから返してくれって言っただろ。バドミントンが好きならもっと別の言い方があると思うんだ」

「はぁ。だから椿はバカなんだよ」

「んだと!」

 俺は、怒りそうな椿を「まぁ、聞けよ」となだめてから言う。

「あの場ではああ言っただけかもしれないだろ。あれだけじゃ、少年がバドミントンを好きな気持ちを忘れてるとは限らない。それにな、椿の言ったことややったことは、それなりに同じ経験をしたヤツとか、少年のことを本当に理解しているヤツがするなら分かるけど、二、三日会っただけのお前が言っても効果ないだろ」

 俺の話を聞いた椿は、先ほどまでの勢いをすっかりと失くした。自分のやったことが急に不安になったのだろう、さっきより瞬きが多くなっている。

 たたみかけるか。

「中学の時に帰宅部のエースだか知らないけど、そんなヤツの言葉なんて心に響かないんだよ。あ~あ。これで少年が本気で落ち込み、明日も来ないで、大好きだったはずのバドミントンをやめることになったらどうしような」

「いや、でもさ…」

 ふっふっふ。椿。完全に自信喪失といった感じだな。それじゃあ、これでとどめだ!

「それにな、椿。お前は明日の夕方も来るっていってたけど、明日は土曜日だから学校は無いんだぞ」

 勝った。椿は、開けた口を塞げず、何も言い返せなくなっている。

 しかし、ただ追い詰めたりはしない。俺は飴と鞭を上手に使い分けられる男だから、椿にも飴をあげておこう。明日来なくなっても困るし。

「まぁ、椿の思ってる通りだったかもしれないし、明日が土曜日なのも少年が長い時間考えられるってことでよかったじゃん」

「あ…ああ、そうだな」元気ない椿は面白いね。

 俺が飴をあげても、不安に襲われているようで椿は元気ないまま、その後は特に何も言わずに帰って行った。

 椿にはああ言ったけど、俺も明日がどうなるか少し不安はある。でも、少年には助言してるし大丈夫かな。

 まぁそれはひとまず置いといて、早く帰って榎ちゃんに報告しよ。メールがいいかな?電話だとちょっとウザいかな?メールの方が細かくチェックしながら報告できる気もするけど、榎ちゃんの声も聞きたいし。どうしよう。


     椿 Ⅱ


 翌日の夕方。

 俺は少年に言った通りラケットケースを持って中学校の校門前を目指して歩いていた。俺の足取りはすごく重い。まだ筋肉痛が脚や背中にあるが、それとは別に気持ちの方が足を重くする原因になっていた。

 昨日、天使に言われて気がついた。確かに俺がやったことは早とちりで、間違いだったかもしれない。もしかしたら、少年を救うつもりが傷つけてしまっただけかもしれない。いや、でもきっと大丈夫。俺の気持ちは少年に伝わっている。と、そんなことをぐるぐる考えていたら夜も眠れず、今の今まで、気持ちが落ち着かなかった。つーか、今も落ち着いてはいない。

できれば、なかったことにしたい。行きたくない。でもちゃんと行ってこのラケットを返さないと。でもやっぱ、行くの怖い。

 そんなことを考えていたら校門前に着いていた。俺の足はちゃんと歩いて来れてしまっていたらしい。

 校門前では天使と、今日は榎も来て待っている。

「あ、椿君、やっと来た」

 俺は特にあいさつもせずに手をあげるだけで応える。

 二人のもとまで行くと、悩んでいる俺を励ますどころか、榎に責め立てられた。

「ちょっと。天使さんから聞いたよ。何でそういう乱暴なことするの。優しく教えてあげればいいでしょ。ラケットを取るなんてひどいよ、椿君は」

「まぁまぁ、榎ちゃん。椿も反省してるみたいだし、怒らないであげてよ」

 怒っている榎を天使がなだめてくれた。まさかこいつにフォローしてもらうとは思わなかった。

 その後は特に会話をすることも無く少年が来るのを待っていた。

 俺は早く少年に来てほしいと思いながらも、できれば来てほしくない、でも来なかったら俺のせいでバドミントンをやめたってことになるし、だから来てほしいんだけど来ないでほしい。ん、どっちだ?とにかく早くこの不安感から解放してほしかった。

「あ、あの子来たよ」

 榎がそう言って指差した方向を見ると、確かにあの少年が来た。土曜日だというのに学校指定のジャージを着ている。まさか、午前中に部活があったのか?どうしよう。

「おい、椿」少年が俺たちのところに来る前に、天使が小声で俺に話しかけた。「俺と榎ちゃんはあくまでも立ち会いだ。どんな結果でも、お前が少年の気持ちを受け止めてやれよ」

「…分かってるよ」でも、嫌だ。

 少年が俺の前にまで来た。

 天使が言った通り、天使と榎は数歩引いて俺と少年のことを見守る体勢になっている。本当に口を出す気はないらしい。

「よう、少年。どうしたいのか決めてきたのか?」

ラケットを掲げて見せ、少年に訊く。俺は覚悟を決めて、再び悪役に徹することにした。

「はい。あの、バドミントンがしたいので、そのラケット返してください」

「そうか。まぁ昨日言ったけど、俺はラケットなんていらないから返してやるよ」

よかったぁ!マジで、少年がバドミントンやめるとか言わないでよかった!

 喜びと不安から解放された安心感から叫びたくなるのをこらえ、クールを装ったまま、少年にラケットを返した。

「ところで、少年。何でバドミントンがしたいって思ったんだ?」余裕を取り戻した俺は、少年の口から「あなたのお陰で、また純粋にバドミントンと向き合うことができました」的な感謝の言葉を聞きたくなり、少年に訊いた。

 しかし、少年の口から出るのは俺への感謝ではなかった。

「昨日、ラケットを取られた時は何がなんだかわかんなくて、正直お兄さんのことが憎かったし、バドミントンするのが嫌になりました」

「え?」マジで?

「でも、あっちの浴衣のお兄さんがあなたの行動にも意味があるって教えてくれて、冷静に考えることができたんです。それで、浴衣のお兄さんが帰ったあと急に声が聞こえたんですよ。信じられないかもしれないですけど、何か頭に直接話しかけられてるみたいに」それって…まさか、テレパシーか?

「なんて聞こえたんだ?」

「たしか、『さっきのバカが憎いか?もし、少年が取られたラケットを返してほしかったら、明日言うべき答えを教えてやるよ。「バドミントンがしたいから返してくれ」って言えば大丈夫だ、たぶん。ただし、少年。答えは教えてやるけど、その理由は自分で考えるんだ。じゃないとまたあのバカはキミからラケットを奪うかもしれない』って。なんか、あの浴衣のお兄さんの雰囲気を感じたんですけど、なんなんすかね?」それは、あそこのバカ天使のテレパシーだよ、と教えてあげたい。

「それで、理由は考えてきたのか?」

「はい。たぶんお兄さんは、僕がバドミントンが好きか確認したかったんですよね。それで、自分で勝手に限界を作らないで、好きなモノなら歯を食いしばって努力して、それでとことん楽しめって言いたかったんですよね」

「ああ、まぁな」いや、俺が思っていたこと以上のことを感じ取ってくれてるよ。それ、ホントに俺からのメッセージ?「手荒なことして悪かった」と俺は動揺を隠してそう言うが、巧く隠せているだろうか?

「いえ。でも確かに僕は最近楽しむというよりも、ただ勝たなきゃっていうプレッシャーでがむしゃらに練習していただけだったかもしれません。確かに少し辛かったです」

「まぁ、がむしゃらにやることはいいことだけどな」

それより、もうさっさと終わりにしないか、この会話。この少年がここにきて聡明さを披露し始めて、こいつと話していると自分がダメなヤツみたいで落ち込むんですけど。

「はい。それで、僕のことを信じてレギュラーに選んでくれた先生の期待にも応えたいし、仲間と一緒に戦いたいから、大会にも出るつもりです。勝てるかどうかは分からないけど、せっかくの舞台ですから、精一杯やって楽しんでくるつもりです」

「そうか。そりゃよかった」早く終われよ。つーか、こいつホントに中学生か?大会のことを舞台って言ったぞ、今。

「それで、もしよかったら大会は二週間後の土日に市の体育館でやるんで、見に来てくれませんか?僕のために協力してくれたお兄さんたちに、僕はもう大丈夫だってところを見てほしいんです」

「時間があったらな。それに、そんなの見なくても今のお前の顔を見ていたら大丈夫だって思えるよ」

俺はこのまま少年に負けたくなかったので、最後にカッコつけさせてもらう。

 俺がそう言って少年の頭に手をのせると、少年は昨日までは見せなかった表情になり、後ろにいた二人にも聞こえるように「本当に、ありがとうございました」と言って頭を下げ、帰って行った。もう大丈夫だ、と心底思わせる様な自信を持った顔をして。



「あの子、笑ってたね」

「そうだね。それに、自信を取り戻せたような力強い目をしてたよ」

 そう言って、少年の走り去る姿が見えなくなってから、天使と榎は俺に近づいてきた。

「まぁな。これも俺の作戦通りだけど」

「嘘つけよ、椿。昨日からずっとビビり倒していたくせに」

 天使にそう言われて思い出した。

「つーか、お前。少年にテレパシー使って答え教えてんじゃねえよ!」

「楸さんが教えたのは『たぶん答えと思われるもの』だって。それに俺のフォローが無ければ、こういう結果にはならなったんじゃないか?」

 確かに少年の話からすると、天使がフォローしてくれていなければ、少年は俺を憎んだままバドミントンをやめていたかもしれない。だが、しかし。

「それにしたって、フォローしてくれたなら俺に言えよ。それに、お前が無駄に不安を煽ってきたんだろ。それが無ければ、俺も不安を感じることも無く、ぐっすり眠れただろうが」

「ホントだ。椿君、目にクマができてるよ。」

「はははっ。チキンで羊な椿の目にはクマって、一人動物園だな」

 そう言って天使が笑う。これが俺の限界だった。

 もう筋肉痛なんて知らねぇ。こんなもん痛くもかゆくもねぇ。今はただ、あのムカつく天使をぶっ飛ばしたい。

 そう願った時には俺の気配を察したのか天使が空に浮いて逃げていた。関係ねぇ。2メートルくらいジャンプすればまだ届くだろ。ここから五歩目で踏み切り、天使の足をつかんで引きずり降ろし、羽を引き千切ってやる。

 イメージもできたので実行に移した。しかし、ジャンプした時に脚や背中に激痛が走り、天使の足に触れただけで引きずり下ろす力は出なかった。

 無様に地面に倒れて着地した後、俺は思った。

 筋肉痛はきらいだ。あと、人助けって難しい。



 後日、榎に無理やり連れられて天使と三人で少年の試合を見に行った。

 結果は、団体戦は二回戦で敗退。少年の個人戦は三回戦で敗退。表彰台まで、まだまだ届きそうもない結果だ。まぁ現実は甘くないってことだな。

 今、少年が流しているその涙も成長するためには必要なモノだよ。できれば今後も好きなものは好きなままでいてほしい。それで努力し続ければいつか夢や目標にも手が届くかもしれない。無理かもしれない。どっちだろうな。まぁ勝手に頑張ってくれ。

 そうだ、最後に。試合にも出ないで諦めようとした少年に。

 できそうにないから、やらない、ってのはカッコ悪いらしいぞ、少年。  


椿の〝力〟について、一度ちゃんと触れておく必要があると思ったので、こういう話になりました。運動能力の向上、技術の習得、そして「副作用」として筋肉痛という反動。あとはイメージや願いの強さによって、それらが増減します。


椿たちのやっていることは、ほとんど「おせっかい」です。

場合によっては、ただの「邪魔」です。

だけど、そういうことをしないと「天使の仕事」として「人助け」ができません。

椿も作者もアホなので、往々にして間違いを起こします。

だから、「人助け」って難しい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ