番外編 榎の嫌いなもの
前回の零で一人だけほぼ出番がゼロに等しかった榎の独白のような形になっています。
私は、鈍感な椿君が嫌いです。
私は好きだよってアピールしているのに、彼は全然気付きません。
そういう気持ちに気付かないくせに、たまに、私の心を惑わすような言動をします。
あれは、わざとなのでしょうか?
私の気持ちを弄んでいるのでしょうか?
本当に、迷惑です。
何か言ってくれたり、何かしてくれたり、それ自体はとっても嬉しいです。
でも、結局最後は落ち込みます。
振り回され、やきもきして、私の心は疲れています。
気を付けてください。
椿君は、変な人です。
言うことも、やることも、考え方も、とにかくいろいろ変です。
だけど、黙っていれば普通にカッコいい。
だからか、私が知っているだけでも、今までに椿君に惚れた人は、五人くらいいました。そのうち、一人は男の人でした。
でも、そんな人たちも、椿君と話したりして知り合っていくうちに、椿君への気持ちが冷めてしまうようです。誰かが「口を開かなければ…」と嘆いていました。
告白する前に諦める人、告白しても告白した事に気付かれない人もいました。
その人たちは、椿君を「残念なイケメン」と呼んでいました。
私としては、椿君が残念なイケメンで、少し良かったです。
ひょっとしたら、椿君は女性に興味がないのかな?
そう思ったこともありました。
でも、前に偶然、レンタルビデオ屋さんで、椿君がエッチなコーナーに入って行くのを見かけました。
女性に興味が無いワケではないようです。
だから、思い切って、好きな女性のタイプを訊いてみました。
明るい子、髪の長い子、料理が上手な子、そういう答えを期待していました。
それなら、努力すればなれると思ったから。
でも、彼は「何だろ?つーか、わかんねぇ」と言っていました。
そして、その後に、好きな女優の名前を教えてくれました。
私は、どう頑張っても、その人にはなれません。
あんなに美人さんにはなれません。
ふざけないでください。
椿君にとって、私って何ですか?
そう訊いたら、あなたは何て言うでしょうか?
その前に、何か言う前に、そもそもあなたはどういう反応をするのでしょうか?
少しでも、照れるのかな?
少しでも、驚くのかな?
お願いだから、目の前で赤くなっている私に気付いてください。
お願いだから、無表情で「友達だろ」とだけ言うのはやめてください。
でも、友達未満だと寂し過ぎるから、「友達」と言うのは許可します。
あなたが「好き」と言ってくれるとは思っていません。
だから、せめて、照れながら「友達だろ」と言ってください。
それなら、私は嬉しいです。
いろいろ文句はあります。
もう少し、女心に敏感になってください。
もう少し、優しくしてください。
私の気持ちに気付いてください。
文句はあります。
鈍感なあなたは嫌いです。
でも、私は、あなたが好きです。
これは、まだ秘密です。
榎と椿の関係は、今のところ「友達以上恋人未満」のようなものだと思ってください。
ここからは、番外編という形でのんびりとした話しをやらせてもらいます。
第九話、として続きもあります。ですから番外編という区別は必要ないのかもしれませんが、なんとなく気楽に読める形、ということでご理解ください。
どうでもいい誕生秘話。榎について。
榎は、不思議ちゃん、として誕生しました。ですが、最初は書いている私がイラッとくるくらいの不思議ちゃんになる予定でしたが、そんなキャラクターを私が愛せないという個人的な理由で、少し抑えた不思議な子になっています。
椿は、自分は榎より頭がいいと思っています。ですが、周囲はそう思っていません。単純なペーパーテストで測る学力なら椿が上かもしれませんが、でも、ということで。
何が言いたいかというと、第二話での榎の登場シーン、あれは榎が椿をからかっているという見方もできるのではないかな、ということを問いかけ、榎の不思議ちゃん感を少しでも緩和できないかな、というアレです。言い訳的な…。
さらにどうでもいい話をすると、榎は、柊と比べて外見の特徴をつけていません。小柄、楸曰く「かわいい」、その程度です。頭の中で「こういう感じかな?」「どうだろな?」と考えながら話を進めてしまいました。あ~あ。




