番外編 ちょこっと懐古主義
「椿君って、何世代?」
「新世代」
十六夜からの唐突な質問に、椿はテキトーに答えた。
愛想のない態度の椿に、十六夜は不満げに言う。
「そういうこと言ってんじゃないんですよ。バカですか?バカですね。『新世代』とか、バカも休み休み言うか、もう来世で語ってください」
十六夜のその物言いに、椿は「んだコラァ!死ねってか!」とブチ切れた。
しかし、十六夜に殴りかからんとする椿を、その場に居合わせた楸が抑えた。
十六夜の部屋。
そこには今、椿を怒らせた十六夜と、十六夜に対する怒りを露わにする椿、そんな椿をしがみついて抑える楸と、十六夜にやってみるよう勧められて「エ○ーマンが倒せない」とテレビゲームに夢中になっているカイの、四人が居た。
ゲームに苦戦するカイを横目に、十六夜は言う。
「僕が訊きたいのは、どのゲームに一番熱中した世代ですか、ってことなのよぅ」
「……何世代って、お前と同じだと思うが…?」
十六夜の質問の真意が掴めず、椿は言い淀む。
しかし、そんな椿を気にすることなく、十六夜の口は滑らかに動いた。
「僕は、スーファミやゲームボーイが楽しかった世代です。あの頃のゲームは、今のゲームとは違う面白さを持っていましたよ。確かに画質は今と比べて悪いです、初めて自分のゼニ○メを見た時はショックを受け、相手のゼニ○メを見た時は嫉妬を覚えました。ほとんどのキャラは喋りません、その代わり、僕が叫んでました」
「あっそ。じゃ、今はもう黙れ」
「『六つの金貨』は面白かったですよぉ。やりこみこみしました。ラストステージの、下がマグマで崩れるブロックを渡る所でしたっけ、何回やってもヘマするから、ニンジンとってウサギ耳で羽ばたけるように準備していくんですけど、そこに行き着く前にミスって力失っちゃたりしましてねぇ、あれはイライラしました。でも、ラスボスのワ○オの顔が不細工過ぎて笑って怒りも吹っ飛ぶ、みたいな?」
「知らねぇよ。俺は今、ワケ分かんねぇこと言いだしたお前をぶっ飛ばしたい」
「でね、思うに昔のゲームって『ゲームをする』に至るまでも困難があったから、それもまたイイ意味でプラスになった気がするのね。だってさぁ、今の携帯ゲーム機と違って単3、もしくは4の電池を必要としていたワケですよ?するともう、電池を手に入れることから冒険が始まってんじゃねぇかコラ、みたいな?最初のボスは山賊じゃなくお母さんですか、みたいな?電池の消費が速いとゲームをやり過ぎだと親に口うるさく言われてしまう。だから、電池の減りに関係あるのか分からないけど、極力音を出さないようにしたり、ランプが消えるその瞬間まで粘ってセーブがいつもよりこまめになったりしてね。そういう困難があったけど、それも含めて楽しかったと今では思えますよ」
「へ~、大変だったね。で、お前の電池はまだ切れないの?」
「それにさあ、今よりも情報に乏しい時代だったから、よく分からない裏技やデマも広がりましたよね~。でも、本当に出来るのかどうか分からないから、学校で話を聞いたらその日の授業が耳に入らない程、放課後が待ち遠しかったのを覚えています」
「俺の思い出に、そんなお前はいないけどな」
「情報を持っているヤツはそれだけでキング的存在になるから、必死に頼み込んで教えてもらうのよねぇ。で、結果だけ教えてくれても詳しいやり方を教えてくれない人はホラ吹きだと分かったり、『教えてくれたやり方で出来なかった』と抗議したら『え?俺の親戚の兄ちゃんは出来たぜ』と開き直られたり、でもたまに本当の裏ワザで感動したり」
そう言うと、十六夜は「ふう」と一息つき、アゴを上げた。
その眼は、昔を懐かしんでいる。
「おい!消える足場、マジむずいぞ!」
「貸してみ、カイ。楸さん、こういうの得意な気がする」
「気がするだけかよ…」
カイは、テレビゲームに苦戦していた。そんなカイを見兼ねた楸は、腕まくりをしてカイからコントローラーを貰い受ける。
そんな二人の様を見て、椿は思う。
――あっち、楽しそうだな。つーか、何が楽しくて十六夜の妄言に付き合わなきゃなんねえんだよ?
そして、痺れを切らした椿は「つーか、結局何が言いてぇんだよ?」と十六夜に訊いた。
「お、椿君も昔のゲームをやりたくてウズウズ・タイム?」
「話聞けよ!」
「そこまで言うなら仕方ない。中古のゲームを取り扱っている店の場所を教えよう。ただし、あそこは僕の苦手な中学・高校生の巣窟となっている。くれぐれも用心を怠るな」
「……はいはい」
椿は、十六夜が何を言いたいのか、やっと理解した。
つまり『付き合え』ということなのだ。
十六夜は、中学生や高校生のグループが苦手だ。集団になった途端に自分も強くなったと勘違いし、虚栄を張って、弱いモノをいじめる。そんなヤツ等に、何の因縁も無いのに痛い目に遭わされた経験を持つ。それも、一度や二度ではない。
そんなツライ経験もあって外出嫌いとなった十六夜が、また同じ目に遭うかもしれないから『付き合え』と言っている。
面倒だが仕方ないな、そう思いながら椿は腰を上げた。
「あれ?椿、帰るの?バイバイ」と楸。
「違ぇよ」
「椿君が『ゲーム屋行きたい』って言うから、仕方なく」
「行きたいっつったの、お前だろ!」
「あ?どっか行くのか?ちょっと待てよ、今度こそエ○ーマン倒してみせんぜ」
「カイ君も来てくれなきゃヤダ! ってことで、『必殺!ネコリセット』」
「あーっ!てめっ、何しやがる!」
「ごめんだニャー」
「てゆうか、今普通に十六夜が電源切っただけだよね?」
四人で歩いている時、ふと十六夜は思った。
――僕も、集団の中で安心している。僕も、彼らと何も変わらないな
そんなことを思って暗い気持ちになっていると、いつの間にか椿と楸とカイがケンカをしていた。椿の怒鳴り声で、十六夜は、今の事態に気付く。
「やんのか、コラ!」
「上等だ!まとめてぶっ潰してやるよ」
「まだ二十年も生きてないガキ共が…。ソース味の深みを思い知らせてやるよ!」
三人が何でケンカをしているのか、物思いに耽っていた十六夜は知らない。
とてもバカバカしい事が原因のような気もするが、まあいい。
十六夜は、笑顔で参戦した。
「ここはまず、三人で一気に椿君を潰しちゃいましょ」
「「おう!」」
「っ…!上等だぁ!まとめて返り討ちにしてやんよ!」
四人の路上でのケンカを、榎と柊は、偶然にも遠目で見ていた。
「なに、あれ?」と冷めた目の柊。
「さあ?…でも、なんか、仲良くていいね」と笑みを浮かべる榎。
「ハッ。どいつもこいつも馬鹿なガキだから、波長が合うのよ、きっと」
榎と柊が見つめる先で、『ゲーム屋に行く』という当初の目的を忘れ、『ケンカの原因』も忘れた四人は、榎曰く「楽しそう」にじゃれあう。
なんやかんやで初投稿から1年経ちました。
自分でもびっくりです。1年前の自分は、きっとここまでやっているとは想像していないはずです。
それもこれも、読んでくださる皆様があってこそです。読んでもらえる、それが力となり、ここまでやってこれました。
ありがとうございます。
作者である私の優柔不断な性格から、今でもまだタイトルから(仮)も取れないのに…。自己満足で始めた作品なのに…。
読んでくださる方には、本当に感謝しかありません。
ありがとうございます。
物語の終わりは、もう大体決まっています。
ですが、まだほとんど書いていません。
きっと自己満足で終わるのだろうなと思いますが、よかったら、これからも読んでやってください。
さて、記念すべきような感じの回でした。
主役は、十六夜。
他にも書いているのですが、日付の調整とかうまくできずに、まさかの十六夜主役回です。
でも、おふざけだけではなく、私が普段感じる友達付き合いの葛藤みたいなモノや嬉しさは、書いたつもりです。
これからも、どうぞよろしくお願いします。
そしてもう一度。
本当にありがとうございます。
個人的な記念日でした。




