田中5632598号
殴り書き作品の二号です。多少あれですが御了承ください。
人は自分を証明するために名前を持つ。
カタチや色、いろんな物が違う中、一つの固体として一つの名前を持つ。
しかし俺は違う、一つの名前があったとしても、同じ者が何万人もいたら、それは俺の存在の名にならない。
家畜として作られた俺には……………
人間はゴキブリだ。そこにある全てを食い散らかし、増殖し、なくなるとまた別な場所に移動する。
人間はそんな事を繰り返し、ついに地球は空っぽになった。今地球には人間しかいない。
人間しか食べる物が無くなってしまった。
しかしこのまま共食いを繰り返していると人間までいなくなる。
そこで偉い学者が考えた。人間を家畜しよう。
そこで選ばれたのが俺、田中だった。
ひとつ謝らなければならない、俺という表現が間違っていた。正しくは、オイジナルの俺、田中だ。
今ここで話している俺はクローンの田中、そう!田中は大量にクローン生産され、家畜にされたんだ。
俺が何番目のクローンかは、わからない。しかし今こうして君と話しているという事は、少なくても俺は食用の田中、田中のエサ用の田中ではない。
君のペットの田中という事になる。それはとても幸せな事だ。
食用の田中は、自分、エサ用の自分を食べて大きくなり、殺され、ミンチにされ、君のランチになる。
本当に俺は幸せな田中だ。
「違うよ」
檻に入れられた俺の目の前にいる小さなご主人様が言った。
「僕のペットの田中はこっちだよ。」
小さなご主人様の後ろから、小さくクローン化された田中が首輪を繋がれ表れた。
それじゃ……いったい俺はなんの田中なんだ………
部屋のドアが開き、大きなご主人様がやってきた。
「コラ!カズ君、これとは喋っちゃダメって言ったでしょ!」
「ごめんなさいママ、でもこの田中おっきくなったね。」
「そうね、そろそろ食べ頃ね。そうだ今日はこの田中で丸焼きを作りましょ!」
「やったぁ!僕、丸焼き田中大好き」
嘘だろ!
ペットの田中が俺を見て笑っていた。
俺は大きな電子レンジに入れられて、丸焼き田中、バーベキュウ風味に料理された。
「いただきます。」
その日、クローン5632598の田中は、美味しく食べられました。