ゲットバックあばら骨ハヤオ
俺はついに、だめ人間では無くなった。まいった。
30歳までには小説家になり、最初に発行した本が大ベストセラーになるはずだったのに。
その後、もうかった印税で食っちゃ寝の生活を繰り返して余生を過ごそうとしていたのに。
だめ人間丸出しの夢を叶えて、だめ人間むき出しの人生を送ろうと思っていたのに。
うっかり就職してしまったから、人生の歯車が狂ってしまった。毎日決まった時間に起きて、決まった時間に会社へ向かう。一生懸命に仕事をこなし、遅くに帰って資格取得のための勉強を行う。休日には同期の仲間とスポーツ(主にバスケットボール)を行い、爽やかな汗をかく。超健康。超爽やか。アホかと。もうなんか気持ち悪いわ。そんな人間の集まり。その中に混じってますからね、だめ人間が一人。まじめな顔してドリブル練習してますから。左手で。
最近はもう、世の中のだめ人間を労るコメントとか言い放ってますから。にっこり笑いながら、歯とか真っ白ですから。いい声で「今はニートでも、いつか花開くといいね」みたいな。人間は花じゃないっつーの。そんな生活を続けて早一年半。月日は百代の過客にして行き交う年もまた旅人なり。
このままじゃまずい。また、あの頃みたいなだめ人間に戻らないといけない。毎日寝たいだけ寝て、必ず遅刻。スポーツマンを憎み、不健康丸出しの顔色。自分以外のだめ人間は、上から目線で小馬鹿に。不快な笑い顔で、歯とか真っ黄色でなくては。そして、だめ人間丸出しの夢を叶える為に、だめ人間が主役の小説を大量に書かなければ。短編とはいえ、1日に4本も5本も小説を書いていたなんて、今では考えられない。あの頃の俺の脳みそはどうなっていたのか。まさにだめ人間の所業だ。しかも、どの小説もめっちゃ面白い。俺が、俺を満足させる為に、俺が良いと思うものを書いたから当たり前だけど。
悔しい。昔の自分に負けたくない。ここでひとつ気が付いた。この"昔の自分に負けたくない"という思想は反だめ人間思想だ。だめ人間は昔の自分に負け続けないと。昨日より今日、今日より明日と、どんどんだめになっていかないと。そういう意味では、俺はまだだめ人間なのではないのか。昔の自分に負けてるし。うわ、よくわからなくなってきた。怖い。とりあえず、小説を書こう。やる気満々じゃなくて、だらだら適当に書こう。そして、小説家になって、印税で食っちゃ寝しよう。でも別に書きたいことなんて無い。特に思い浮かばない。頭が働かない。眠い。もう、今考えてたことを書いとけばいいわ。これも小説ということにしよう。理由は読んだ人が考えてくれるはず。この文章でも、いつかは印税ががっぽり入ってくるはず。
ふと鏡を見ると、そこにいる人物の顔色は悪く、歯も真っ黄色だった。セーフ!