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真白き風にそよぐ黄金の槍 (旧)  作者: 白い黒猫
二章~石国の王~
12/21

2-6 <元帥の深憂>

 レゴリスの軍は、予想を上回る手際の良さで、マギラ軍を撃退しつつあるようだった。

 期待以上の働きをしたのはキリアン率いる地方領軍の働き。都市ザルムで動揺する民衆を見事に収め都市ザルムに後援支援基地を作り上げた。

 前線への速やかな物資供給だけでなく。都市ザルムと前線を結ぶ途中の小さな村に医療施設を仮設し、前線で負傷した兵士や囚人を迅速に受け入れ、治療するシステムを構築した。


 最も驚かされたのは、囚人により結成された義勇軍の存在。様々な人種・年齢・地位の人間の寄せ集めのはずの集団が全てにおいて想定外な動きをとったのだ。

 敵襲で警護の逃げていったった気配を察知し、牢を内側から破った彼らは、そのまま逃げることもできた筈が、そこに残る道を選択する。二本あった道の一カ所に火薬を使って封鎖し。残りの一本残された峠道の狭まった場所を利用し抗戦する。その戦いはレゴリスまでも舌を巻く程で、圧倒的な人数差であるものの、相手の数による利を生かせぬ状態にし、少しずつ敵の戦力を削いでいった。

 そして現在レゴリスの師団がと義勇軍が共闘する事で、勝利を確実の物としているようだ。


 レジナルドは、現地からの報告書を読んでいるバラムラス・ブルーム元帥の様子を、静かに見つめる。


「コチラの件は、今検討中だ、まあ様子をみつつ動くしかありませんね」


 レジナルドは目を細めて、バラムラスを探るように見る。


「ん? どうかされました? 何か言いたそうですが」


「いえ、流石だと思いまして。元帥は、なさる事が早いと感心しているだけです。レゴリスがロンサーヌ地方へ向かったという直後から根回しまでされていたようですし」


 レジナルドは珍しく嫌みっぽい笑みをバラムラスへ向ける。バラムラスを名前ではなく、地位だけで呼ぶときは、レジナルドがバラムラスに怒りを感じている時だ。

 バラムラスは困ったなという感じで、薄くなった前髪をかき上げる。

 レジナルドはバラムラスを全面的に信頼している。なのである程度の隠し事をしていても、いつもなら放っておくのだが、流石に今回の件は追求せざる得ない。


「まあ、そう怒らないで下さい……貴方をないがしろにするつもりではなく……

 色々不確定な要素が多すぎでして、もう少し色々みえてきたら、貴方に相談しようと思っていました」


「貴方は私を息子と言ってくださっている。逆に言えば私にとっても貴方は父同然の存在なのですよ。

 貴方が守ろうとしているものは、私だって守りたい。ブルーム親子がゼルフィアの囚人に拘る理由は何です?」


 バラムラスは、レジナルドの金彩眼にシッカリ見据えられて、大きくため息をつく。

 レジナルドには一切、嘘やごまかしが効かないのは分かってはいるだけに、バラムラスはどうしたものかと悩んでいるようだ。


「レゴリスは何も関係ありません。今回、囚人解放に動いたのは……半分興味で、半分罪滅ぼしの為です」


 バラムラスはそこで言葉を一旦きる。それはごまかす為ではなく、一番本心にあった言葉を模索している様子なのが分かったので、レジナルドはあえて言葉を返さず静かに待つ。


「あの状況で、マギラの侵攻を軍人でもない集団が止めたという事実に、純粋に興味を覚えたのは、理由の一つです。貴方もそこは気になったでしょう」


 レジナルドは頷く。

 義勇軍、面白そうとはいえ、その存在は謎が多すぎる。自分の片腕であるレゴリスが向かっているので、彼の判断をまってから次のアクションを起こすことで十分だと思っていた。

 しかしバラムラスは、何の情報も待たずに恩赦という形で彼らを解放させようという動きを取り始めていた。


「そこで、レゴリスが向かったのを良いことに、様子を見させたのだが……

 あの子の反応も想定外すぎた……正直戸惑っています」


「うむ……」


 レジナルド思う節はあったので頷く。


「貴方もご存じのように、あの子は、ああ見えて人見知りが極端に激しい。私が知る限り、あの子が心を預け許しているのは貴方だけだ。

その状況は親としてどうかと思う所ですが、その相手が貴方のような方だから、私は安心してきました」


 現地にいるレゴリスは、彼らと合流するやいなや、彼らの恩赦を要求し、軍に迎えたいといった意志まで示してきた。


『最高に面白いヤツを見つけた。何が何でも手に入れて、お前の所に連れて行く』とレゴリスはレジナルドへの手紙に記している。


 その文面から、レゴリスの囚人に対して強い愛着と執着を伺えた。いったい、レゴリスにそこまでの感情を抱かせる人物とはどんな相手なのか? 


「まあ……親馬鹿と言われそうだけど、息子はああみえて人を見る目はある、新しい執着相手はそれだけの人物なのでしょう」


 レゴリスが執着している人間の一人が自分だけに、素直に頷いていいものかは迷う所である。

 視線を一旦バラムラスから外す。



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