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真白き風にそよぐ黄金の槍 (旧)  作者: 白い黒猫
二章~石国の王~
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2-5 <王の顔>

 囚人達のボスであろうその人物は、バートを押しのけ、ゆっくりとした動作で前に出る。

 その様子を見て、ミラーはヤレヤレといったように苦笑いをし少し下がりその人物の通る場所を空けた。ゼルフィアの王はゆっくりテーブルつたいに歩き、レゴリスの方へ近づいてくるようだ。周りの囚人達の緊張が高まるのを感じた。

 彼の隣にいた少年がすぐその後に続こうとするが、それをミラーが止める。ドンとバートがその人物を守るように移動するが、不要と仕草で示す。

 その人物を見て、レゴリスの部下達はざわめく。


「子供じゃないか!」


 でも、囚人達はその子供に対して敬い、何かあったらすぐ行動できるように待機しているのを、レゴリスは感じていた。

 少年の目深に被ったフードから見えている美しい形の唇は、ニヤリと笑う。

 そして子供だと言いながら自分の部下は、レゴリスに静かに近づいてくるその少年の気配に押されている。

 レゴリスは、警戒する部下を押しのけ、前に出て待ち受ける。


「テリーとかいったかな? ようやく我々はゼルフィアの王への謁見を許されたというわけか。

 我々も少しは認めてもらえたということかな?」


 目の前にきた少年に、レゴリスは語りかける。レゴリスの胸あたりまでしかない身長の少年は、その言葉に肩をすくめる。


「貴方が代表者を指名してきたので、ミラーに対応してもらっただけです。

 彼のほうがココで長く皆の面倒を見ている」


 確かに彼らは、嘘は言ってない。真実も言わなかっただけだ。


 レゴリスは右の方でミラーの腕に抱きしめられるように捕まっている少年が、コチラに激しい視線を送っているのに気が付く。まるで子猫を守る母猫のようなストレートな警戒心と怒り。安心させるように笑いかけてみるが、効果はあまりなかったようだ。今にもテーブル越しでもコチラに飛びかかってきそうな雰囲気だが、テリーはそちらに視線を投げると、取り合えず殺気だけは引っ込め、押さえ付けていたミラーの腕をはらう。


「一つお聞きしたい」

 

 視線をレゴリスに戻したテリーは、名乗るわけでもなく、唐突にそんな言葉を投げかけてくる。

 囚人でいながら、王国軍大将に対して尊大で失礼ともいえるその態度だが、彼の所作はあまりにも堂々としていて、一つ一つにどこか品位があり、部下は咎めることも忘れ、つい見入ってしまっている。


「……なんだ?」


 テリーに視線を戻す。


「貴方なら……我らと共闘せずともマギラと戦えるでしょうに。

 何故、わざわざ得体のしれない者と戦うという、面倒な道を選ぶのです?」


「お前達が気に入ったから、それが答えにならないか?」


「……」


 首傾げるようレジナルドを見上げてくるテリー。

 フードの奥から感じる視線に、レゴリスまでも気圧される


「あと 命令もあってな」


 レゴリスは、懐から紙を取り出しテリーに渡す。


「レゴリス様?!」


 イワンが咎めるように声を出す。父バラムラス・ブルーム元帥からの司令書だ。

 テリーはその手紙を静かに読み、そして丁寧に畳みレゴリスへ返す。


「ま……理由は何にせよ……

 我々が始めた戦いを、我々自身で終わらせるチャンスを残してくれた事を感謝します」


 テリーのフードからみえる細い綺麗な形の唇の口角がクッと上がる。


「我々を気に入ってくださったように言ってくださいましたが、貴方もなかなか面白い方だ」


「そりゃ光栄なことで」


 レゴリスもニヤリと笑い返す。レゴリスは自分が、高揚感を覚えいつになくの興奮していることに気がつく。


「我々戦闘能力について気にされていましたね。これが証明とは言えませんが、私が貴方の前に姿をさらしたことでコチラの誠意と覚悟を感じて頂きたい。それで納得して頂けるかわかりませんが」


 テリーはゆっくりとした動作でフードを外す。

 レゴリスを初めとする王国軍の人間は、いろんな意味で予想外の、ゼルフィアの王の容貌に息を呑んだ。

 そして、何故彼がここで指導者となり得たとか、何故囚人達がこうまでも彼を敬い慕うのか、何故マギラの侵攻に対して的確な作戦をたて、対応することが出来たのか理解した。レゴリスはしばし放心していたが、いち早く我にかえる。


(面白そうなヤツとは思っていたけど、ここまでとはね)


 レゴリスの顔がニヤリと感悦の表情を浮かべる。

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