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<予言>

「愚者が描いた世界」と同じ世界で同じ時代の同じ国の物語。

 印象はかなり違う世界になっているとは思います。

 違うのはレジナルド王弟子視点で、王国軍側から見た世界が描かれています。

 時代を傍観する立場で生きたフリデリック王子の物語よりも、コチラのほうが時代を作る立場にある人物の物語の為、普通のヒロイックファンタジーな内容で少し派手なものになるかと思います。

挿絵(By みてみん)


『二人の乙女、その身は汚れ歩く道に屍ばかり

  乙女の魂は、王者の証

  赤き乙女は、破滅と癒し 

  白き乙女は、試練と再生

  二人の乙女が交わるときに 

  割れた大地に、一つの未来生まれる』


「なんなんだコレは?」


 ルイーザ宮内の主室は夜をイメージした濃紺の壁に金と銀のレリーフを施された華麗でえるご落ち着いた雰囲気の部屋である。そんな部屋で男の声が響く。

 声を上げたのは、この部屋の主であるアデレード王国王弟子にて上級大将を勤めるレジナルド・ベックハード。彼は黄金の髪に縁取られた秀麗な顔を思いっきりしかめた。このように顔を歪めたとしても、天才彫刻家の手によって作られたようなその整いすぎた容姿を損なうことはなく、かえって人間的な魅力と男っぽさを加えるだけである。

 レジナルドは手にした紙をヒラヒラさせて親友でもあるレゴリス・ブルーム上級大将に問いかけた。

 意地の悪い顔でレゴリスはその様子を見ながら、藍鉄の瞳を細めクックックと笑っている。女性からクールさや、ニヒルさで騒がれているその男らしい顔も、友であるレジナルドの前だけでは無邪気な子供っぽい表情をみせる。


「さあね、マギラの新たな『ご神託』らしいが」


 アデレート軍は公式には金獅子、紫龍、赤狼、白鷲と四つの師団がある。しかし実はもう一つ陰で存在しているのが黒蛇。この師団は諜報を担当している。敵国であるマギラ皇国に関する報告書に黒蛇がつけてきたのがコチラの詩だった。


 レゴリスはニヤニヤとワインの瓶を手にとり自分のグラスと、空いていた友のグラスにワインを満たす。

 レジナルドの金の色を散らした藍色の瞳がジロリとレゴリスを睨む。レゴリスは神託の解釈といった事はさっさと放り出し、友との酒宴を楽しむ事にしたようだ。

 マギラは神殿の力が強く、神官が政治のすべてを動かしているといってもよい所があった。

 それも狂信的ともいえるレベルで、神殿の出すこの神託が全てでそれによって婚姻を決められ、他国を侵攻し、人が処刑される。

 その神殿が今回出してきた神託とやらがコレらしい。

 今までの『ご神託』は、何かをもう少し特定できる方位とかキーワードがちりばめられ、何をすべきかを示していた。しかし今回の神託は、誰に向かって何を伝えようとしているのか、まったく意図が分からない。


「マギラの神官たち、今度はマギラの皇帝に、さらに二人奥さんを娶らせるつもりだとか!」


 二人の乙女とやらは、君主でいることにおいて必要な存在のようだが、吉兆にも思えない文々である。マギラの皇帝ヴェルヘルムには、既に皇妃に加え側室も数人いるので、さらに妻を持たせようとしたとしても、そうすることの意図も分からない。


「それにしても、意味不明だな」


 レジナルドは紙をテーブルに放り投げた。

 レゴリスはワインの香りを楽しみ、グラスをあおる。そして嫌みっぽくニヤリと笑う。


「そういえば、マギラには赤き乙女らしきものは既にいたな! しかしアレを妻にするというのは、他人事ながら同情してしまう。

 もしそうなったら、ヴェルヘルム皇帝にお悔やみの手紙でも送ってやるか!」


 レジナルドは、苦笑し首をふる。


「あの毒女アリアードが乙女? 笑えない冗談だ、しかも同腹ではないにしてもヴェルヘルムとあの女は正真正銘兄妹な筈だ、血が近すぎる流石にそれはないだろう」


 アリアードはマギラの第三皇女で、アラゴール皇国の皇帝ゲイルの側室となっている女性である。

 アリアードは人を圧倒する美貌と豊かで見事な赤い髪の女性だが、その美貌よりも炎のように激しい気性のほうが大陸中で有名だった。政略結婚がお得意のマギラが同盟の証に皇帝ゲイルに元々差し出そうとしたのは第一皇女だったのに出し抜き後室へ飛び込み、皇帝ゲイルをたらし込み見事に寵愛を勝ち取ることに成功させる。

 寵愛を盾にアラゴール皇国で自由気ままな生活をし、あげくに皇帝ゲイルと供に戦場まで足を伸ばし時には自ら剣を手に殺戮を楽しむというとんでもない皇女である。

 レジナルドとレゴリスにとっては、出来ることなら関わりたくない忌々しい相手。


「まあ、マギラのご神託は、単なる戯言、俺たちには関係ない」


 レゴリスは肩をすくめる。


「だろ? 分からない事は悩んでも仕方がないって。だから今はワイン(コレ)を素直に楽しもう」


 この言葉で二人はこの文章から興味を逸らし、記憶の角へと追いやってしまった。

 レジナルドとレゴリスが『ご神託』をこのようにやり過ごしたのは、はなから『ご神託』とやらをまったく信じてなかったからだ。

 というのは、こういった『ご神託』が、マギラの政治を動かしている神殿の金彩眼の神官が出したものだからである。

 レジナルドも金彩眼をもっており、彼の藍色の瞳には絵の具を散らしたかのように金の色彩が入っている。

 自分自身が金彩眼をもつレジナルドは、この瞳が世間でいうほど素晴らしい能力を持っていないことを一番理解していた。

 人より若干勘が良く、人より他人感情を鋭く察することができる、それくらいである。

『未来を見る』程の能力があるはずもない。

 ただ彼らは、人より若干優れた直感に歪んだ欲を絡めた神託とやらで、人を自分達が望む未来に誘導しているにすぎないからだ。

 レジナルドがマギラの『ご神託』を気にするのは、それによってその後のマギラの動きを読むだめだけである。


 ただ、レジナルドはまだ知らなかった。

 金彩眼の者がごくまれに、本当に未来を感じる瞬間があることを。

 この『ご神託』は、まさにその瞬間を迎えたマギラの神官が病床で人生の最後に譫言でつぶやいた言葉だった。マギラの神殿は 何十年に一度起きるかどうかのその現象に直面した事と、その真の『ご神託』が何を示しているのか理解できず混乱した。

 その言葉を発した神官に意味を問いただそうにも、彼は永遠にその事について語ることは出来ない。

 神殿中が右往左往し混乱した事が、その『ご神託』を不用意な形で神殿の外部、そして国外にまで流布することになったのだ。


 レジナルドとレゴリスの二人はいずれ知る、この言葉の意味を。

 そして国を、未来を、作るのは男ではなく二人の乙女、基、女であるということを。


あと、イラストは、この章のイメージではなく、この物語の表紙のイラストのような物と考えて下さい。なので、この人物はレジナルドでもレゴリスでもありません。


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