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二人で最強

掲載日:2026/07/03

少し前に書いた異世界物の最後を書いてみました。楽しんでもらえると嬉しいです。

二人で最強


「ぐっ?!」


空中で巨大な拳に打たれ、遥か後方に吹き飛ばされる。


「がはっ!!」


地面に叩きつけられ、思わず血反吐を吐いた。


……息ができない。


《拍子抜けだな。貴様ら人間はこの程度か?》


上空から、声が聞こえる。


空を覆いつくすほどの、巨大な蠅の化け物。

原初の災厄 “ベルゼブブ” が、あざ笑うかのように言った。


「なに、言ってやがる。勝負はまだまだ、これからだぜ……。」


ふらつきながら立ち上がる。

体の至る所に痛みが走り、骨はミシミシと軋んでいた。


目はほとんど見えない。

それでも立ち上がるしかなかった。


《……名残惜しいが、貴様はここまでよ。》


奴の口元に光が凝縮し始める。

周囲の大気を巻き込み、紫の燐光が爆ぜた。


《欠片も残さず消えるがいい。 “終焉行進デス・パレード” 》


一直線に放たれた。


眩い光線が、差し迫ってくる。


「ハァ、ハァ……。」


背には、愛する人たちがいる。

ここで逃げれば、彼らの笑顔が、未来が、永久に閉ざされてしまう。


そんな選択肢―――僕には無い!!


両手を掲げた。


「 “虚界吸収ヴォイド・ドレイン” !!」


楕円上の紫煙の盾が、それらを瞬く間に吸収する。


―――シュウゥゥゥゥ!!


しかし、相手の力は増す一方。


「ぐあぁぁぁぁ!!」


盾が崩れ始め、掌が蒸発し始めた。

肉が露見し、血は噴き出す。


<また、守れないのか……。>


思い返すのは遠い記憶。

ギースを、救えなかったあの日の事。

強くなろうと誓ったあの日の事。


それらが、走馬灯のように駆け巡った時。


【―――忘れんな。俺とお前、二人で最強なんだよ。】


「っ?!」


瞬間、橙色の光が視界を覆いつくした。


光線の威力が弱まっていく?


いや、違う……。


<ギースの、魔力?まさか、このペンダントから?!>


胸元に浮いた彼の形見。

まるでギースが、助けてくれている様だった。


「がっ、ぐぐっ、ぎっ!!」


必死に手を伸ばし、掴み取った。


すると彼の、記憶が、思いが、知識が、魔力となって流れ込んできた。

数多の魔力設計が、頭の中に浮かび上がる。


【……さぁ、見せてやろうぜ相棒!!】


心に響く彼の声。


【俺らの魂の共鳴を―――】


【究極の “魔道合体” ってやつをよぉ!!】


キュイーーーーン!!


赤と青の光が混ざり合う。


僕は止まらない。


声を嗄らせて、こう叫んだ。


「来いっ、 “ゲオルギウス“ !!」


城壁の様な旋風が、周囲に吹き荒れた。


光の圧縮。


刹那、巨大なビッグバンが起こった。


白い粉塵が辺りを包む。


《大義も為せず終わるとは。哀れだなにんげ―――?》


突如ベルゼブブは固まった。


徐々に徐々に膨れ上がる謎の違和感。

視界が晴れた瞬間、疑念は確信へと変わった。


『……終わっちゃいないぜ。俺たちは、まだここに居る!!』


大地が震えた。


砂煙が割れる。


空が、


海が、


この星の息吹が。


二人の魂に呼応している。


そして―――


巨大な魔道兵器が姿を現した。


紫のボディに燃え盛る蒼炎。


赤く輝く双眸が、奴を射抜いている。


《なんだと?先の一撃で、跡形も無く消し飛ばしたはず。》


『確かにさっきはヤバかった。だが、ギリギリ―――

ほんとにギリギリだったが、間に合ったぜ。』


《貴様は一体、何者なのだ?》


奴は言った。


『俺たちが、何者かだって?』


【教えてやろうぜ、ジオ。】


『あぁ。』


機体が軋み、右腕を大きく上げた。

そして、人差し指で天を突く。


『世界が闇に包まれようと、光に向かって突き進む!!』


『運命さえも捻じ切って、己の道を切り開く!!』


『天上天下唯我独尊!!』


『『魔道合体 “ゲオルギウス” !!』』


全身から火花が散った。


《……愚かな。姿を変えたところで、何も変わりはせぬ!!》


新たに光を収束させる。

今度はさっきの比ではない。


《絶望しろ、そして死ぬがいい。》


極限まで凝縮された紫の閃光。


《 “絶望終末砲アポカリプス・レイ” !!》


一気に放たれる。


その威力に誰もが息を呑み、彼らの命は潰えたかに思われた。


―――ギュルルルル!!


大気を削る音が聞こえた。

すると同時に、光線が一点に吸収されていく。


《ばかなっ?!一人の人間ごときに、こんな芸当―――ありえない!!》


『いいや、一人じゃない。』


『『俺たち二人なら、なんだって出来るんだよ!!』』


ゲオルギウスの右手が、全てを喰らい尽くした。


《おのれェェ……認めん、認めんぞォォォォ!!》


ベルゼブブが急速に迫ってくる。


けれども、頭はやけに冷静だった。


『これで、決める―――』


臨戦態勢に入った。


『マギア―――』


右腕周囲から全身にかけて、魔力を収束、超高速回転させる。

機体は宙に浮き始め、次第に紫色のドリルへと変貌した。


『オーキッド―――』


前方に加速の魔法陣。

幾重にも重なっている。


『ストライクゥゥゥゥ!!』


後方に向かって魔力噴射、猛スピードで駆け抜けていく。


《死ねェェ!虫けらァァァァ!!》


ボゴッ


鈍い音が響き渡る。


奴の右手との正面衝突。


重量の違うもの同士、どちらが押し負けるか、目に見えていた。


―――はずだった


ギュルルルルッ!


ベルゼブブの腕がひび割れ、次々と砕けていく。


《グギャア!!》


断末魔が響き渡る。


『『ハァァァァァァァァ!!』』


なおもゲオルギウスの進撃は止まらない。


やがて、心臓部の魔石にまで到達。


―――キィィィィン!


金属同士が擦れ合うような、甲高い音が鳴り響く。


回転は更に加速し、何千、何万の域に到達。

大きな亀裂が入り始めた。


『行くぜ、ジオ!!』


『行くぞ、ギース!!』


全身に力が漲る。


『『リミッター解除―――!!』』


『『“フル・バースト” だァァァァ!!』』


螺旋の渦は、亜高速にまで突入した。


―――ピキピキッ、バキンッ!!


《ギィアァァァァ!!》


耳をつんざくような悲鳴が聞こえる。


やがて辺りに静寂が訪れた。


見渡す限り、紫の燐光と、ベルゼブブの欠片に包まれていた。


『終わったん、だな……。』


『そうだぜ、俺たち二人の完全勝利だ。』


変身が解けていく。


【やったな、相棒。】


ギースの声が聞こえる。


【大事なもん、今度は守れたじゃねぇか。】


「でもそれは、ギースがいたからで。

俺なんかまだまだ……。」


【違うぜ。お前はもう、立派な一人前だよ。】


―――ピキンッ


ペンダントから光が漏れた。

それぞれ粒子になって崩れ始める。


【さてと、お別れの時間が来ちまったみたいだ。】


「待って、くれ。」


手を伸ばす。


「俺はまだ、ギースと―――」


視界が暗転し始めた。

体中から力が抜けていく。


【お前の心には、いつだって俺が居る―――】

【だから、忘れんな。】


ギースの温もりを感じた。


【俺とお前、二人で最強だ。】


光が薄れていく。


【あばよっ、ジオ!!】


彼の残滓が、風に乗って飛んでいった。


「ギ、ース……。」


ふわりとした感覚。

それから重力に従い、落ちていく。


<じゃあな、相棒。>


急降下していく。


「……。」


全身で風を感じる。

肌をくすぐって心地がいい。


「……!!」


誰かの声が聞こえる。


「―――オ、ジオってば!!」


懐かしい。

それでいて、今一番に会いたいヒト。


その暖かい温もりに包まれて、僕は深い眠りについた。


***

こうして、最終決戦は幕を閉じたのだった。


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