表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
精霊の娘ジュジュと火竜の王子 ー森からはじまるふたりの旅ー  作者: ななこ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/32

31 永い旅へ

 アオイの背から、ジュジュは雲海を見下ろしていた。


「ほら。今日が生まれたよ」


 雲の端から光があふれ、世界がゆっくりと色づいていく。


「きれい……」


 遠くに山の頂が、島のように浮かび上がる。


「もっと上まで行ってみよう」


 アオイはさらに高度を上げた。


 冷たい風が強くなり、ジュジュの頬を刺す。


 ブラックが身を寄せてくれた。


 どこかにノリカの父がいないか探した。


 ハヤテはいつも上空を駆け抜けているそうだ。


「異界はもっと高い所にあったんだよね。お父さん……大樹様はすごいな」


「『上にはいいもの』があったね」


「うん!」



 港町に降り立つ。


 潮の香り。食べものの焼ける匂い。人々の活気。


 市場には色とりどりの魚や大きな蟹が並んでいた。


「川の魚とぜんぜん違う……あれ、本当に食べられるの?」


「僕は匂いだけでいいかな。変なものを取り込みそうだ」


 指をチョキチョキさせる仕草が可笑しくて、ジュジュは笑い続けた。


 広場から音楽が聞こえた。


 ブラックがぴょんと跳ねて、駆け出した。


 何か見つけたみたいだ。


 人だかりの中で歌っていたのは――


「ウタネお姉様?」


 人の姿のウタネだった。


「海に棲む精霊に力を借りたの」


 隣では、かつて船長だった魂が、人の姿で豪快に酒を飲んでいた。


 魂たちに運んでもらった廃船で、港を巡り、歌を届けているのだという。


 ウタネの陽気な歌に合わせ、人々は踊り、口ずさむ。



 山々、川、谷底、海を巡り、人の街にも数多く訪れた。


 精霊の存在を忘れた人々。


「見えなくても、いいよね」


 ジュジュは、そう言って笑った。



「連れて行きたい場所があるんだ」


 降り立ったのは、砂漠だった。



 風妖精が砂を巻き上げ、奇妙な形の木々が立っていた。


 ここを、アオイはひとりで歩いたのだ。


 ジュジュの胸がぎゅっと、締め付けられる。


 もう、離れたくない。


 それが何か、もうわかっていた。


 夕日が砂を赤く染める。


「前は、逃げるようにここに来た。

 それでも……君のことばかり考えていた」


「アオイも寂しかった?」


「泣きたくなるくらいに」


 ジュジュの胸に、あたたかい火が灯る。


 アオイは火竜に姿を変え、鱗を一枚はがすと人の姿に戻った。


 それを、ジュジュに差し出した。


「ふたりの時間を、ここに」


 ジュジュは息をのむ。


「ジュジュ。共に生きよう」


「……」


「ユニコーンと約束をしてないよね?」


 思わず笑ってしまう。


「この旅が終わったら、ハクト様たちと竜の谷へ行くものだと思ってた」


「太古の森に住みたいって、もう伝えてある」


 ジュジュは鱗を抱きしめ、魔力を流す。


 光の中で、それは本へと変わる。


 最初の頁が、静かに開く。


 そこに、記されたのは、ふたりの名。


 アオイが空へ舞い上がる。


「アオイ……青生!」


 青い炎が、夜にひとすじの光を描いた。


「ジュジュ。名前を呼んでくれて、ありがとう」


 星空の下、ふたりは語り続けた。


 精霊は、永い時を生きる。


 ずっと、ずっと一緒にいよう。


 ジュジュは、もうひとつの願いを口にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ