27 光射す
老人は、役目を終えた大樹だと教えてくれた。
こうして異界にとどまり、番をしているのだと。
「僕らを止めに来たのですか」
「止めはせん」
老木は深くため息をついた。
「あの時は……切り離すしかなかったのだ」
その声に、かすかな後悔が滲む。
「我らは生死に干渉しない。隣人として見守るだけだ」
「魔物は減っていないのですか?」
「半分にはなったな。あとは……どれほどの歳月が要るかはわからん」
老木の目が、静かに四人を射抜いた。
「終わらせてやりたいというのなら、それもよい」
老木は、静かに目を細めた。
「だが、二度と作るな」
それだけだった。
「できるか?」
ノリカが真っ先に手を挙げた。
「淀ませない。風は巡らせる」
ウタネは、ふっと笑った。
「わたしは、人とともに歌おう」
アオイは少し考えて言った。
「安らぐ火を、届けたい」
ジュジュは、まだ答えを持たなかった。
それでも、うなずいた。
老木は口元に笑みを浮かべながら、消えた。
あとには、甘い香りが漂い、枝が実をつけた。
ジュジュが手にとり、皆に渡した。
青い炎は、幾度も放たれた。
それは暗く淀んだ空に、光を灯した。
「残っていないか、確かめてくるよ」
アオイはひとり、高く舞い上がった。
ここにも日が射すのだろうか。
この地にも草木が生え、動物も人も住めたらいいな。
そんなことをジュジュは考えていた。
この地は、どうやって戻るのだろう。
肝心なことを、聞かずに来てしまった。
「大変だ!!」
アオイがものすごい勢いで戻ってきた。
「慌ててどうしたの?」
「あちこちひび割れていた。崩れる」
地面が盛り上がり、崩れ、黒い亀裂が走った。
底は見えない。
轟音とともに、崩れ落ちていく。
アオイはひたすら飛び続けた。
「アオイ! 後ろ!!」
ノリカが叫ぶ。
地割れの奥から、黒い影が這い出した。
生にしがみついた魔物が、最後の牙を剥く。
ブラックが挑みかかる。
尾に巻かれたが、牙を突き立てた。
黒い魔力が吹き出し、白い鱗を溶かす。
炎を吐けば、ブラックごと焼く。
ジュジュはユニコーンのナイフにありったけの魔力を込める。
「緑夏!」
「まかせて!」
ナイフは、迷いなく突き立った。
鱗の奥へ、深く。
断末魔が空を裂く。
ウタネが、静かに子守り歌を紡いだ。
淡い光が、大蛇を包んだ。
黒い影に一瞬、子を抱く女の姿が、かすかに浮かぶ。
顔は空へ向いていた。
『見てごらん、青空だよ……』
最後の影が、静かに消えた。
崩れ落ちる異界の空に、はじめて、光が差した。




