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精霊の娘ジュジュと火竜の王子 ー森からはじまるふたりの旅ー  作者: ななこ


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22 ミウの作戦

 もぐら父さんは、割れたもう片方の鱗を、無言でジュジュに差し出した。


 鱗は淡く光り、また本へと変わった。


 抱きしめると、ほんのりと温かかった。



 階段に戻ると白い小竜が待っていた。


「無事で良かった。ブラックも元の姿に戻れたんだね」


  どこも怪我はしていない。ジュジュは胸をなで下ろした。


 花も咲いているから、とりあえず危険は去ったってことだ。


「白くても、ブラックって呼んでいい?」


「きゅいん!」


 ジュジュは白い鱗をそっと撫でた。



 大樹へ向かって、本を掲げた。


「水の国の扉を開けてください」


「きゅいん、きゅいん」


 ブラックは壁に前脚をかけ、鼻をこすりつけている。


 大樹に話しかけているようだ。


 葉がざわざわと揺れる。


 本から声がする。ミウ様だ。


『お願い。連れて行って欲しい』


 ブラックは首をふる。行かせないと言っているのだろうか。


 光る実がポッポッと上に向かって点いた。


 ジュジュは駆け上がった。


 ミウ様は、今までずっとひとりで戦い、守ってきた人だ。何か考えがあるに違いない。


 扉が見えた。


 踊り場に着くと、うわっ――とつま先立ちになり、ジュジュは壁に張り付いた。


 細長く煤けた痕に、鋭く尖った枝が突き刺さっていた。


 これは――あの大蛇の痕だ。


 踏まないように、開いた扉の中に飛び込んだ。


 ノリカを呼ぶと、ビューンと飛んで来た。


 はぁはぁと息を切らしていた。


「蜜、いる?」


「ちょうだい。もぐら母さんにアオイはどこにいるのか聞かれて、誤魔化すの大変だったの」


「たぶん、ばれてるよね……」


「終わったら三人で謝ろう」



 お城までノリカが運んでくれた。


 空に虹がかかるとノリカが急に止まってしまった。


「綺麗だね」


「きっと……大丈夫。アオイも」


 虹の向こうを見つめながら、ジュジュはつぶやいた。


 次は三人で来ようと約束した。



 水のカーテンをくぐる。


 ミナトはジュジュの話を聞きながら、微笑んだ。


「アオイは琥珀を手に入れたか」


「ジュジュのおかげです」


 本から、小さなミウが姿を現していた。


「浄化の魔力はわたしにも伝わってきた。ほら、これをごらん」


 ミウの琥珀から、温かな魔力が漏れ出ていた。


 ミウ様の琥珀と本はつながっていたんだ。


「あとは火竜だけか」


 ブラックは「きゅいん」と小さく鳴いて、体を伏せた。


「お父様、私の琥珀を受け取りに参りました」


「だめだ。この琥珀に残る魔力さえも使おうというのか」


「ハクト様のお力が必要なのです。アオイにはまだ無理です」


「だからと言ってお前が……」


 ミナトが立ちあがる。


「渡すことは、できない」


 そう言って、あっという間に姿を隠してしまった。


「困ったわね」


 ミウが大きなため息をこぼす。


「琥珀を、何に使われるんですか?」


 ジュジュの問いかけに、少し間をおいてから答えてくれた。


「火竜王ハクトの真名を取り返すわ」


 ミウの瞳が、静かに燃えた。


「そのためには、琥珀が必要なの」


「私たちに手伝えることはありますか?」


「それならば、ひとつ……」


 ミウがジュジュの耳元へ近づいた。


 小さな声で、何かを囁く。


 ジュジュは目を見開き、やがて小さく頷いた。


「一度、階段へ戻りましょう」


 ミウが、いたずらっぽく微笑む。



 ジュジュとノリカは、声を張り上げた。


「大変です! ミウ様が!」


「ミナト様! お力を貸してください!」


 水がめからミナトが姿を現す。


「何があった」


「これを見てください!」


 真っ黒に変わった本を見せた。


「また、浸食されたのか」


 貸しなさいとミナトが魔力を注ぐが、何も変わらない。


 表紙から微かな声。


『琥珀を…』


 仕方がないと懐から琥珀を取りだし、表紙に置くと、すっと琥珀が消えていった。


 だが、変わらない。


「ミナト様! 本当にごめんなさい! 急ぎますので失礼いたします!」


「まっ! 待ちなさい!」


 振り返らず、本を抱えたジュジュをノリカが突風となって扉まで運んだ。


「ここまで来れば大丈夫」


「はぁー。謝る人が増えたね」


 浄化された本に、焼かれた大蛇の煤を塗りつけた。


 ミウの案だ。


 表紙から水があふれだし、煤を洗い流す。


 小さなミウ様が顔を出す。


『……ごめんなさい、お父様』


 ほんの一瞬、ミウの声が揺れる。


 それでも、目は逸らさなかった。


「石の洞窟へ戻りましょう。ミノリ、アオイに蜜を分けてくれないかしら」


 ポッと花が咲く。


 お母さんとミウ様は本当に仲良しなんだ。


 ノリカは「先に行ってるね」と飛び去った。


 蜜を花びらで包み、ジュジュは再び階段を上った。

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