表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
精霊の娘ジュジュと火竜の王子 ー森からはじまるふたりの旅ー  作者: ななこ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/32

12 三人で上ろう

 ジュジュは本に、階段へと願った。


 ――何も起きない。


「あれ……おかしいな。前は戻れたのに」


「少し休ませてあげなさい」


 チカゼの言葉に従った。


「部屋に案内するね」


 ノリカがふわりとふたりを持ち上げる。


「ありがとう。ノリカもここで休むの?」


「うん。たまにはお母さんと話したいし」


「お母さん?」


「ここ、わたしの家」


「ええっ——」


 ノリカもまた好奇心旺盛な娘で、普段はミドリと名乗り、風妖精の村で暮らしていた。



 三人は本を囲み、これからのことを相談。


 まずはアオイとジュジュの琥珀探しだ。


「三人で階段を上れるといいな」


 ふとアオイが口にする。


「ふたりが一緒だと嬉しい」


「火のアオイと、木のジュジュ、それに風のわたし。魔女が来ても、なんとかなる気がしてきた」


「全然足りないよ。わたしの魔力なんて、まだほんの少ししかないんだから」


 ノリカは、まだ魔女の恐ろしさを知らない。


 アオイが念を押す。


「絶対に名を口にしてはだめだよ」


「飛べなくなったら困る!」


 ノリカは明るく、空気をやわらげる。魔女のことを考えると心が沈むのに、彼女がいると不思議と足も軽くなる。


 ジュジュがブラックを覗き込んだ。


「えっと……ブラック様、って呼んだほうがいいですか?」


 ブラックは首を横に振った。


「また大きくなった気がするけど……もしかして羽が生えて、火竜に変わるの?」


 きゅいんと鳴くだけ。


「魔力不足で痩せただけで、元に戻ったんじゃないかな」


 火竜王の尾にしては細いとノリカが言う。


 ブラックが大きく縦に頷いた。


「じゃあ、たくさん食べなきゃね」


 ジュジュが置いた実を、ブラックは食べずに本に乗せた。


 実は、すうっと吸い込まれるように消えた。


 本は淡く光り、人影が浮かび上がる。


「……アオイ……上って……おいで……」


 火竜王だ。姿はすぐに消えた。


 見えない父に向かって小さく呟く。


「必ず行くから、待ってて」


 ブラックが、こくりと頷いた。


 それから数日、三人は本に魔力を注ぎ続けた。


 そろそろかな、とジュジュが願う。


 ――視界が揺れた。


 気づけば、ジュジュだけが大樹の階段に立っていた。


 階段は静かだった。けれど、不思議と寂しくはなかった。


 深く息を吸い込み、階段中に響くほどの声で、叫ぶ。


「お父さん! お母さん! 樹樹(ジュジュ)だよ! ここにいるよ! 生んでくれてありがとう! 大好きだよ!」


 声が震える。


 応えるように、大樹が枝を大きく揺らした。葉擦れの音が満ち、一斉に花開く。


 ――届いた。


 胸の奥に、あたたかいものが広がった。


 ジュジュは蔦にそっと指を絡めた。


「森の家に戻っても、毎日会いに来るね。約束」


 それから扉の前に立ち、本を抱きしめる。


「青生! 緑夏!」


 扉が開き、暖かな風とともにふたりが現れた。



「この先に……」


 アオイは階段を見上げる。


 その瞳の奥には、強い光があった。


 ノリカは外の様子が気になるらしい。


「見てくる!」と言って、隙間から飛び去った。


 アオイは蔦に実った赤い実をもぎ、本の上に置いた。


 次々に実は吸い込まれていく。


 繰り返すうちに――取り込まなくなった。


「……どうしたんだろう」


「いっぺんにあげすぎだよ」


 アオイは小さく笑った。


「父さんも、せっかちだったのかな」


「きっとね」


「そっか。じゃあ、また後で」


 残った実を、アオイが口に運ぶ。


「……ジュジュのくれる実のほうが甘い気がする」


「え、そうなの?」


「同じ実なのに、ジュジュのは体の中が温まるんだ」


 試しに、ジュジュは小さく口を開けた。


 アオイが実をそっと押し入れる。


「何してるのよ」


 戻ってきたノリカに見られ、ジュジュは顔を赤くした。


「食べ比べ!」


 味の違いはわからなかった。


 ノリカは森の様子を楽しそうに語る。


「森の家も見てきたよ」


「お父さんとお母さんは?」


「元気だった。お母さん、庭の木に話しかけてたよ。 『ジュジュは魔女見習いになれたのね』って」


 少しだけ、ノリカの声がやわらいだ。


「そっか……」


「上ろう」


「うん!」


 三人は互いの目を見た。


 呼吸がそろう。


 そして、同時に足を踏み出す。


 三人の足音が、重なった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ