第5話 出ちゃった
逃げるスライ兵を追いかけアンソニーは走った。
「おいお前等! 助けてくれ!」
逃げるスライ兵は本隊と合流する途中で仲間を見つけ叫んだ。
「なんだあれは!?」
「化け物か!」
数にして10名程度、だが彼等はアンソニーの姿と慌てふためき逃げてくる仲間の姿を見て尋常ではないと思い焦り始めた。
「ヴェエエエエエエエエエエエエエエエエエアアアアアアアアアアアアアッ!」
いつまでたっても追いつけないどころか敵の仲間に出会ってしまったアンソニー。怒り狂った彼は一際大きな咆哮と共に手に持った棍棒の片方を逃げるスライ兵の頭に投げつけた。
「がっ……」
回転しながら飛んで行った棍棒は逃げるスライ兵の後頭部に当たった。
「かはっ……」
倒れたスライ兵はそのまま後ろから走ってきたアンソニーに首を踏まれて息絶えた。
筋骨隆々のその肉体は凄まじい重量を誇る。ただ踏みつけられただけでも無事では済まない。もうアンソニーの目標は新たに目の前に現れたスライ兵達に向いていたのだ。
「お前等行くぞ! 何が何だかわからんが敵なのは間違いない! 誇りあるスライ兵の意地を……おいまて逃げるな!」
「冗談じゃねぇあんなの相手にできるか!」
「お、俺は戦うぞ!」
様々な反応を見せるスライ兵達に対し、アンソニーは一切躊躇することなく突っ込んでいった。
「ガァアアアアッ!!」
突き出された槍がアンソニーの脇腹を掠める。だがアンソニーは怯まない。返す棍棒の一撃で倒せばいいだけだ。
「グガァッ!」
3人倒したあたりで棍棒は持ち手から先がへし折れた。
──いい加減鉄の棍棒が欲しいなぁもう。
この戦争が始まってからアンソニーの武器は何度となくへし折れている。急造で薪を加工して作ったような物ばかりだから仕方がないが。
「拳で槍に向かってくる気か! この蛮族めが!」
そう言ったスライ兵の槍はかすりもしなかった。
「何なんだよこのクソみてぇな野郎は! ……野郎だよな?」
「んなもんどっちだって構やしねぇ! とっとと殺せ! 突け!」
怒り狂ったスライ兵達は無茶苦茶に槍を突きまくるが当たってもさして刺さることはなかった。
皮の鎧に加え、アンソニーの筋肉の鎧が内臓や重要な血管への攻撃を止めている。
「ギャアア──」
そうこうしているうちにスライ兵は逃げた者以外は全員撲殺した。
あとは逃げた者を追いかけるだけだ。
「ヴェアアア!!」
全速力で走るアンソニー、薄暗い森をひた走り、そしてやがて開けた場所に出る。最初は森の中にたまにある開けた場所かと思った。
だがそこはアダム村と呼ばれている現在敵が占領している場所だった。当初の予定、敵を引き付けるのを失敗した瞬間だった。
──まずい、出ちゃった。
アンソニーが見たのは村を取り囲む壁と堀、そしてこちらに向かって叫び声を上げ突撃してくるスライ兵達だった。
「ああもうしくじったなぁ。後ろにそのまま任せるわけにもいかないし。なるべく削ろう……」
アンソニーは拳を固めると向かってくるスライ兵に向かって突貫していった。




