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第13話 ジジイのしょんべん

「ベネディクト卿、頼む……どうにかしてくれ」


 ダンカンは荷を引きながら隣を歩くベネディクトに小さくそう言った。助けて欲しかったのだ。


 奇襲も失敗し、最早希望は他と比べて話の分かるベネディクトのみだ。


 しかし。


「俺はこの国の生まれじゃない。育ちもスライで、考え方もどちらかといえばそちら側だ。ここの国の連中を頭がおかしいとさえ思う」


「だったら……」


「だがそれでも俺はこの国の人間だ。この国の人間の血が流れている。俺が守るべきはこの国の人間だ。それに、なにもしていないにも関わらず勝手にこちらを攻撃した挙げ句その物言いには我慢ならん。口を閉ざせ」


「ああ……」


 ダンカンの最後の望みはあっけなく絶たれた。


「ベネディクト。何を話してるんだい?」


 前方を警戒していたアンソニーが話しかけてきた。


「大人な話だ。さて、少し話過ぎたな。喉が渇いた」


「でしたらこれをどうぞ」


「ああ、ありがとおおおおおおおえええああああああああ!?」


 よこから差し出された革袋の水筒に口をつけるや否や、ベネディクトは口から勢いよく、飲もうとしたものを吐き出した。


「う、うおえええええええええ! なんだこれは!? くっさおええええええええ!!」


「どうしたんだベネディクト。そんなに吐いて」


「う、うぉっえええ。水が腐っててももう少しマシな味がするもんだぞ!? 一体何を入れた!? 毒か!?」


 ベネディクトは水筒を差し出してきた老兵士に聞いた。ベネディクトは眉間に皺を寄せ、下手な返答をすれば叩き切るぞと言わんばかりの剣幕であった。


「何って……儂の朝採れしょんべんですぞ」


「殴り倒すぞ糞ジジイ!!」


 なんでもない事のように老兵士は答え、ベネディクトは珍しく本気でキレた。


「どっちかというとしょんべんジジイだと思うけど……ご老人。なぜしょんべんを水筒にいれてるんだい?」


 怒り狂うベネディクトと老兵士との間に入りながら、アンソニーは尋ねた。


「儂の村に伝わる水がない時の対処法ですな。儂の村は近場に水場がありません。汲みに行くにもかなり時間がかかる。故にこうして水筒に貯めておくのです。勿論一時しのぎですが」


「へぇ、そんな文化もあるのか」


「これが文化であってたまるか! 井戸掘りの人足を戦争が終わったら派遣してやるからもうこれはやめろ!」


「おお! それは助かりますな。女達も喜ぶでしょう」


 きゃっきゃと喜ぶ老兵士を見て笑顔になるアンソニー。


「まぁベネディクトも落ち着いて。別にこのご老人だって悪気があってやったわけじゃないだろう?」


「あってたまるか!」

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