13話 王様の悩み
俺が家臣達と話してから三日がたった。
あれから文官達の俺に対する態度が変化し始めた。
御前会議でも俺を立ててくれる様になったし、細かい説明もしてくれる様にもなった。
しかし、辛かった御前会議が少し楽になったからといって、俺の国王としての生活は決して楽になった訳ではなかった。逆に忙しくなったくらいだ。
その原因は三日前の俺の発言にあった。
文官達に税金の事や特産品の事は任せろと言ったものの、その作業がとても難航しているのだ。
まず特産品は、この国で何を作ることが出来て、ポートワール王国が何を欲しいのかわからないので、今の段階では手の打ちようがない。
そして税金の問題は、俺が思っていた程単純な物ではなかった。原因は複雑な税金のシステムにあった。
オースティン王国には『学校』という物が存在しない。そして覚えていて欲しい事がある、それは『俺は学校を作りたい、と思っている』という事だ。
ここではあまり関係のない話だが、この国では役人や軍人の子供など一部の国民しか文字を使う事ができない。
ちなみに俺はマトレイヤ大陸の共通語である『アザンガルド語』を話す事も書く事も出来る。俺としては、日本語を話したり書いたりしているつもりなんだが、たぶんこの世界に来る事で付いた能力なのだろう。
(いきなり異世界に飛ばされたのだから、これくらいの能力は付いててもいいよな。)
話しを戻すが、学校がないので農家の子供達は昼間は親の手伝いをする。
ここでオースティン王国の税金の納め方を思い出してほしい。『収入の85%を税金とする』である。これは夫婦の場合は一人分を徴収するのだが、子供は一人一人個別に徴収されるのである。
例えば、ある農地で作物が最大150取れるとしよう。ところが、夫婦二人では100の作物しか取れない、すると税として85が持っていかれ、農家は15で生活していかないといけない。しかし、子供が残り50を育てる事が出来たとすると、税として約42が持っていかれるが、残り8を生活に使える事が出来るのだ。
もうお分かりだろうか?学校を作るという事は財源を減らすという事に直結するという事なのだ。
税率を50%に下げてしまえば、生活は随分と楽になり、親は子供を学校に行かせるだろう。税率を下げる事で、ただでさえ苦しくなる財政がさらに圧迫されかねないのである。
「あー、何も思い付かねー。」
この三日間ずっと、これについて考えていたのだが、全く良い案が思い付かないのである。
(あぁ、ロイスに任せとけって言ったの、いまさら後悔し始めたよ。)
俺は椅子の背もたれにもたれると、顔を天井に向けて息を吸い込んだ。
「もう…いやーー!!」
俺の大声に何かあったのかと、キース、ダイナス、そしてティナが慌てて俺の部屋に飛び込んできて、ティナが俺の事を大声で叱り付けたのは、この数分後の事である。
今日で『異世界の最弱王国』を投稿して一ヶ月がたちました。こんなにも多くの方に私の作品を見ていただいている事にうれしさと共に驚きを感じています。更新が不定期で物語の中の時間も進むのが遅いと思いますが、皆さんに楽しんでいただける作品になるように精一杯頑張るので、今後ともよろしくお願いします。
また、感想・アドバイスをどんな事でも良いのでお願いします。
作者のパン屋さんでした。