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異世界BLは私がまもる  作者: あんぷ
3/3

あ行姉妹 怠惰なウミメと真面目なエルメル

心羽の前に現れた女神様。

物語は牛歩ながら一歩また一歩と進んでいる。

、、、はずだ。

心羽が次に目を覚ました時、自室と同じような二次元キャラクターグッズで囲まれた空間にいた。

見る限りには、窓も入り口となる扉もない。そのくせ、ソファーとサイドテーブルはあるのでくつろいでいればいいのだろうか。

それより、アクリルスタンド、大小様々なフィギュア、棚に並べられた漫画と薄い本の数々と壁や天井に隙間なく貼られたポスターが気になる。まさしくオタク部屋という感じがする。この空間の主は、間違いなく同類だ。

「私と趣味似てるけど、ほとんど知らないキャラばっかり。。。」

それなりにアニメや漫画をジャンル問わず見てきた自信があるが、馴染みのないキャラが多い。

「わぁぁ、『推し様に殺されたい!』の三日月くん!こっちには、『神ラブ』のタケミナ!やっぱり、趣味は合いそうだよね。」

時たま見つける推しキャラに興奮が抑えられない。

興奮をそのままに、できる限り汚さないよう配慮して物色を進める。(一応良識のあるオタクとして人様のものだから触れないよう自制したい)

「やっぱり、ほとんど知らないキャラだ。それなりに履修してるんだけどな・・・待って、待って、待って、この方マジで神ビジュしてるんですけど。そんでここの、カップリングは疑問だわ。原作あるなら読みてぇな、おい。私は、リバ全然気にしないからこそ、話し合いたい!!けど、その前に馳走になった!!眼福でした!!」

古のオタクジョブ特有スキル『言いたいことがまとまらずに、全部言うから訳分からん』を発動せる心羽の興奮する声が響く。

『じゃあ、まず原作読んでみて〜。カップリングの話はそれから〜。あと、鼻血出てるよ〜。』

後方から雨芽に似た声が聞こえた。

振り返ると自分よりも少し年上くらいの素材は一級品の残念な美女が、格好をつけた姿勢で薄い本を読んでいる。

「三日目かな・・・」

「せいか〜い。今日で三日目ぇ♡。」

漫画を読みながら、残念美人が答える。

当てずっぽうでお風呂に入っていない日数を言ってみたら当たってしまった。考えようによっては多少不衛生でも、ここまで美人なのだから完全体なら・・・とも考えたが今は、どうでもいい。

『マジかよ。」

口にしないつもりだった心の声が、口から漏れてしまった。一呼吸おいてから問いかける。

「えっと、それでどちら様でしょうか?まさか、異世界に連れてく女神様かなぁ言うてみたり・・・てか、このやり取り二回目じゃない?」

冗談まじりに尋ねた心羽の投げかけを残念美人は、無視して漫画を読み続ける。

それからしばらくして、漫画を読み終えた残念美人は、漫画を閉じ、ソファーからのそっと立ち上がり、幾つかの柔軟体操を始めた。数分間のストレッチを終えると、左を腰に据え、若干前屈み気味な姿勢でピンと伸ばした人差し指を心羽に向けて答えた。

「察しがいいね、さっすがみうたん♡。私こそがみうたん♡♡を異世界に召喚する女神様こと、ウミメちゃんで〜す♡あれ、てか読んでないじゃん。話はそれから、それから〜。」

*********************************************

目の前の残念不潔美人ウミメに促されるまま、漫画を読み耽った。

何時間経ったのかも分からないが、残念不潔美人ウミメに勧められた漫画を全巻読み終えた頃、ようやく状況が展開を始める。

それはさておき、作品全体の感想としては『最高』の一言に尽きるものであった。美少年達の熱い友情と不純を感じさせない愛。実に美形な作品であった。しかし、カップリングには異論を唱えたい思いに変化はない。

そのことを伝えようと残念ウミメの方を見ると今度は美少女が一人増えていた。

「ウミメ姉、毎回時間守らないのやめてくれる?」

美少女は、ウミメの頭を鷲掴みにしながら可愛らしい容姿に見合わない声を発していた。

例えるなら、魔法少女が極道のを行く強面の声を出すほどのギャップがある。心なしか、鷲掴みにしているウミメ頭蓋骨からギシギシと不穏な音が聞こえてくるような気がする。

「い"だい、い”だい、い”だい。ごめんて、エル。もう、約束の時間破ったりしないからさ。」

エルと呼ばれる少女は、涙目になりながら悶絶するウミメの頭から手を離した。

「はぁぁ、やっぱりエルのアイアンクローは効くよ。もう、約束の時間忘れないよ、、、へ?」

ウミメが安心したのも束の間、今度は「ボストンクラブ」所謂逆エビ固めがキメられた。

プロレス技をかけながら苦言を呈する様子を心羽は、ただ見ていることしかできない。

「ウミメ姉。その言葉、今回でちょうど一万回目になるんだけど?」

ミシミシミシと聞こえてはいけない体の悲鳴が聞こえるきがする。自分がされている訳ではないが、みているだけで身体中が痛くなってくる。

「およよよよぉぉ〜。い”だいよ。でも、エルがわざわざ回数把握してくれてるのにお姉ちゃん愛を感じちゃうよ〜。」

ウミメが腑抜けた声を発してダウンすると、少女はトドメにジャイアントスイングを繰り出しウミメをソファーに投げ飛ばした。ソファーと激しくぶつかり、近くに積まれていた漫画の山々がウミメに覆い被さった。

ウミメをノックアウトすると、少女は心羽の方に近づいてくる。

咄嗟に幼い頃から読んでいる少年漫画で学んだ戦闘態勢をとろうとしたが、それよりも先に目の前の少女の大きなため息が聞こえた。

「ねぇ、あなたが心羽さんで合ってるよね?そこのだらしなくふん伸びてるダメ女神からは、どこまで話聞いてるの?」

先ほどまで聞いていたドスの利いた声とは一変して、アイドル声優のような可愛らしい声で少女が話しかけてきた。

目の前のドタバタ劇にも文字通り開いた口が塞がらず、少女の問いかけにコクリと頷くだけの返事を返した。

「えっと、漫画の下敷きになってる女神様に異世界に召喚するよって話だけ、、、後の話は、漫画談義の後でって。」

二人の目線が漫画に埋もれるウミメに集まる。2秒か3秒ほどした後、少女が話しを始めた。

「はぁ、ウチの姉がすみません。姉に代わって謝罪します。ああ、申し遅れましたが、私はエルメルと申します。以後よろしくお願いします。」

「いやいや、私も新しい推しカプ見つかって興奮していたので満更でもなかったというか、、、」

「なるほど、あなたもウミメ姉さんと同じ匂いがしますね。」

心羽が不思議そうに自分の体臭を確認する。

「すにません。大衆の話ではなく、同族といった意味です。」

エルメルが呆れた様子を隠せずにいる。

「まぁ、そんな話はいいです。本題に入らせていただきますが、よろしいですか?」

聞かねければ、何も始まらない。それに、迷う理由も今は特にない。

「お願いします。」

間髪入れない心羽の返答に、くすりと微笑を浮かべながらエルメルが話始めた。。。

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