第42話 力
シャープ・エックスに変身したジョーは、剣を構えて静止する。
人柱は一瞬戸惑ったような様子を見せるが、すぐに戦闘体勢に入った。
人柱は拳を作って体の後ろに引くと、そのまま前に拳を繰り出す。すると、拳から質量を持った幻影が勢いよく飛び出してきた。
幻影はまっすぐジョーの方へと飛んでいく。
「せいっ！」
ジョーは幻影を、剣を使って弾き返した。弾き返された幻影は人柱の近くへと着弾し、大爆発を起こす。
それを皮切りに、ジョーは人柱との間合いを詰める。
まずは突撃による突きだ。これによって人柱の1体を間合いから遠ざける。
次に自分の体を回転させて、残り2体に攻撃をする。これで2体の人柱に隙が出来た。
「はっ！」
その隙を逃さず、ジョーは最初に攻撃した人柱に向かって斬りかかる。人柱はゴツゴツとした腕を使って、ジョーの攻撃を防ぐ。しかし、ジョーは連続して斬りかかっている上に、一振りごとに剣を振るう角度を変化させている。これにより、腕の隙間を縫って人柱に攻撃を与えるのだ。
何度か斬りかかったことで、人柱は胴体に大きなダメージを食らう。それにより、ジョーから距離を置くために後ろへと下がる。
それをジョーは見逃さなかった。
「そいっ！」
ジョーは人柱の足に狙いを定めて斬りつける。叩きつけるように振るった剣は、人柱の足に命中し、簡単にバランスを崩させた。
地面に転がった人柱に飛び掛かるジョー。そのまま剣を逆手に持って人柱に突き刺した。
光の剣が人柱に押し当てられると、人柱の装甲が激しく火花を散らす。
ものの数秒で人柱に風穴が開き、地面に剣が突き刺さる。その手応えを感じ取ったジョーは、横方向に向かって引き裂くように斬った。
それにより、人柱の胸の中心から脇腹にかけて切れ目が出来る。そのまま人柱の装甲はドロドロとした液体状に溶けて地面へと流れる。
中からは中年男性が出てきた。装甲と同じように胸から脇腹にかけて裂け目が出来ている。
そして腰の横には、おそらく何らかの変身アイテムのようなものがあった。
「こいつを破壊すればいいんだな……？」
そういってジョーはアイテムに手を伸ばす。しかし、それよりも先に別の手が伸びてきて、アイテムを拾う。
そこにいたのは、フォージであった。
「フォージ……！」
「悪いが、このアイテムは回収させてもらう。まだまだ必要だからな」
フォージの後ろには、ジーとオーもいた。
「今日の所は引き上げよう。だが、いつまでも勝ち続けられると思うなよ」
そういって3人と2体の人柱、そして信者たちが引き上げる。
「……ちっ」
滅多にないチャンスを逃したことを察したジョーは、自分に対して舌打ちしながら変身を解除した。
そこに、片足を引きずってイツキがやってくる。
「ジョーさん」
「おう、イツキ。大丈夫……そうではないな」
「でも、ジョーさんの助けになるなら、このくらいの痛みなんてへっちゃらです」
「全く……。んじゃ、戻るか。イツキは安静にしなくちゃならないからな」
「はい」
そういってインスタンスへと戻っていった。
数時間ほど後、四天王がいる大広間にジーオーとフォージがいた。
四天王は怒り狂っているのを通り越して、とにかく呆れていた。
『シャープも進化してしまったか……』
『予想外の事態だ。このままでは、我々の戦力が削られる』
『こうなってしまったら、不意打ちでも狙うか？』
『今までも、どちらかと言えば不意打ちをしていただろう』
『ならば、スパイを使って暗殺するのはどうだろう？』
『悪くはないな……』
四天王の意見がまとまった。
『フォージよ、お前に命令する』
「はっ」
『レジスタンスの格闘者3人を暗殺せよ。「プロシージャ」を使ってもいい。必ず抹消せよ』
「御意」
そういってフォージはその場を去る。
「そ、それで……」
「私たちは何をすれば……」
ジーとオーが申し訳なさそうに聞く。
『フォージの暗殺が失敗した時の後始末でもしていろ』
「「ぎょ、御意」」
ジーとオーも大広間を去った。
『……我々も本格的に準備をするべきだろう』
『そうだな。念には念を入れておくべきだ』
四天王の理解は一致していた。全てはレジスタンスに対抗するために。
