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天穿つヘリクゼンR  作者: 紫 和春


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第20話 シャープ

 ジョーが適合者と分かってからは、ミネ博士以下技術員の行動は早かった。

 すぐに外に出て、一通りの実験設備を準備してしまったのである。

「俺、これから格闘者になるのか……?」

「まぁ、別に肉体改造されるわけではないので問題はないと思いますが……」

「なんか、漠然とした恐怖があるなぁ……」

 そんなことを言いながら、シャープバックルの使い方が書かれた紙を読んでいるジョー。 そこにミネ博士がやってくる。

「それじゃあ、ジョーは変身の準備して。イツキは私と一緒に観察してちょうだい」

「はい」

「……よし、腹くくるしかねぇ!」

 そういってジョーは準備されたシャープバックルを受け取り、低めの台の上に乗る。

 ミネ博士とイツキは、研究員や技術班のいるテントに入った。

「各種モニター監視、問題なし」

「遠隔観測装置、準備よし」

「救護班の準備も出来ています」

「シャープバックルの最終調整は万全です。いつでもいけます」

「了解。イツキ、万が一ジョーが暴走した時のための対応よろしく」

「え?」

「それでは実験を開始します。ジョー、変身して」

 テントの周り、インスタンスの窓や屋上からは、レジスタンスの戦闘員や避難民がジョーの様子を伺う。

 ジョーはバックルを腰に当てる。ベルトが伸びて腰に装着された。

 右手でアイテムを持ち、それを顔の左側に持ってくる。そのままアイテム上部のボタンを押した。

『シャープ!』

 それをバックルの右側のスロットに装填し、回して固定する。

『セッティング!』

 アイテムから右手を離し、ジョーは右腕全体を回し、左側に持ってきてポーズを取る。

 右腕を体の左から右に持ってくると、ジョーは叫ぶ。

「変身!」

 そしてグリップを回して抜刀する。

 するとバックルから流体状の金属が溢れ、ジョーの全身を覆いつくした。

『ソードマン シャープ!』

 変身は成功した。その様子を技術班はモニターから、戦闘員や避難民は目視で確認する。

「各種パラメータ、許容範囲内です」

「現実改変度、ごくわずかと推定」

「暴走の様子もない……。大丈夫そうね」

 一応腰にバックルを装着していたイツキは、ひとまず安堵した。

「おぉ、なんだか力が湧いてくる感じがするぞ……」

 自分の体をじっくりと見るジョー。装甲をまとっている分、重量は重くなっているはずだが、それを感じることのない身の軽さは驚きもあるだろう。

「戦力の増強に成功したわね。これでイツキの負担を軽減することが出来るはずだわ」

 ミネ博士がジョーの元に歩み寄っていく。そこにはイツキもいた。

 ジョーは変身を解除して、ミネ博士と向き合う。

「こいつはいいですな。昔の自分を思い出しますよ」

「それなら結構。あなた、戦闘は慣れている?」

「えぇ。銃はもちろん、刀剣や格闘戦もいけます」

「それならいいわ。今日からイツキと交代で当直室で待機してもらいます。6時間ごとに交代って感じかしら」

「了解です。良かったなイツキ。休憩出来るぞ」

「そうっすね……」

 イツキは思わず苦笑いする。

 それから数日、イツキとジョーは入れ違いで当直室に駐在することになった。イツキにしてみれば、それまでずっと待機状態だった上に、敵襲があれば真っ先に戦闘に身を投じなければならなかった。心身共にすり減らす生活をしていたのは確かだ。

 それが軽減されたのは、とてもありがたいことである。久々にぐっすりと眠れたのも確かである。

 そしてイツキが当直に入る時だった。

「敵襲ーっ!」

 それを聞いたイツキとジョーは、言葉を交わす事もなく、全力で走る。

 方角的には東の方角だろうか。そちらから、大量の「オール・ワン」の戦闘員がやってくる。

「こりゃまた大量の敵さんが出てきたな」

「この程度なら問題はないですけどね」

 しかし今回は少し様子が違っていた。

 敵の戦闘員の群れが、ぱっかりと左右に分かれたのである。

 そこに出来た道から、二人の人間の影が現れたのだ。

「へぇ、君が例のアルファですか」

「その隣は……。なるほど、シャープに適合した人間らしい」

 なんだか意味ありげにイツキたちのことを見る二人。

「あなたたちは一体何者なんです?」

 イツキは単刀直入に聞く。

「私たちは『オール・ワン』の精鋭にして唯一の格闘者部隊のメンバー。つまり、あなたたちと同じ格闘者ってこと」

「今回は様子見をしに来たって感じですけどね」

「ちなみに私がルビー、こっちがスイフト」

 ルビーが丁寧に自己紹介してくれる。

「目的がなんであれ、敵なら倒すまで!」

 そういってジョーがシャープバックルを装着する。イツキも遅れてバックルを装着した。

 そして、それぞれのアイテムを起動させ、バックルに装填する。

「変身!」

『ファイター ヘリクゼン・アルファ! ファイターフォーム・パワードミサイル!』

『ソードマン シャープ!』

 そして二人とも変身した。

「では、その実力を見せてもらいましょう」

 ルビーは腕を前に振る。すると、敵の戦闘員が一斉に襲い掛かってきた。

 イツキは空中に浮かび、ミサイルを乱発する。一方でジョーは、接近してきた敵の戦闘員を片っ端から斬り捨てていく。

「はっ! ほっ! でぁ!」

 軽快なテンポで戦闘員を斬っていく。

 ジョーが近距離戦闘で戦うなら、イツキは遠距離攻撃で戦う。上空から雨のように降り注ぐミサイルと弾丸によって、敵の戦闘員は蹂躙されていく。

 そしてものの数分で戦闘員が全滅した。

「ざっとこんなもんよ」

「さすがっすね、ジョーさん」

 イツキも地上に降り、ルビーとスイフトに対峙する。

「んー……。まぁ、今日はここまでにしましょ。実力も測れたことだし」

「そうですね。敵が言うのもなんですが、お互い余計な血を流したくはないでしょう」

 そういってルビーとスイフトは踵を返す。そしてそのまま煙のように消えてしまった。

「なんだったんだ……?」

「さぁ……」

 そんなイツキたちを遠くから見つめる一人の男。カイドウである。

「……俺は、どうすればいいんだ……」

 カイドウは「オール・ワン」の諜報部員に監視されていることを知っている。今回ルビーとスイフトが自分のことを追いかけているのも知っているのだ。

「あいつらが前線に出てくれば、間違いなくレジスタンスは負ける。そうすれば、俺への依頼は消える。だがそうなれば……」

 カイドウは重い足取りで、その場を後にした。

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