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6、転機

奥様と乗った馬車で着いたのは何と王宮だった。ハルはこれにはちょっと驚いた。(・・・・だから今日はドレスに拘ったのね)着くと玄関先で迎えられ、真っ先に瀟洒な庭園に案内された。ここは王族だけが使用できると言う庭園らしく本日は王弟の若奥様のご招待だと後で聞いた。


趣向を凝らした色とりどりの春の花が咲き乱れその中での優雅なお茶会に目がチカチカしそう。とハルは呑気にそんな事を考えていた。


お茶会の規模は約20名ほど。やはり公爵家クラスになるとハルの様なメイドを連れている方が何名かいる。


ハルは他所のお家のメイド達と傍に控えていた。お茶を給仕され、なかなか美味しいお茶菓子も頂いていた。


お茶会が佳境に入った所で「ハルお願いね?」と奥様から指示が有り、皆様の前で待ち望んだ春を祝う曲としてビバルディの「春」を披露した。


ーーーー静まり返る夫人方。


弾き終わるやいなや拍手喝采であった。気のせいか奥様が得意そうだ。あぁ良かった。と思ったら「素晴らしいわ。せっかくですもの他にも何か弾いてくださらない?」と何名かリクエストを受けた。


リクエストでどうせ弾くなら自分がかつて好きだった曲を。と考えて「情熱大陸」のテーマソングを弾いておいた。

これは若いご婦人から凄く受けた。気がつくと周りにたくさんの人々が詰めよりハルを見つめていた。


この日は大盛況でハルは奥様を通じて他所のお家からたくさん演奏会のお誘いを受けた。


この日以降、ハルの公爵家の仕事から手を使う仕事が無くなった。その代わりバイオリンを弾く機会が増えた。たまに公爵家でもご夫婦の前で弾く事もある。


この時ばかりはバイオリンを習わせてくれた波瑠おばあちゃんに感謝した。


あと、この機会にランピエール公爵夫婦だけには自分は隣国ルグラン出身の貴族出の人間である事を打ち明けて置いた。やはり普通の平民でない事を薄々は感じていたらしい。


ある日の夕食後、家でハリーにランピエール夫妻にルグラン出身の貴族であると打ち明けた事を言ったら、食器を洗いながら、


「アンタそれでなくても目立つんだから気をつけなきゃダメよぉ。面倒臭い事にならなきゃ良いけど」と言われた。


ある意味ではハリー貴方も目立っているのでは?と口から出かかったがそれは飲み込んだ。


ハルは公爵家のメイドをしながらたまにバイオリンを弾く仕事もする。そう言った生活を続けていたが、ある日公爵夫妻から驚く情報を聞かされた。


それは庭の掃き掃除をしていた時だった。「ハル、ちょっと良いかしら?」と奥様が呼びに来られた。ハルは一緒に掃除をしていたメイドにひと言断ってから奥様と一緒に公爵様の所へ向かった。


公爵様の執務室へ入るなり奥様と共にソファへ腰掛けた。


公爵様も向かいへ腰掛けると突然「ハル、知ってたか?先日から隣国ルグラン王国が臨時王政になってるぞ?」と話された。


えっ?臨時王政ってなんの事?


「その様子じゃ知らなかった様だな。私もあまりハッキリとは分からないが、どうもクーデターが起こった様だ」とハルの顔を見て話した。


「どっ、どうしてそんな事が。」


「騎士団と宰相が国民の不満が爆発した事で裏で手を組んだらしい。ルグランの元国王は相当脇が甘かったみたいだな。」


「ーーールグランのアルベルト宰相は大変有能な方でした。」とハルがポツリと話すと、


「そうみたいだな。相当な根回しだ。全然話が漏れなかった所を思うとかなりのやり手だね」と感心してました。


「ーーーどうなるのでしょうか?」と呟くと

「恐らく裁判がすぐ行なわれるだろう。恐らく元国王一家は死刑は免れないだろうね。第1王子はまだ新婚らしいが仕方ないね。これも王族の仕事だから」とあっさり言い切った。


当たり前かも知れないけど、レオンハルト様あの男爵令嬢と結婚していたのね。

やはり人の話が聞けないあの一族では政治は無理だったのはわかるけど、ただお妃さまの事は助けられないか?と考えてしまった。


ーーーーリヒト様の方は今大変でしょうね。


「今は宰相がトップに上がり臨時王政を引いているがどうなる事やら。落ち着いたらこの国にも直ぐに挨拶に来るだろうね」と旦那様が締めくくった。


その日は何となく仕事が手につかず奥様やメイドの仲間から早退を勧められた。皆さんの好意に甘えこの日は早退した。


夜、早退したのでハルが夕食を準備しているとハリーが帰ってきた。そして真剣な顔で「・・・・ハル、これから話があるんだけど」と声をかけられた。「偶然ね。実は私からも話があるの」と言い返した。


夕食を済ませ、お互いにお茶を手にしながら話を始めた。「ハリーからどうぞ」と先行を譲ると「ありがとう。では私から」と話し始めた。


「私、実は彼から同棲を申し込まれたの。」と嬉しそうに話し出した。


「なのでここを引き払おうと思っているの。彼が自分の所へおいでって。」と俯いているが嬉しそうだ。


「まあ良かったじゃない。ーーーー私たち本当に結婚してなくて良かったね。」と言ってやった。


「そうなのよ。だからこの週末にでもここを引き払うね。家具は全て置いて行くから好きなように使ったらいいわよ。彼、体一つでおいでって言ってくれたの」と頬を赤らめて嬉しそうだ。ふーん、まあよかったじゃん。幸せそうで。


「じゃあ私の方も話すね。ハリー知ってたかもしれないけど、ルグラン王国でクーデターが起こって臨時の王政になってるって知ってた?」


「うん、少しだけなら。私の仕事は用心棒だからね。隣国のルグラン王国からの移民が増えるんじゃないかって店の皆で言ってたの」


「私の実家はともかくハリーの実家は大丈夫なの?心配じゃない?」と聞くと「まぁ、お兄様がいるし命までは取られないと思う」とあっけらかんと言っていた。


「ねえハリー。アルベルト宰相に手紙って送れると思う?」と聞いてみた。


「どうして?今更何書くの?多分エメラルドの名前だったらいけるんじゃない?あの時は皆エメラルドは無実ってわかってたし」と言っている。


次の日にハルはリヒト宛に一通の手紙をしたためた。



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