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3、断罪されて

エメラルドはハリーが持って来てくれた資料を見て愕然としていた。まさか、そんな!どこかでこの文字を見た事があるわ。と思わず久乃のカバンを手元に引き寄せ机の上に置き波留おばあちゃんの日記を取り出した。


波瑠おばあちゃんの日記に出てく文字と全く同じだった。もしこれが事実ならこの国は「ルグラン王国」になる。波瑠おばあちゃんはこの世界の人間だったの?一体私はどうなってるの?この国の建国史をめくって見ると初代女王の似顔絵が波瑠おばあちゃんの若い頃にそっくりだった。


ここは波瑠おばあちゃんが作った国だったの??一体なぜ?久乃は少し頭を冷やしたくて机の上に置いてあったコップの水を一気に飲み干すと、しばらく机の上に突っ伏した。


・・・・波瑠おばあちゃんが居なくなった後って王政は腐敗したのね。まあ、波瑠おばあちゃんが初代女王だったと決まったわけではないけど。


波瑠おばあちゃんからこの時代の王までいったい何代後なんだろうか?建国史を開いてみると初代からこの現世までは7代続いたらしい。でも3代後に血縁は切れてるのね?子供が出来なかった?騎士団か何かのクーデターがあった?


しばらく考えていたが夕食が届いた事もありこの日はこれで中断した。




「おい、ここから出るんだ。」とエメラルドが眠っていると衛兵に呼ばれた。窓の外を見てみると既に明るい。


「はい」とひと言返事をすると身ごしらえもそこそこに牢から出されて王宮の間へ連れられた。王宮の間にはすでに主だった貴族が集められており、衛兵に連れて来られたエメラルドを認めるとヒソヒソと話し始めた。そんな人々の間をエメラルドを連れた衛兵達は通りぬけ、すでに玉座へ付いていた王の前へ突き出された。ひざまづき衛兵に頭を押さえつけられ無理やり頭を下げさせられる。


「おい、エメラルド。牢の中で己の身がいかに傲慢であったか分かったか」と王が最初から意見など聞く気は無いとばかりに話し出した。


「私は神に誓って毒など入れておりません。・・・・ただ」


「貴様!!まだその様な事を抜かすか!まぁ良い。最後まで申してみろ。」


エメラルドは頭を伏せたまま「はい。では1つだけ。機会を与えて下さりありがとうございます。私はこの出来事が既に国民的にも周知されているのは分かっております。こうなってしまった以上は責任を取り市井へ下りたいと思います」


「自ら平民へ下がると言うのか?」


「はい。この世からこの身を秘して生きて参りたいと思います。ただ私や侯爵家の長年の王家への献身を汲み取って頂きたく存じます」


「うーむ、貴様の言う事にも一理あるな。わかった、レオンハルトそれで良いか?」国王が側にいた我が息子に確認しようとしたしたその時、


「国王様!!ここは今ひとつお考えを再考頂けませんか?」と若い男性の声で周囲に響き渡る声が聞こえた。


「誰だ!!」と王が声のする方へ顔を向けると、人混みを抜け王の面前に長身の美しい1人の男が姿を現した。夜空の様な黒髪、理知的な目元。その美丈夫ぶりに騒がしくなる周囲。


「お久しぶりです陛下。私は宰相が息子リヒト・セグメントです」とうやうやしく頭を下げた。この男は一体何を言いだすのかと周囲が静まり返っている。


「あぁ、アルベルト宰相の息子か。其方の意見など今は必要はないが、全てにおいて大変優秀な男だと聞く。今一度理由を申してみろ」


「陛下お時間頂きありがとうございます。理由と致しましては、こちらのエメラルド嬢の王妃教育の履修がほぼ8割を越えると思われるからです」


「これから新しい方に王妃教育を施すと言うのは現実的ではありません。それに公庫からも幾らかの教育費が献上されています」と静かに話した。


話の流れから自分の旗色が悪いと感じた王子はすかさず「父上!!もう2度とこの女に会う事が無ければ私はそれで結構です。その男の話など耳を貸す必要はございません」と今まで婚約者であったにも関わらず虫ケラを見る様な目線でエメラルドを睨み付けた。


「まぁ、話はわかったが決定は覆らぬ。さあエメラルドこれで幕引きだ。最後に言いたい事は無いか?」と聞かれるとエメラルドはスッとその場から立ち上がり王を見据えると


「ありがとうございます。平民に下がる以上もう2度とお会いする事は無いと思います。それでは最後に1つだけ」


これで最後ね。ここでひとこと言って置きたい。お前などこれっぽちも眼中に無かったと。エメラルドはたっぷりと時間を使い正面からレオンハルトに向き合うと


「レオンハルト様ご婚約おめでとうございます。心よりお祝い申し上げます。より一層のお2人の発展をお祈りしております」と話すと優雅に微笑み、長年体に染み付き覚えていたのであろう、美しいカーテシーを披露した。それを見ていた側近達は「ほぅ、これは・・・・」とため息を漏らしたほどだ。


「ぐっ!」と歯軋りをするレオンハルト。エメラルドはその表情を認めると王の方へ体を向けて


「陛下温情を賜りありがとうございました。では皆様末長くお達者でお過ごし下さい。私はこれにて御前を失礼いたします。」と一礼しゆっくりホールの出口へと足を向けた。興味深げな人々の視線が痛い。


通り道にリヒト殿を見かけると「ーーーーエメラルド嬢お見事でした」と話しかけられた。エメラルドは淡々と「リヒト殿お手数おかけしました。心よりお礼申し上げます」とひと言だけ挨拶をして過ぎ去った。


あぁ、良かったこれで自由だ。バンザイ。あぁ頬が緩むわ、外に向かって思いっきり走り出したいわ。笑い出すにはあともう少しの辛抱よ。



エメラルドの記憶の中であの王子の事は前から大嫌いだった。王の事は更に嫌い。傲慢な態度や物言いがいつも鼻に付いていた。心を押し殺し我慢してまで側に居たくは無いわ。そして両親はエメラルドを見放したのかとうとう最後まで一度も会いに来なかった。


ーーーーあぁ、これはエメラルドの本当の気持ちなのね?


でも私には、実家にもここにも何の記憶も無いので何の未練も無い。エメラルドは真っ直ぐ自分が居た独房に立ち寄り荷物を手に持った。エメラルドは普段なら絶対にしない急ぎ足で廊下を進み王宮の玄関を出て、とぼとぼと道を歩きながら今後の身の振り方を考えていた。と言うよりこの国が分からないのでこれからどこに行けばいいのかも分からなかったのだ。とにかくこの国を出ることだけを考えていたから。


「ーーーーおい!!おい待てよエメラルド。」と後ろから声がする。思わず振り向くとハリーが息を弾ませてそこに居た。


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