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時は満ちた色々と

クロサンドラ帝国はウスカシメリ山脈に四分の三囲まれた自然要塞のような国土を広げている。


現在の皇帝セシラウスは賢帝でも愚帝でもなく、程よい統治の争いを好まない穏やかな性格で知られていた。


セシラウスには一男一女の子供がおり、兄のスピリタスは賢く勇敢で賢帝になりうると国民に期待されている。


妹のセレーナは美しく魔力が豊富で明るく、誰にでも分け隔てなく接するので国民に好かれていた。


スピリタスは父の元で政治の手伝いをしながら統治に向けて学んでいた。


セリーナはワーラン帝国の魔術学園で魔術を学んでいる。


いずれ婚約者のワーラン帝国皇太子エドワードと結婚しワーラン帝国で暮らす事になる為、ここでお妃教育も受けていた。


北にクロサンドラ帝国。


クロサンドラ帝国の南西にイップト王国、その東隣りにセバーン公国、ワーラン帝国、チソラス王国がある。


イップト王国とセバーン公国の南にはレトント王国、その東隣りにピアース王国、ノーヴァ王国があった。


国力は二つの帝国が同じぐらい最も強く大きい。


どの国も大半の国民は善神を崇めている。


神々は信仰により力を得るが人々の崇めているのは善神だった頃のクリテリオン。


聖なる祈りは行き場をなくし空中を埋め尽くす。


かと思われたが上手く回収されていた。


パルフェタムルの眷属によって。


悪神ではないパルフェタムルの眷属には聖なる祈りは単なるエネルギーでしかない。


次代の魔神の住居を快適に動かす等に使おうと集めていた。




そして待ち望んでいた時が来る。



クロサンドラ帝国の大神殿にある、信者が入る事を許されない奥の間。


「永かったなぁ。」


パルフェタムルの眷属四体が床の結界印を囲んでいた。


フーゼルにラファニアが同意する。


「永かったわね。」


「千年だものね。」


アディラはクスリと笑う。


「千年は無駄ではなかったさ。

快適なお住まいも作れたし、いい具合に奴は混じった。」


バッカスは満足そうだ。


「さて開けますか。」


フーゼルが触れただけで結界印は霧散した。


「いつでもお迎えには行けたけど、邪気を全てあいつに浸透させるにはこれが最適だったからな。」


結界が無くなった事で地下から邪気が漏れ出す。


「これは相当だね。

主君を悪神呼ばわりしてた奴が真の悪神になったなんて。

ご愁傷様。」


「世界の負の感情が一身に集まっているわね。

これこそが主君の復讐だわ。」


「といっても現在の世界は安定してるから負の感情は少な目なんだよな。」


地下深く四体は飛び降りる。


元善神クリテリオンは邪気を纏い正気を失っていた。


ぶつぶつと何かを呟いている。


「気持ち悪いわね。

真っ黒だわ。」


「邪気が蠢いていて、ゾッとするわね。」


「封印無くなってない?」


「封印していたのがあれだから。

その中でよく結界が保ってたよ。

弱々しかったにしても。」


「結界はあれじゃない。

昔の大魔術師が張ったからだわ。」


「そいつは今は放っておくぞ。

まずは主君を我らの城へお運びする。

こんな所でお産まれになられては申し訳が立たない。」


元々大きかった珠は倍ほどになっており三体が抱え飛び去った。


その気配にクリテリオンは追いかけようとする。


「行かせないよ。」


フーゼルは立ち塞がった。


「神殺しのクリテリオン。

悪神と化した今、聖なる力を持った者に倒されるがいい。

そして本当の悪神は我らの主君ではなくお前だったと自ら知らしめろ。」


フーゼルはそう言うと飛び立ちクリテリオンの頭上から雷の矢を降らせた。


「痛い。痛い。」


そうクリテリオンは呟くがたいしたダメージもなく小さな傷はすぐに完治してしまう。


「腐っても神ってか?

足止めはできたから帰るか。」



フーゼルがいなくなるとフワフワとクリテリオンは地上に向かった。




邪気はクリテリオンが地上に近づくにつれ濃くなっていく。


そして邪気は人々の負の感情を増大し、昂りを抑えられなくし、殺戮があちらこちらで起こりだした。


邪気を感じ取り根源を辿って大教皇や教皇が結界の間へ駆けつける。


ゆっくりと邪気の塊が地下深くから上がって来ていた。


「なんて事だ。」


「悪神の封印が解けたんだ。」


「結界も破られている。」


「我らの全ての力で再び封印するのだ。」


大教皇らは呪文を唱え始める。


そこへ枢機卿や大司教らも加わり急ぎ呪文を唱えた。


その間にも邪気に侵された人間が増えていく。


魔術師イアンはその映像を師である大魔術師カラカスへ送っていた。


カラカスはセレーナの護衛と魔術の師を兼ねてワーラン帝国にいた。


「悪神の封印が解けたのか。

大教皇達がいれば再度の封印はなされるだろうが、殺戮を止めるには漏れ出した邪気をなんとかせねばならん。

わしが行くしかないな。」


カラカスはセレーナに状況を説明し側を離れる許可を求めた。


セレーナは青ざめ震えながらも気丈に振る舞う。


「どうか我が国を助けに行って下さい。」


許可を得て既に控えさせていた飛行型の使い魔に窓から乗ろうとした時、セリーナに見せていた映像が光った。


気を失い倒れるセリーナを間一髪抱き止め映像を見上げたカラカスも言葉を失う。


そこには邪気を纏った悍ましい何かが立っていた。


「なんだあれは?」


セリーナの護衛騎士バレルが叫ぶ。


「ああ。

大神殿もお城も街も何もかも無くなった。」


セリーナのメイド、メリナが腰が砕けたように座り込み呆然としている。


「師よ。

私は・・ここま・・でのよ・・うで・す。

あと・・・を・おねが・・・。」



右腕が無く左腕も半分なく頭から血を流したイアンが息を引き取った。


イアンの死と共に映像も消える。


セリーナをソファに寝かせ、カラカスは立ち上がった。


「バレルしっかりしろ。

お前の仕事は皇女をお護りする事だ。

分かるなっ。」


肩を掴まれ揺らされたバレルは、ハッとした表情からしっかりした顔に変わり頷く。


「わしはクロサンドラ帝国へ行って事態を見てくる。

戻るまで皇女はお前に任せる。

頼んだぞ。」


「はっ。

了解しました。」


カラカスは使い魔に乗りクロサンドラの帝都へ向かった。



国境付近はいつもの風景だったが帝都に近づいて行くと木々が薙ぎ倒され崩壊した家屋。


それも無くなり・・・。



「なんて事だ。

何もない。

抉り取られたかの様に。」


カラカスが見た帝都はすり鉢状に中心へ向かう程にへこんでおり、モヤモヤと邪気が漂っていた。


イアンの遺体と皇族を探索の得意な使い魔達に捜させていたが見つかっていない。


「あれが悪神か。」


クリテリオンは邪気を触手の様に使用し、残っていた遺体を引き寄せ食べていた。


「なんて事を。」


カラカスに気が付いてないのか遺体をボリボリ貪っている。


「イアンの遺体はあれに食われてしまったのか。

もっと速く着いていたなら。」


後悔しながらも生き残りを捜した。


その後悔の念を感じ取りクリテリオンは空を見上げカラカスを見つけると血が滴り落ちている口でニヤッと笑った。


その不気味さにカラカスは身震いがする。


「これは帝都にいた人間は全滅させられたな。

あれを倒すには勇者が必要だ。」


カラカスは無念だったが情報をセリーナに伝える方を優先した。


探索の使い魔も一度戻し、ワーラン帝国に帰った。





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