スタンピード
スタンピードと言われる現象は、モンスターがダンジョンから溢れ出る現象だ。原因は特定できていない。成り行きとはいえ、来てしまったからにはやってやる。ここでドロップアイテムを得れば良いのだ。交通費がういた、そう思う事にしよう。
「遠方から来た攻略者もいるだろうから説明しておくが、あのドームにダンジョンがある」
助手席の男が遠くに見えるドームを指差しながら説明する。
「そろそろ降りてもらうぞ、モンスター広範囲に散らばっているから、ドームを囲む様に君達を配置させてもらった。まだドームまで遠いが、宜しく頼む」
車が停まりドアが開く。見える範囲にモンスターはいない様だ
「言い忘れた。私は神田トクマだ、福岡ギルドの副長をしているが、元攻略者だからな、一緒に行かせてもらうぞ、武器を持っていないヤツは後ろに多少はあるから使ってくれ」
「トクマさんって、あのトクマさんですか?」
なんだ?すごい人なのか、こんなふうにいつか言われてみたいぞ。
「今からは攻略者だ、攻略者同士はトクマで良いよ。来たぞ!」
トクマが車から飛び降り、モンスターに向かって行く。マイトウルフだ、見えているウルフは一体でも、必ず周囲に複数体潜んでいる。
トクマは剣や槍を持たずに駆けていく、丸腰のままだがウルフへ突っ込んでいく姿に迷いは見えない。
正面のウルフがトクマに飛びかかる、トクマは懐から取り出した銃を構えた。
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ドームを取り囲む様にパトカーや消防車等でバリケードが作られた。自衛隊も到着し攻略者達の隙間を埋める様に配置され、包囲は完成している。
「指揮は福岡ギルドだと、ギルドなんて言っているが、元はただの緑地公園課だろ! 戦闘の指揮はこちらに寄越せと言っておけ」
「堀越大佐、自衛隊本部からの指示です」
「くそっ、なんだってんだ」
「銃火器は、あまり効きませんからね」
「酉垣、口調が乱れてるぞ、ダンジョンを前に抑えれなくなってるのか?」
「はっ、失礼しました。私にモンスター討伐の許可を頂けないでしょうか」
「それも本部指示か?」
「いえ、本官の判断です」
「・・・許可する。ただしダンジョン外の掃討のみとせよ」
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トクマは襲い掛かるウルフを次々と撃ち倒している。たしか、銃とかはあまり効かないはずだから、トクマに撃たれたモンスターが倒れるのは、トクマのスキル若しくは銃に秘密があるのだろう。
シロウはミニバンのトランクから適当な剣を取り出すと、トクマ達とは違う方向に駆け出した。トクマの戦闘をもっと見てみたいが、自分のスキルも見られるだろう。最初のセットスキルだけであれば良いが、スキルチェンジをしなければならないかもしれないので、攻略者からは極力離れて戦う事にする。
スキルスロットには『身体強化B』『鉄壁』『陽炎』『影舞』と汎用性が高いものをセットした。
戦闘要素だけで見れば、防御効果の『鉄壁』や気配遮断の『陽炎』よりも、攻撃を強化する『剣術B』や『切断』あろうが、周囲が民家や商業施設なのだ、ダンジョン以上に何処から襲われるかわからない。スキルチェンジを活かす為にも、モンスターを先に発見する事がシロウの生命線である。
いた!あれはスケルトンナイトだ、『鉄壁』と『陽炎』を『切断』と『剣術B』に変更する。
動きが速い相手ではない、敵の攻撃を余裕をもってかわし、横薙ぎに剣を振るう。
倒されたモンスターは煙となり消えるが、たまに装備していた剣とかを残していく、今回は残念ながら無し。スケルトンナイトの装備は四千円だったはずだ。
四千円が五体こちらに向かって来ている。スケルトンナイトを倒すくらいは攻略者レベルが低くても、スキルに恵まれていれば不自然ではないはずだ。
「ボーナスステージ」
シロウは敵に突撃した。
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「キャーッ」
ニーナが声を上げている、悲鳴ではなく嬌声だ。普段は良い子なのに、戦闘となると『戦闘狂』が発動し、まるで別人になってしまう。ニーナとは少し離れたところでタケルは斧と盾で身を固め着実に敵を倒しているし、エリナは戦闘からは距離を保っている。ダンジョンではないがパーティの戦いが出来ている。
相手はヘビーアント、数こそ多いが個体は弱いから、ヨウコの出番はないだろう。自分のスキルを積極的につかいたくはない、いや出来れば使用せずに終わりたい。ヨウコはメンバーに目を配りながら弓を構えた。
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