第二章 世界ランカー
世界ランカーと呼ばれるのは厳密には10人だった。パーティ単位であれば、3倍程の人数が世界トップクラスと言われるだろうが、ここでいう世界ランカーとは、パーティの中でも特に強い個人を指して言う。
現存する世界ランカーは8人だ。2人はいずれもローマのダンジョンで行方不明になっている。役職についている3名を除けば、それぞれが気ままに行動する世界ランカー達であるが、2人が行方不明になってからは、半年に一度会合を持つ様になった。
シカはこういった集まりが大嫌いだが、ローランドに借りをつくっている事もあり、今回は参加している。
「8位、やっと来たと思ったら遅刻か」
「あなたもいつまで経っても6位なのね」
シカを見るなり、男が声をかけた。これは2人の挨拶みたいなもので険悪な様子はない。着座が円形になっているように、彼等の間に上下はないのだ。
世界ランキングは、今から4年前に決められた1位から10位までの順位の更新を止めた。一説には10位までに与えられた特例の保持者を増やさない為にそうされたと言われている。
更新を止めてしまったので、彼等の順位は固定されたままだ。その順位がそのまま今の強さを現しているとは誰も思っていない。だからこその円座である。
シカが座ると、この中では1番年長であろう男が口を開いた。彼は世界ランキング一位であり世界ギルドのマスターでもある、ローランドだ。このメンバーを取り仕切る事が出来る人は、彼をおいて他にはいない。
「さて、いつもどおり近況報告でも聞こう。ワシは相変わらずだな。この半年間も前と変わらず、5時に起きて6時に飯を食い、9時から18時まで世界ギルドの仕事。印鑑をつく毎日だ。何も変わらん」
次は髪の長い女性が発言を始める。落ち着きのある眼差しからは経年を感じるが、今でも十分に美しい容貌をしている。彼女の名前はマーガレット、ランキングは3位だ。
「私も変わらない、だけどこの半年は少し楽しかったわ。後進の指導なんてものは引き受けるものじゃなかったって、前回は言ったけど、育てる楽しみが少し解った半年間だったから、このまま楽しくなると良いわね」
次に発言を始めたのは、褐色の肌をした男だ。頭は綺麗に剃り上げられており、世俗を離れた修行僧といった印象。彼はヤルカン、7位であり、ダンジョンが出来て以降の世界で急激に普及した教団の長である。
「教団は安定した。前回は心配をかける様な報告をしたが、今はコントロール下にあると言っていい」
ヤルカンの発言が終わるとローランドが再び口を開く。
「さて、宮仕え3人は終わりだ。ここから先の報告は楽しみだな」
では俺からと男が立ち上がった。筋骨逞しい男、彼はガルシュミット。先程、シカと軽口を言いあった6位だ。
「俺はこの半年間で四つ。手強い敵は特にいなかったな、最初に言ったのは、面白くない話だからだ。誰かの話で盛り上がった後で言いたくなかった」
そう言いのけると座った。
「それならば座ったまま言えばいいのに、それで言えば次は私」
いかにも魔法使いとらいった装束に身を包み、パーマのかかった赤毛を指で遊ばせながら女性が話し出す。彼女はキキ、4位だ。
「私も特にないのよね。5つ制覇したけど、エクスパンションの謎は不明」
「私もキキと近い。エクスパンション間近と思わしきダンジョンには入ったんだけどね。特に報告する様な事はなかったわ」
続いたのは、Tシャツにスエットとラフな姿の女性。イース、5位。
「話す事はない」
それだけを言ったのはキース、彼は2位。毎回コレしか言わない。最初の頃はガルシュミットやキキが他に言うことはないのかと絡んでいたが、もう誰も何も言わなくなった。
「じゃあ私ね」
そう言うとシカが発言を始める。シカはエクスパンションをした日本のダンジョンを制覇すると明言をしている。その期日まであと2ヶ月。今回の目玉は間違いなく彼女だろう。彼らの中にはエクスパンションダンジョンを制覇した者もいるし、今はエクスパンションの究明をしている形なので、エクスパンションダンジョンへの挑戦は熱い話題だ。
「私は日本の福岡にある百道ダンジョンを制覇する。次回はその報告をするわ」
シカがここに来た目的は一つ。
「そこでマーガレット。スペシャルな回復役を1人工面して欲しいの?」
「あなたに回復役は不要だと思うけど」
「私じゃないの、今回は私はクランのメンバーとアタックする。そのクランメンバーのためかな」
「クランメンバーの為にエクスパンションダンジョンに潜るなんて馬鹿なの? そんなに甘くないわよ」
「キキ、心配してくれてるの? ありがとう。でも、そんな事は考えていない。これが最善だと思ってるからそうする」
「お前のクランメンバーって前に電話してきた奴だろ。特権適用しろってな。隠し球ってことか、面白いな。マーガレットケチらずに貸してやれよ。シカがいるんだ。貸したけど弱すぎて話にならなかった、なんて事にはならない」
「それは命令?」
「何だよ、命令がいいのか? ワシは命令なんざしないぞ。もう命を背負うのはたくさんだ。これは楽しもうぜっていう誘いだ。とっておきがいるんだろ。マーガレットが育ててる奴がさ」
「一緒に行くかは彼女が決める。いいわ、シカとそのメンバーに引き合わせるわ」
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