カスミ
「嫌だ、嫌だ」
リョウさんが連れてきた女性は嫌がる様子全開だ。
「こいつはカスミだ。腕の良い回復使いだから重宝するぜ」
「カスミです。あの、私は入口で待機してますので、何かあったら来て貰えば、全力で回復させて頂きます」
「お前、戦えるだろ? まさか腕が鈍ってるのか」
「私は医療班なの!戦いたいなら別の班に入ってます!」
「なんだよ、まだモンスターが怖いとか言ってんのか?」
「うるさい!リョウには関係ない!」
「カスミ、私はエルザだ。宜しく頼む」
リョウさんとの会話にエルザさんが割って入る。エルザさんは、いつもマイペースな人だ。カスミさんはエルザさんが出した手に抗えず握手をする。
「カスミ、ありがとう。私達は回復出来る者がいないのでな、心強いぞ」
「いえ、私はそんなに大したもんじゃありませんので、、」
「いや、リョウの目に狂いはない。カスミはきっと私達を助けてくれる」
「そんな、よ、宜しくお願いします」
エルザさんの押しの強さに抗えず、カスミは承諾した。
ーーーーーー
姫路城ダンジョンは、元々は城の横に出来たのだが、月日が経つごとに大きくなり、いつの間にか城全体がダンジョンになっていた。通常は深くなるダンジョンが、姫路城の様に巨大な建造物を含んで大きくなる事は世界規模で見れば報告がある。日本には姫路城しかなく、ヨウコにとってこういったダンジョンに潜るのは初めてだ。
城の横にある洞窟にから入り、そのまま歩き続けると突き当たりには上に登る階段があった。
「ここからが城内って事か、他の奴らが先行してるから、いきなりモンスターに出くわすなんて事はないと思うが、出た先がランダムって事もあるな」
「リョウ、私が先に登ろう」
階段を前にエルザさんが先頭を入れ替わると、エルザさんは躊躇う事なく、どんどん登っていく。
「ヨウコ、出入り口がランダムなんてのがあるの?」
「結構あるって聞いてる。攻略者が正確にマッピング出来ないから、難易度が高いって言われるわ」
「シロウ、来てくれ」
エルザの声に反応してシロウも階段を駆け上っていく、次にはファフ、そして私。ファフはいつもシロウを気にかけているから反応が早い。
上に登るとたくさんのグール。一体一体は強くはないが15体はいる。
「シロウ、エルザさん、下がって」
ヨウコの声に二人が距離をとる。
「ストーム」
ヨウコの放った風魔法は、広範囲のグール達を巻き込んでいく。「スラッシュ」「ブラスト」「ストーム」ともう一つ。シロウに貰った『風魔法A』は各魔法の威力も引き上げた。
「すげーな、ヨウコの魔法」
リョウさんの言葉を誇らしく感じる。
「ヨウコ、ありがとう」
エルザさんの言葉は、以前はタイチ達に、今はシロウにヨウコが言っている言葉だ、戦えないヨウコはいつもそう言うしかなかった。自分が言われる対象になった事が本当に嬉しかった。
ーーーーーー
姫路城のダンジョンはそのまま城の内装を模している。グールがいた広間を抜けるとまた広間があり、そこにはスケルトンの大群がいる。先程はヨウコに活躍の場を取られたファフが、斧を手に飛び掛かっていくとあっという間に3体のグールを倒した。ヨウコやシロウも何体か倒したが、その間にファフがほとんどのスケルトンを斧で薙ぎ倒した。
「エルザ、こりゃあ、シロウ達には敵わんかもな」
「私はドキドキしてるぞ、卒業を前に私達にも高い壁が出来た。私はこの壁を越えて見せるが、リョウも一緒に来るだろう?」
「そんな恥ずかしいセリフは言わねーがな。先輩の意地は見せとかねーと」
「リョウのパーティ凄い人達がいるね」
「あいつらはシロウのパーティさ。俺はエルザともう一人でパーティを組んでる。今回はそのもう一人が来れないから、シロウ達に助っ人を頼んでる」
「ふーん、人に頼る事が出来る様になったんだ」
「そうだな。確かに日本にいた頃からは変わっただろうな。でもカスミも変わったんだろう」
「どうだろ? 私は変わりたくても変われなかった。今もそうだと思う」
「そうか、久しぶりに見たカスミは、あの頃より綺麗になったなって思ったぜ。少なくとも外見は変わったな」
「そういう軽口は変わらないね」
「おっと、もう階段がある。次は先頭で登らして貰うぜ、先輩らしい事をしなきゃいけなくなってきたからな」
リョウは次は俺だと先頭で階段を登る。リョウは固有スキルとして『鑑推』という、朧げではあるが相手のスキルが視える能力の他には『土魔法B』・『槍鉄士』のスキル持ちだ。基本は槍で戦い、要所で『土魔法B』を織り混ぜるのが戦闘スタイル。槍を片手に階段を登ると、登った先の広間には何もいない。みんなに声をかけて上に上がらせる。
「先輩の意地とやらは、発揮する場所が肝心ってことね」
登って来たカスミに憎まれ口を言われたが、そうだったな、カスミとはこんな事を言い合ってたなと、ダン校での日々が思い出された。
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