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君に、声を  作者: 桜 寧音
三章 高校一年(六月〜)
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4ー1ー4 文化祭二日目

周りの女の子たち。

 光希が津宮たち『パステルレイン』組に絡まれている間。水越が真剣に流山社長と話していた。彼らの席の接客は受け持つと言って今その席に近寄る人間はいない。

 声優という芸能人でしかも『ペパームーン』の全員も美男美女なために近寄ろうとする人間は多かった。野原と高芒が付き合っていようが美男美女だから近付きたい子供心があったが、それを水越が用事があるからとシャットアウト。

 特に仕事ができそうな女社長という独身のお姉様に近寄りたい男子が多かったが、絶対零度の目線で押し留めた。


「すみません、流山さん。本当だったら書面でお伺いするべきなのでしょうが……」


「いいわよ、別に。本人もミスコンは許可してるんだもの。劇とか、ナレーションをするってなったら光希も確認を取ってきたでしょうけど、ミスコンは声優としては本当に係わりのないことだもの。……でも今は確認している。あの子にどんな格好をさせるつもりなの?」


「これです」


 スマホを出して画像を見せる。それは流山だけではなく野原と高芒も覗き込む。

 流山はその画像に予想がついていたために微笑みを。その画像の意味に気付いた野原は苦笑を。意味がわからなかった高芒は首を傾げていた。

 光希の女装姿だとはわかっても、これが一々許可を取るものなのだろうかと思わずにはいられなかった。


「そう。まあ女装でミスコンってなったらこうするわよね。これ、別にやってもいいわよ?あの作品もこういう二次創作にうるさくないし、この姿で今許可を取るとしたら私でしょうね」


「ありがとうございます!」


「……野原さん、これ、何かのキャラのコスプレですか?」


「『()ザサレシ金華猫(きんかねこ)』って作品。アニメ化もしたエグい作品だよ。ドラマ化もされてて、女装殺人鬼の役を間宮が昔やってたんだ」


「あー……。つまりこの役の成長した姿で、間宮君にやってほしいってこと?コスプレって言い切っちゃえば身長とかも気にしなくていいだろうし。それで元々は何年前の作品です?」


「六年前だったか?アニメもそれくらいにやってた。まだ高芒が色々と興味なかった頃の作品だよ」


 高芒がドラマとかアニメとかに興味を持ち始めたのは十六歳の頃。つまり四年前のことだ。四年前からの作品はかろうじてわかっても、それ以上前の作品を高芒はほとんど知らない。シリーズ物とかよっぽどの有名な作品であれば知っていても、基本は知らないと言っていい。

 光希のことを天才子役だと知っていても光希の出演した作品を全て把握しているわけではない。野原が関わらなければ高芒は仕事以外の作品なんて知る由もないのだ。

 水越は流山から許可を取れたことを喜ぶ。そしてそのまま、彼女はさらなる欲望を吐き出した。


「すみません。こういう小道具も用意しているのですが……」


「あら。いいじゃない。あの子の怪我の状態は知っているのよね?」


「はい。けどちょっとしたパフォーマンスならできるんじゃないかなと。最近は野球部のみんなとキャッチボールもしていたので」


「そうねえ。ミスコンの短い演舞なら問題ないでしょう。殺陣と言っても相手がいなければ合わせる必要もない。これやるなら十秒くらいでいいでしょうからできるわよ」


 流山も間宮がどれくらい動けるかは知っている。そして俳優としての経験からも殺陣をパフォーマンスでするくらいは大丈夫だと太鼓判を押した。

 そしてそこからは画像の様子を見て、メイクに口出しをする。光希はメイクは何もかもお任せなのでそこまで詳しくないので、アドバイスらしいアドバイスもできていなかった。


 だがここにいるのは舞台俳優出身に、女性が二人。

 メイク表も写真で撮っていたので、そこから相談を重ねてメイク表を書き換えていく。特に流山と野原は『()ザサレシ金華猫(きんかねこ)』を知っていたので『百目鬼真央(どうめきまお)』の十五歳の姿というのは想像しやすかった。


 二次創作をしている気分になり三人は盛り上がる。高芒だけは作品がわからなかったので会話の輪に入れなかったが、恋人の野原が楽しそうにしていたためにそれで満足しながら安っぽい紅茶を飲んでいた。

 三人がメイクを詰め終えると、水越は満足そうにムフーと鼻息を荒くしていた。今は男子学生が着る詰め入り学ランを着ているので、ちょっと男の子っぽかった。

 そんな相談が終わった頃、鈴華と沙希が教室を覗き込んでいた。


「みっちゃん。そういえば休憩時間はいつ?一緒に文化祭回ろうよ」


「みーちゃんが外国人さんにナンパされてる⁉︎」


「なんか親しげだねえ。みっちゃんって呼ぶ人初めて見たかも」


「みーちゃん、どこであんな子と知り合ったんだろうなー。私服だからこの学校の子じゃないだろ」


 『パステルレイン』組が鈴華のお誘いにそんな反応をしていた。それを聞いて学級委員の垣根が奥から出てくる。


「間宮君休憩で回ってきなよ。休憩時間がないのはいくら何でもあんまりだし……」


「え、でもいつも迷惑かけてるし……」


「いやいや。最近事情もわかったしさ。それにこの皆さんもそこまで長居しないでしょ?まあ、出ていくついでにそのままの格好で宣伝してきてくれればなお良しなんだけど」


「……じゃあ、お言葉に甘えるよ」


 光希も学級委員に言われてしまえばどうしようもできない。なのでありがたく休憩をもらって出て行こうとした。

 光希がいないのならと、『ペパームーン』組もお暇することにした。既に流山が会計をしている。これからは文化祭をめぐるだろう。その前に水越へ言付けで、メイクの場に居合わせることを伝えた。そこでは助言をすることはないが、どう変化するのか見たかったのだ。


 そして根本は光希と仲が良さそうな鈴華の登場に焦っていた。どう見ても距離が近く、光希のことが好きな根本からしたら気が気じゃなかった。

 『パステルレイン』組も光希の女装がメインだったので、光希がいないのならこのクラスに長居する意味もない。


 『ペパームーン』の面々は流山から光希の家族だと紹介されたのと、沙希がドラマの脚本家だと知って納得していたほどだ。野原は光希が子役になった理由も知っているので、あんな綺麗なお姉さんだったら探すよなとウンウン頷いていた。

 根本たちも会計を済ませておこうかと席を立った頃には光希の腕に鈴華が絡みついていた。それを見てムキャーとなる根本。

 それを見てしまい、根本の事情を知っていた高芒と東條はあちゃーと頭を抱えていた。流山と野原、津宮はここで根本の恋事情を知り、津宮は『パステルレイン』の現場での出来事を理解していた。


(あー……。みーちゃんのこと好きなら、そりゃあみーちゃんの役に『大好き』なんて言い逃げするのは大変だよなあ。……役に入れ込み過ぎてるのはまずいよなあ)


 そんなことを考えている内に根本が光希と鈴華、沙希に突っ込みそうだったので東條が先に関わることにした。


「みーくん。随分とそっちのお姉さんとその子と仲が良さそうだけど、どういう関係性?さっきあんなチェキ撮っちゃったあたしらが言うことじゃないけど、世間体は気にした方が良いよ?」


「あらあら。光希、良かったじゃない。ちゃんと心配してくれる親切な先輩がたくさん居て」


「どちらかと言うと迷惑をかけられてるけどね、姉さん。東條さん、今言ったようにこっちが僕の姉です。で、こっちは姉さんの子供の鈴華ちゃん。姪っ子なので別に変な距離感じゃないと思いますよ?」


「お姉さんと姪っ子。なるほどー、いつもみーくんにお世話になっています。東條春香です」


「ラジオとか配信とか見てますよ。この調子で光希をいじり倒してください。この子、レスポンスが良いのでいじってあげた方が輝きますから」


 ここで『パステルレイン』組も二人の女性との関係性を知る。家族ならこの距離感もおかしくはないと頷いていた。

 恋する乙女である根本だけは姪っ子にしては距離感近過ぎない?と疑問に感じていたが。


「光希、ちょっと鈴華任せたわよ。私流山さんに挨拶してくるから」


「わかった。行ってらっしゃい」


 沙希だけ離れて『ペパームーン』組に合流する。結局光希と鈴華、そして『パステルレイン』組で文化祭を巡ることになった。

 その結果に、文化祭を回ろうとしていた冬瀬が崩れ落ちて水越が慰めるという光景が教室では残されていた。


次も日曜日に投稿します。

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