表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君に、声を  作者: 桜 寧音
三章 高校一年(六月〜)
61/73

4−1−1 文化祭二日目

姉と姪の来訪。

 文化祭二日目が始まる。文化祭一日目は校内発表ということで特に目立ったことはなかった。僕も自由時間に蓮沼君と多田君と一緒に校内を回って焼きそばを食べたり軽音楽部の演奏を聞いたりして初日は終わった。

 外部のお客さんがいない校内発表は身内感が強いから正直そこまで盛り上がっていない。それでもかなり売上は良かったようだ。みんな二日目に本気を出すからと校内の知り合いのところには初日の内に回っておくものらしい。


 二日目は人混みがそれこそ倍増するから歩くのも大変でどこも並ぶからあまり巡れないのだとか。僕は校内に他に知り合いもいないからただぐるっと回っただけだった。

 問題は今日。いつあの人たちが来るんだか。

 あと教室の後ろ側に昨日のチェキ売上トップ三が書き足されている。チェキ一回三百円だというのに結構買う人がいた。普通の写真は禁止したせいでこれの売上がそこそこ良いらしい。ドリンクはタダでホットサンドでしか売上にならない予定だったのにお遊びで増やしたこのチェキが好評らしい。


 チェキって僕たち芸能界だと結構有名だけど一般人というか同年代の若者はあまり知らなかった。舞台俳優と写真を撮るには必須なんだけど。昔からある即現像してくれるカメラのことで、写真屋に現像に行かなくてもその場で白い板が出て来て、それを手首で軽く振ってると色が出て写真になるというもの。

 色が飛んでたりしたらもう一回撮るけど、基本はこの一回の撮影でお金をもらっていた。

 これのランキングがねえ。何故か僕が一位なんだよね。

 そんなに金髪巨乳メイドが珍しかったのか。男なのに。


「今日はこのまま売上トップか?」


「一日ここにいる予定だし、そうなるかもね……。ねえ、どうして……?」


「お前が写真慣れしてるのが悪い。普通に可愛いポーズをすぐしやがって」


「メイクしてないけど今だって十分美少女だし」


「嬉しくないなあ」


 残り二人は女子の男装姿で、僕だけが男子でチェキの売り上げが良いらしい。他の人は完全にネタ枠っぽくてチェキを撮ろうとしてくるお客さんがいないのだとか。

 僕だって男なんだぞ。写真慣れは、子役の頃から散々撮られているんだから仕方がない。カメラが向けられた瞬間に最高の表情とポーズを取るように身体がなっている。こんなところでプロ根性出さなくてもって自分で呆れてしまう。

 開場三十分前になって垣根君がみんなに号令をかける。


「それじゃあ間も無く二日目が開場になります。このまま飲食部門でトップ取るぞー!」


「「「おおーーーーーー!」」」


「え、ウチって展示じゃなくて飲食部門だったの?」


「料理出してたらなんでも飲食部門らしいよ」


 へー、知らなかった。イベントというかこういうことやってるから展示部門だと思ってたのに。

 飲食部門はたくさんお店が出ているからトップは難しいんじゃないかな。どうしても休憩所の体裁があるから他の出店のように売り切りで販売している飲食店には販売速度ではどうしたって敵わないと思う。

 まあこういうのは楽しんだもの勝ちだし、優勝目指すっていうのは楽しむための方便だろう。

 忙しくないと良いなあ。無理かな。

 そんなこんなで二日目が始まる。僕たちの教室は二階なので比較的来やすい。だからか最初のお客さんは正直予想できた相手だった。


「いらっしゃいませ、お嬢様」


「あははははは!みっちゃん本当に女の子になってるー!胸デッカ!」


 鈴華ちゃんが突っ込んで来て僕に抱き着いてくる。僕も抱き留めつつ席に案内する。姉さんも来ていてプークスクスと笑いながら席に着く。


「光希、可愛いわよ?」


「姉さん……。こんな僕に可愛いって言ってどうするのさ?」


「メイクしてない割には可愛いわよ。顔の処理とかも一応してるっぽいし。……これ、こんなすっぴんのためにしてる処理じゃないわよね?」


 姉さんに顎を掴まれてマジマジと顔面を見られる。姉さんという美形が僕にそういうことをやっているからかクラスの中からキャーという歓声が上がった。

 姉さんもカッコイイ系の美人さんだからなぁ。そういう人が顎クイすると女の子が喜ぶっぽいというのは僕も芸能生活が長いのでわかっている。宝塚とかあるし。

 それに姉さんも芸能界に関わってるから、肌を見ただけでこの後のミスコンを読み取ったらしい。凄いな。

 とりあえず二人を席に座らせる。


「まさか一番乗りで来るなんて」


「暇だったんだもの。鈴華も一発目に行きたいって言うし」


「みっちゃんの姿なんて第一目標なんだから真っ先にくるよ」


「間宮君のお姉さん?」


「と姪の鈴華ちゃん。来るって聞いてたけど真っ先に来るなんて思わなかったよ」


「へえ、可愛いー!」


 女子たちが男装したまま鈴華ちゃんを撫で回している。ハーフだなんて珍しいだろうからすっかり女子たちのおもちゃになっていた。

 女子たちがそっちに集中してしまったので他の接客を男子で回すことになる。


「お姉さんモデルか何かか?」


「いや?ただの会社員だよ」


「あんなお姉さんの子供ならあの子も可愛いのは納得だな。あの子いくつ?」


「中学一年生。こんな髪の毛してると姉妹みたいでしょ」


「確かに」


 男子としても姉さんと鈴華ちゃんが気になるらしい。僕が叔父と姪なのに抱き着いたりっていうスキンシップ過剰なところもあって普通の親戚とは違う感じがあるからだろうな。

 叔父と姪っていうより兄妹みたいなものだからやっぱり僕たちの距離感は特別だ。

 鈴華ちゃんが可愛がられている間にまた僕はチェキの撮影を頼まれた。何枚撮れば良いんだ。姉さんはホットサンドを食べながら笑ってるし。


「本当に男の子?」


「男ですよ」


「うわー、クラスの子から聞いてたけど、来て良かったー」


 そんな上級生の女子もいた。僕の女装、それなりに話題になっているらしい。女子たちの男装も話題になってて女子がキャーキャー言ってる。

 集客効果としては大成功だろう。他の男子はネタ枠として、女子たちは宝塚みたいな感じでお客さんを集めていた。


 鈴華ちゃんともチェキを撮る。二人で腕を組んでウィンクしながら撮ったら教室の中の何人かが膝から崩れていった。「尊い……」という漏れた言葉が聞こえる。

 普通の接客もしつつ姉さんと鈴華の接客をメインにこなしていった。朝ご飯を食べてなかったらしくホットサンドを美味しそうに食べていた。


「今度はアンタの料理食べさせてね」


「はーい。またそっち行くよ」


「じゃあね、みっちゃん。また来るよ〜」


 姉さんと鈴華ちゃんが教室から出ていく。姉さんたちもこれから文化祭を楽しんでいくのだろう。

 そして次の客は。


「プッ、いつぞやの女装より酷いな……。なんだ、その無駄におっきな胸……」


「間宮君、やっぱりスレンダーの方が似合うな。そう思いません?野原さん」


「ああ。似合わないな……っ!」


「学生のノリなんてこんなものじゃない?二人とも」


 野原さん、高芒さん、流山社長の事務所トリオ。

 この三人には水越さんと冬瀬さんが目を大きくしていた。水越さんは声優について詳しくなくても、俳優として活動している人については知っているために誰かに見覚えがあったのかもしれない。

 冬瀬さんは多分高芒さんを知っているから驚いているんだろう。この時点でサプライズ成功だ。


「っていうか野原さん、いつぞやっていつの話ですか。共演した時に女装はしていませんよ?」


「共演してはないな。俺が見たのはホラ、殺人鬼の」


「あれはゴスロリでしたね」


「野原さん、私と間宮君どっちが可愛いんですか?」


「いや、そこで間宮とはならないだろ……。高芒の方が万倍可愛いよ」


「やったー」


 なんだこれ。カップルのいちゃつきに利用されたぞ。高芒さんはメガネをかけているけどその程度の変装で誤魔化せると思っているんだろうか。

 社長は社長で、これでよく許可したな。

 冬瀬さんと水越さんの両方に袖を引かれた。


「ちょっとちょっと!何で高芒さんと野原さんがあんなに仲良さげなの⁉︎もう距離感がカップル超えてるんだけど⁉︎」


「野原さんと流山さんって同じ事務所だったの⁉︎ごめん知らなくて!」


 冬瀬さんは高芒さんと野原さんのことを知っていて、水越さんは野原さんと流山社長が僕と同じ事務所だと知らなかったようだ。

 野原さんと流山社長は俳優としても活動していたために水越さんも知っていたんだろう。でも野原さんなんて役者というより舞台俳優だったからドラマファンでも中々知らないはずなのに。

 兎にも角にも、僕の家族が来た時以上に局所的な独特な雰囲気が出来上がっていた。


次も日曜日に投稿します。

感想などお待ちしております。あと評価とブックマーク、いいねも。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ