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君に、声を  作者: 桜 寧音
三章 高校一年(六月〜)
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3ー4 進む準備

文化祭前日。

 木曜日。文化祭の前日ということもあって今日は一日学校で文化祭の準備をする日だ。だから授業もなく教室の模様替えを行なっている。机を合わせて食事用のテーブルに変えてテーブルクロスを被せて学校の机じゃないように見せる。

 あとは椅子に座布団を載せてお尻対策をする。軽食だし出すのはドリンクとホットサンドだけだから長居するお客さんは少ないと思うけど一応の対策だ。後は黒板に色々と書いたり、今日までに用意した装飾品を飾っていったりして準備は進む。


 飲食店をするクラスは学校の調理室を借りるんだけど、焼きそばだけとか僕たちのクラスのようにホットサンドだけといったようにホットプレートや簡単な調理器具でできる物は隣の教室を借りることで調理場にしている。だから調理室と教室を往復する必要がない。

 隣のクラスは屋外で射的をやるそうなのでちょうど空いていて僕たちが控え室として使えていた。調理はもちろん、着替えも隣の教室でやる。そっちの準備もしなくちゃいけなかったのでやることはたくさんあった。


「間宮君、本当に良いの?土曜日、ずっと教室で接客なんて……。折角の文化祭なんだし、色々なところ回っても良いのに」


「ああ、それは大丈夫。というか、ちょっと教室に残ってないと面倒な知り合いが来そうだから残っておきたいんだよね。そのついでにクラスに貢献するだけだから」


 冬瀬さんにシフトの確認をされたけど、僕は土曜日の一般公開でずっと教室にいるつもりだった。姉さんと鈴華ちゃんはもちろん、津宮さんや根本さんや東條さんという『パステルレイン』組も来る。夢城さんも来たかったけどオーディションがあるから来られないと言っていた。その代わり写真が欲しいって言われちゃったのはまあ、仕方ない。

 夢城さんもすっかり『パステルレイン』メンバーとして打ち解けて僕たちメインキャストと話すことが多かった。特に僕なんて年齢が近い高校生声優だから学業との両立などで話すことが多い。


 声優さんの土曜日って夢城さんのようにイベントがなくても収録やオーディションがあるはずなんだけど。よく人気声優の津宮さんたちがスケジュールを空けられたなって素直に感心した。

 あと、流山社長と野原さん、高芒さんも来られるとか。事務所勢揃い再び。野原さんと高芒さんなんてデート感覚で来るつもりらしいから大丈夫だろうか。高校生で声優ファンって結構いるらしいし。夢城さんも身バレして学校で大変だったって言ってた。


 僕もその内経験するんだろうな。クラスにバレても大変だったのに。

 とまあ、そんなこんなで僕の関係者がメチャクチャ来るのだ。いつ来るかもわからないからずっとスタンバイしておきたい。そう思ってシフト提出の時に土曜日はずっと教室にいると紙に書いた。

 他の人は休憩ももちろん、他の出し物を回る時間もある。僕だって金曜日はそれなりに休憩をもらうことになっている。仕事は仕事だから休憩なしはどうなんだって思われたんだろう。僕は出し物が終わってすぐにミスコンの準備もあるし。


 朝九時スタートで十四時半まで休憩なし。そこでようやく教室から撤退してご飯を食べて着替えてメイクをして十五時半からミスコン。ミスコンの後に閉会式というスケジュールだけど。

 ぶっちゃけ全然大したことないんだよね。


「現場の進行が遅いと休憩なしで長時間収録とかあるから五時間半くらい休憩なしでも大丈夫だよ。僕も朝から夜までほぼ通しの仕事をしたことあるし」


「しゅ、収録ってそんなに長くかかるものなの?」


「それはもちろん。演技が気に入らないからリテイク、どうしても噛んじゃってリテイク。脚本家によるいきなりの台本変更、アニメ本編の収録とは別にPVやCM用の収録。五時間超えるなんてそんなに珍しいことじゃないんじゃないかな?」


「そ、そうなんだ……」


 声優になってからそんなひどい現場に当たったことはないけど。今の所はどこもとても気持ちのいい現場だ。でも子役の頃はそんなことしょっちゅうあった。そもそも主演が遅刻して来たり、お昼のシーンだからなるべく続けて撮りたいって要望があったり。

 外で撮影するからこその時間を気にした現場が俳優なんだろうけど、子役の僕だってそんな現場に付き合ってきた。今更六時間弱休憩なしとか苦でもない。


「ゲームの収録ともなると一日がかりってことも当たり前だよ?ひたすらシーンごとにテスト本番テスト本番って感じで、スタジオの時間が許す内に収録を終えなくちゃいけないからね。途中で水分補給さえさせてくれたらこのままで良いよ」


「声優さんって凄いんだね……」


「イベントも長時間になると四時間超えるって聞くし、そんなにおかしなことじゃないよ」


「そうなんだ。……もしかして面倒な知り合いって、声優関係?」


「秘密。騒がせるわけにもいかないし」


 冬瀬さんなら知ってる人ばかりじゃないだろうか。『パステルレイン』組は僕と共演していることと有名声優の皆さんだから確実に知ってる。イベントで実際に見ているだろうけど、それだってあくまでイベント。遠くからだっただろうし、プライベートじゃない。

 高芒さんも有名な声優だし、社長もアニメはあんまりだけど長く続けている実力派。野原さんは最近売れ出したけどどうだろう。


 とにかく冬瀬さんが興奮しそうなラインナップだ。伝えてはサプライズにならない。

 その代わり水越さんにはあまり喜ばれないと思う。水越さんは俳優のファンで、雄大のファンだ。だけど雄大は土曜日に映画の宣伝のためにテレビに出るんだとか。雄大もメチャクチャ忙しそうだ。


「辛かったら言ってね?すぐにでも休めるように調整するから」


「大丈夫大丈夫。というか僕が目を離している間に知り合いが来る方が怖い」


「……うぅ〜。それじゃあ文化祭一緒に回れない……。金曜日は休憩一緒じゃないし」


 ん?小声でうつむいてブツブツ何か言ってたけど何だろう?もしかしてどの声優さんが来るのか楽しみにしているんだろうか。

 やっぱり有名人やファンに直接会えるとなると緊張するよなあ。


「まあ、楽しみにしててね」


「うん、それはもう楽しみだけど。……騒ぎにならないよね?」


「皆さん変装してくると思うけど。騒ぎになったらその時はその時じゃない?ウチの売り上げに繋がると思えば……」


「多分パンクして売り上げどころじゃなくなるんじゃないかな……?」


「それもそうだ。しっかり変装してくださいって伝えよう」


 生徒にバレなくても一般客にバレる心配があるもんな。ファンがたまたまいて、素顔とか声でわかりましたなんてことは簡単に想像できてしまう。街中をただ歩いていて声かけられた声優さんもいるくらいだ。

 あとは電車で身バレしたとか。ファンって凄すぎる。

 水越さんも僕のことわかったし、ファンってそういう特殊能力持ってるの?


 会場設営は事前準備をしっかりと進めていたこともあって結構早く終わった。文化祭実行委員会の人たちのチェックも簡単に通った。教室を使う関係で跡が残るガムテープの使用が禁止で養生テープの徹底が呼びかけられている。

 実行委員会の人たちも大変だよね。全部のクラスの確認をしないといけないんだから。

 そしてお昼になって。今日は試食会だったためにお昼を買ってこなかった。


「というわけで女子の手作りホットサンドを男子はありがたく食べるように」


「ホットサンドメーカー使っておいて手作りって」


「切ったり挟んだりは私たちがやってるでしょ!」


 クラスメイトのそんなやりとりがありつつ、ホットサンドは美味しくいただいた。ピザトースト風にチーズとハムが入っていてちょっとピリ辛で美味しかった。

 女子が作るから美味しいかって言われると、どうだろう。有名シェフのほとんどは男性だし、異性が作ったものが美味しいって思えるかどうかは相手次第じゃないかな。姉さんと鈴華ちゃんがご飯を作ったら僕は無条件で美味しいって言っちゃいそうだし。


 二人ともあんまり料理できないけどね。姉さんは一通りできるだろうけど安くがメインすぎて味は食べられればいいって本人が言ってた。鈴華ちゃんは中学生だし自炊はしてないから下手だって言ってる。でも二人が丹精込めて作りましたって言ったら一口目で大絶賛すると思う。

 これが姪を甘やかしているってことなのか。確かに本人のためにならないかも。もし鈴華ちゃんに彼氏ができた時に苦労させそうだ。


「あ、料理なら間宮君も上手いんだよ」


「何で冬瀬ちゃんがそんなこと知ってるの⁉︎まさか手料理食べたとか⁉︎」


「ううん。私は食べたことないけど、食べた声優さんが美味しかったって。ほら」


 料理の話になったからか、冬瀬さんがSNSに上がってる僕の料理を見せ始める。僕自身は一回も料理の投稿なんてしてないのに。


「うわ、負けた」


「見た目キレー。しかも絶賛されてるしー」


「あー。だから最初調理係やろうとしたんだ」


 そんな女子の納得が挟まったりして。

 最終チェックとばかりに衣装合わせがあったんだけど。


「ミスコンが黒髪ならこういう派手な色の方が良いんだよ!」


「却下!っていうか誰⁉︎赤髪なんてネタウィッグ買ってきたの!自費でしょうね⁉︎」


「そこは安心しろ!自腹だ!」


「なら良し!だけど間宮君の赤髪はダメ!」


「水越、巨乳は⁉︎巨乳にしても良いよな⁉︎」


「ミスコンとのギャップでそれは良いんじゃない?」


「やったー‼︎」


「髪色は拘るのにパッドは投げやりなのはどうして⁉︎」


 僕の水越さんへの叫びを無視して男子は僕に巨乳パッドを装着していく。うわあ、胸が重くて変な気分だ。ミスコン用の小さいパッドはつけたけどあんまり違和感がなかった。けどこれは重いし足元が見えないしダメだ。

 それにサイズフリーのメイド服ってすごい。こんな大きいパッドを付けたのにまだ胸に余裕がある。腰の方で最終的な調整はできるようになってるけど、このパッドが問題なく使える服っていうのは驚くしかない。


 コスプレ服って凄いんだなあ。

 そこから僕の髪色について男子と女子の面倒な戦いが始まる。色に始まり長さに進み。あーでもないこうでもないと全部のカツラを試された。ミスコン以外全ての物を試した結果、金髪ロングという無難なところに収まった。

 巨乳金髪女装男子の完成です。これ、本当にどこに需要があるんだろうか……。


「やっぱメイクってすげーんだな。女装してんのにこっちは間宮のままだもん」


「いやいやメイクだけの力じゃないって。間宮君は元々素材が良いのよ」


「みーちゃんって呼ばれるのもわかるかも……」


 これを色んな人に見られるのかぁ。明日と明後日はちょっとした覚悟が必要そうだ。

 収録やオーディション、イベントよりも緊張してるかもしれない。


次も日曜日に投稿します。

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