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君に、声を  作者: 桜 寧音
三章 高校一年(六月〜)
54/73

2ー3ー2 告白・発表・特典

特典映像二回目。

 撮影の続きで、次はバッティングの勝負だ。カメラを回す前に試しで一ゲームずつやらせてもらった。

 全員ボールは中速110km/h設定のストレートだった。ここには低速の90km/hのストレートに高速の130km/hストレート、そして右投手想定の100km/hのカーブがあるけど、変化球と高速は素人の僕たちに打てるわけがない。そして低速はバラエティとして見栄えがないとのことで中速が選ばれた。

 中高生が投げる速度らしい。当てられるけど中々前には飛ばない。野球って難しいなあと思いつつプレは終わりで本番に移る。


「『パステルレイン』DVD・BD特典映像、天才『藤堂綾人(とうどうあやと)』に近付け!野球対決〜!第二回放送、『投げるだけじゃない!打つのも任せろ!ホームラン競争』〜‼︎」


 今度は拍手で始まる。津宮さんが前回の結果を伝えて、今回のルール説明を始めた。


「一コインで二十球打てるので、全員一ゲームずつやっていくぞー。そして今回は特別ルールが。俺たち全員野球素人なのでホームラン競争と言いつつかなり甘々な採点をしていくぜ。なんと、ボールを前に飛ばせたら十点!」


「甘い!甘すぎるよ!だってアウトになるような打球も得点にしてくれるってことでしょ?」


「そうだぜ、根本ちゃん。まあ、致し方ない事情もあるんだけど。ここバッティングセンターだからどんな当たりがヒットかの判定がしづらい。それに俺たち全員が二十球やってヒット性の当たりが出るかもわからないし」


「さっきちょっとやらせていただきましたけど、当てるので精一杯だったです……」


 僕もネタバラシということで話を広げる。

 津宮さんと東條さんはバッティングセンターに来たことがあるらしくてそれなりに当たっていたけど、僕と根本さんはさっぱり。野球のドラマなんてやったことがなかったし、事故の後からは運動が大の苦手だ。根本さんも運動がそんなにできる人ではなかったので空振りが多かった。

 東條さんはまだしも、津宮さんが遊びだけでそれなりに当てられることが凄いんだと思う。


「まあ空振りとファウルばっかじゃ勝負にならないし、ヒット性の当たりじゃなかったら得点じゃないってしたらポイントの変動がなさそうだからな。というわけでプロデューサーたちの慈悲で甘々裁定になりました」


「え〜。ヒット性の当たりだったらもうちょっとご褒美欲しいな〜」


「自信のありそうな東條ちゃんに免じて、スタッフからの慈悲その二!スタッフがヒット性の当たりだと判断したら三十点!」


「やった!言ってみるもんだね!」


 一応台本通りなのに津宮さんと東條さんは何でもないように会話を続ける。さすが役者さん。この辺りは聞いていて不快にならないようにできるのが素晴らしい。

 テレビのバラエティとかだと本当にあからさまな進行とかもある。棒読みだったり話の誘導が下手だったり。このメンバーはトークスキルが高いから変な流れにはならなかった。


「そしてストラックアウトの時同様、ホームランのボーナスもある!あのホームランの的に打球が当たればなんと、二百点!」


「パーフェクトと同じ点数もらえるんだ!」


「しかもこっちはチャンスが多いからな。全員張り切っていくように!」


「「「はーい」」」


 ホームランの的は結構小さい。丸い赤い看板に白い文字でホームランと書いてあるんだけど、結構高い位置で遠くにある。僕たちの使うケージからちょうどまっすぐ弾き返せばホームランに当たる位置だ。

 でもホームランを当てる人は一日十人以上いるらしい。一人で何回も当てる人がいるから通常営業ならそれなりの頻度で聞けるらしい。ホームランは名前を載せることもできるらしいけど、パーフェクト達成と違って名前を残さない人が多いらしい。


 ホームランに当てるとファンファーレが鳴る。そしてゲームをするためのメダルを二枚もらえるらしい。ホームラン賞の景品はバッティングセンターによって色々と違うらしい。

 さっきは白組の僕が最初だったために今度は赤組の根本さんから始めることになった。

 根本さんはさっきも見た通り、野球なんてほとんどやったことがない人だ。スイングも安定せず、バットを振り切った後よろけることもあった。

 それでも三球前に飛ばしていた。ボテボテのゴロとあまり浮かばなかったフライだけど、前に飛んだのは事実だ。


「ふいー。ごめんなさい津宮さん。これ限度です!」


「いやいや十分っしょ。ぶっちゃけゼロ点も覚悟してた」


「それはそれでひどくないですか⁉︎」


 110km/hって野球をやったことのない僕たちからすれば結構速いボールだ。それを当てられただけ凄いと思う。僕も前に飛ばすのはかなり難しいし。

 機械が投げてくれるからってコースは結構バラける。高さをボタンで調整できるけど高めに設定したって低めに来ることはある。それにボールが来るタイミングは機械をちゃんと見ていないと思いっきり外す。タイミングが合わなすぎて空振りということもあるからよく見ておかないと。


「みーくん、どっちからやる?」


「自信ないので僕からで良いですか?」


「オッケー」


 白組は僕から。東條さんはさっき良い当たりを結構打っていたので見栄え的にも後の方が良いだろう。

 右打席に入ってコインを入れる。バットはバッティングセンターにある物だ。構えも適当で右腕を庇いながらのバッティングになる。さっきのプレで目が慣れたのか、初球にしっかりと当てることができた。ただファウルだったけど。


「お、みーちゃんやるぅ」


「当てられるんですけど、前に飛ばないんですよね」


 その言葉の通り、その後三球は全然前に飛ばなかった。

 五球目でようやくピッチャー返しのゴロを打てた。


「ナイスバッティング!」


「やっと一本……」


 でもそこからタイミングとかにも慣れたのか、二十球の内五球は前に飛ばせた。ヒット性の当たりは皆無だったけど、素人なりに頑張った方だろう。白チームに五十点が加算される。


「真打登場!」


「それさっきも言ってましたよ」


 順番的に津宮さんの番だ。お決まりではないけど天丼ネタを言ってきたのでしっかりと突っ込む。

 打席に入った津宮さんはホームランの的をバットの先で示していた。滅多にやる人がいないホームラン予告だ。実際の試合とかだと見ないよなあ。昨今、本当に見なくなった。だってあれ、煽りみたいなものだし。

 本当にエンターテイナーだな。ここまで野球の題材で盛り上げようとするのは芸人気質と言えるだろう。

 でも津宮さんの言葉もあながち間違っていなかった。前にボールは飛ぶし、七球目には綺麗なライナー性の当たりを打っていた。その打球の綺麗さに僕たちはもちろん、スタッフさんも拍手をしていた。


「今の三十点で良いの?」


「オーケーだって」


「よっしゃあ!」


 喜んでいる内にボールが投げられて見逃しで一球消費してしまう津宮さん。ゲーム中にガッツポーズはなんというか……。


「あー!津宮さん、喜ぶ前に前見て打って!私たちまだ負けてるんですよ!」


「えー、イーブンくらいにはなったんじゃないの?」


「ハルちゃんが残っているのに慢心ダメです!」


「はーい」


 根本さんに怒られながら打撃に集中すると、津宮さんは結局三本ヒット性の当たりを打ち、それを除いて八球前に飛ばしていた。ということで一気に百七十点を手にしていた。ストラックアウトと比べると点数の上がり幅が大きい。これで点数は逆転された。


「まあまあ落ち込むなってみーくん。ここからお姉さんが一発逆転してやるから」


「ハルちゃん、そんなに大口叩いていーの?ヒット性の当たりちゃんと打たないと逆転なんてできないよ?」


「あたしが小学校の頃バッティングセンターに連れてこられて打ち込んだという在りし日の努力を見せる時が来たようだな!」


「ナニィ⁉︎俺だって高校生の時に遊びで来ただけなのに、もっと本格的な奴がいた⁉︎」


 本物の真打である東條さんは振り子打法という前側の左足を大きく上げてゆったりとした動作で踏み込み、振るという日本人メジャーリーガーの代名詞とも呼べるような打法でスイングをした。そのスイングは確かに四人の中で一番綺麗で、打球も前に飛んでいた。

 十球打った時点でヒット性の当たりが二本あって、その結果に津宮さんと根本さんが顔を青くしていた。そんな顔色になるのも仕方がない。「フッ!」って力強い声と共に快音が響けばそうもなる。


 十二球目に三本目のヒット性の当たりを打って点数的に絶望を知った二人へ、追撃の一撃が放たれた。

 それはカキーン、と余韻の残るような音を奏でて。

 ボン!という板に当たった音と共にチャッチャララ〜というファンファーレを響かせた。


「おお、当たった!」


「ウワァアアア⁉︎本物のスラッガーだ⁉︎」


「ハルちゃん、エンタメの神様に愛されてるよ⁉︎」


「ホームランって、当たるんですね」


 津宮さんと根本さんは二百点が追加されたことに発狂して。僕はパチパチパチと拍手をするしかなかった。

 東條さんはそのまま津宮さんのようなミスをすることなく、残りの七球でもう一本駄目押しのようなヒット性の当たりを打った。

 結局東條さんは一人で三百六十点をもぎ取って来た。


「みーくんイエーイ!」


「イエーイ!」


 戻って来た東條さんとハイタッチをする。まさか本当にホームランを打つなんて。初めて来たバッティングセンターであんなものを見られるなんて凄い経験をしたものだ。しかもカメラが回っている場面でやったんだから余計に凄い。

 圧倒的な差を付けたこの勝負。スタッフさんが集計をした結果、酷い点数になっていた。


「はい!というわけで第二ピリオドが終わったわけですが……。この第二ピリオドの獲得点数を見てみましょうか。というわけでこちら!」


 津宮さんがヤケクソ気味に叫びながら手を前に出す。多分ドドン!という効果音とテロップ編集がなされるだろう。


「赤組二百点、白組四百十点!ダブルスコアかよ⁉︎」


「津宮さん、私たち二人でホームランの点数ですよ!四十球振ってホームラン打ったことにしましょう!」


「点数的にはそうだけどさあ……」


「ウチは東條さんのおかげですね。さすが真打」


「おうおう。みーくんもっとあたしを褒めな?」


「東條さんカッコイイ!素敵な女性です!野球も上手いなんて尊敬しちゃいます!……これで暴走癖がなければなあ」


「みーくん上げて落とさないで⁉︎それと癖はやめてほしいなあ!アキに比べれば大分マシだと思うけど⁉︎」


「いやぁ、三人ともあまり変わらないような?」


「まさかこの活躍でもみーくんの心象を上げられないなんて⁉︎どうすればいいんだ⁉︎」


「ご飯作ってとか言わなければすぐに回復しますよ?」


「それは無理!」


 じゃあ暴走している人って評価は変えられないかなあ。

 そんなコントもしつつ番組も締めて撮影は終わった。

 撮影が終わって夕方。運動をしたこともあって僕たちキャストの四人は夕飯を食べに回転寿司のチェーン店に向かった。今日もウチに来られて料理をするとなったらさすがに面倒だったので外食で良かった。

 スタッフさんには仲が良いねえと言われたけど、正直『パステルレイン』のあのステージのおかげで僕たちの関係性も決まったと思う。あれがちゃんとしたイベントだったらこうはなってなかったはず。


「みーちゃん何食う?」


「じゃあいかで」


「いか好きなのか?」


「あのコリコリ感が結構癖で。あ、お味噌汁も欲しいです」


「寿司屋の味噌汁って美味しいよなー」


 全員でお味噌汁を注文して後は好きに注文したりレーンから取ったりして食べた。

 僕も少食だとは思っていたけど、根本さんはたったの六皿しか食べなかった。その代わりに茶碗蒸しとデザートを食べるらしい。茶碗蒸しと玉子焼きも美味しいよねという話もしつつ、この中で一番食べたのは津宮さんで十三皿も食べていた。


「みーちゃんも少食じゃね?」


「回転寿司に来るといつも八皿くらいですよ?大食いじゃないですけど、こんなものでは?」


「いやあ、男子高校生ならもっと食わないと!大きくなれないぞ?」


「えー、みーちゃんはもう大きくならなくて良いんじゃないかな?今の身長が一番可愛いよ」


「……もう少し食べようかな」


「みーちゃん反抗期なの⁉︎」


 小さくて可愛いなんて言われたら背を伸ばしたくなる。まだ伸びるはず、多分。

 ただやっぱりお腹的に結構限界だったためにデザートを足したくらいだった。アイスクリームブリュレくらいしか入らなかった。いやこれは夕食にしては早い時間だったからだ。

 食生活、考えた方が良いのかなあ。身長を伸ばす本でも買おうか。


次も日曜日に投稿します。

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