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君に、声を  作者: 桜 寧音
三章 高校一年(六月〜)
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2ー2ー1 告白・発表・特典

身バレ。

 水曜日。

 今日は収録関係がないので至って平和にお昼を過ごせる。放課後も文化祭準備を手伝って、でも五時半には上がらせてもらって根本さんの配信に出るために準備をしないといけない。僕の家でやることは良いんだけど、お客様がいらっしゃるのだから少しくらいは綺麗にしておきたい。今日家を出てくる前に掃除はしてきたけど、最終確認はしたい。ご飯の準備もあるし。

 そんなことを考えながら登校して教室に入ると蓮沼君と多田君が僕の席に集まっていた。何だろう。


「おはよう。蓮沼君。多田君」


「おう、間宮。やっと来た」


「やっと?まだ余裕はあると思うけど……」


 始業まであと十分以上ある。そんなに遅くなかったと思うんだけどどういうことだろうか。

 ひとまずカバンを脇に置いて席に座らせてもらうと多田君がスマホを見せてきた。


「なあ、間宮。これってお前だよな?」


 見せられた画面は僕のSNSのホーム画面。

 え、身バレした……。確かにホーム画面の写真は松村さんに撮ってもらった僕の写真だけど、身バレするようなことは書いてないし、変な投稿もしなかったはず。

 この二人も冬瀬さんみたいにアニメとか見る人だったんだろうか。もう写真まで見られている時点で隠せないので認めるしかない。また社長に連絡入れないと……。


「えっと、うん。確かに僕だけど。よくわかったね……?」


「いやあ、気付いたのはむしろこっちだな」


 多田君がカバンから出したのは週刊少年アッパーの今週号。『浸食のグラナダ』が掲載されている雑誌で、僕のインタビュー記事が載ってるやつだ。写真は出てないからCVとして僕の名前が出ているだけ。今は本名で活動しているから確かに名前が載ってるけど、それだけで気付くだろうか。


「これだけで僕に行き着くのは不可能じゃない?名前が同じ人なんて探せばいそうだし」


「俺もおやって思ったんだよ。んで『浸食のグラナダ』の公式SNS調べたら投稿についてお前が呟いてるじゃん?で、ホーム行ったらお前の顔写真出て来て確定したわけ」


「あー、さすが現代っ子。すぐにネットで調べちゃうんだから」


「まあ、そういう世代だからな。しっかし驚いたぜ。間宮、声優だったんだ?」


「そう。度々休んでいたのも収録のためなんだよね。足の怪我も本当だけど、リハビリは月一くらいでしか行ってないんだ」


「だろうなー。幾ら何でも休み多すぎんだよ。学校は知ってるわけ?」


「もちろん。そうじゃないと休ませてもらえないよ」


 もうバレてしまったんだから隠すこともないかと色々とバラす。一応二人に断りを入れて社長へクラスメイトに身バレしましたとメールで伝えた。最も声優としてバレただけで、子役の『間宮沙希』のことはバレていない。そう考えると水越さんってかなり特殊だよね。

 メールをした後は男子ほぼ全員に囲まれた。週刊少年アッパーは男子学生ほとんどが愛読しているような漫画雑誌なので名前を見たという男子が多かった。


 ディスタブロ役をやるなんてすげえと褒めてくれる人が多かったんだけど、一番は高校生が二十代半ばの青年役やるのはどうなんだっていう疑問も出てきた。歳上の役なんてやることは滅多にないというのが普通の人の考え。

 だから証明じゃないけど、ディスタブロの声ではないけど大人っぽい声を使うことにする。


『こらこら、お前たち。大人を揶揄うんじゃない』


「え、今の間宮なの?すげー!確かに大人の男っぽかった!」


「はぁー。そんな声出せるならディスタブロもできそうだわ。っていうかそんな声で演じるの?」


「いや?ディスタブロはもっとダルそうかつ真面目な部分も残しつつだから、こんな少女漫画に出てきそうな大人の声じゃ演じないよ」


「へー」


 こんな一声で納得してくれるなら安いものだ。頑張れよって応援もしてくれる。

 男子たちに囲まれていると、水越さんが近寄ってきた。


「あちゃー。間宮君バレちゃったんだ?」


「え?水越は間宮が声優って知ってたの?」


「うん。あたしと美恵は知ってたよ。結構特徴的な声だし、声も通るからね」


「美恵……。ああ、冬瀬さんか」


「美恵なんて高校初日で気付いたらしいよ?声でわかったって。前からファンだったみたいだし」


「あー……。あの行動の数々はファンだったからか。まあ、教室内に推している芸能人がいたらああもなるか?」


「そういうこと」


 冬瀬さんのことも並行してバラされていく。冬瀬さんはギリギリに教室に入ってきたが、僕が囲まれている状況と水越さんの言葉で僕の身バレを知る。


「間宮君声優ってバレちゃったの⁉︎」


「うん。週刊少年アッパーの力を見縊ってた」


「『浸食のグラナダ』なんて今アニメやってるからアッパーでもかなりの話題作だし、こうなるのも仕方がないだろ。顔写真が出てたら学校中に知られ渡ってたんじゃないか?」


「そんな怖いこと言わないでよ、蓮沼君……」


 学校生活は正直他の人と変わらずに穏やかに過ごしたい。そういう理由もあって学校側には足の怪我という理由を表向きの早退理由にしてもらっていたんだから。

 せめてもう少し僕自身が有名になってからとか、高校卒業する直前とかにバレるならしょうがないって思えたけど。

 一応僕ってまだ主役を演じたわけでもないのにバレるのは本当になんというか、変な感じがする。僕の初主演作品って『星々』になる予定なのに。


 その『星々』もアニメ化はまだ発表されていない。『星々』の単行本の宣伝は始まってるけどそれだけだ。『パステルレイン』にしても『スターライト・フェローズ』にしてもサブキャラクターだから作品の知名度はあっても僕自身はどうなのって感じ。作品や周りのキャストが有名なのであって、僕自身は実績も少ないペーペーだ。

 話している間に始業のチャイムがなって皆慌てて席に戻っていった。担任の先生が簡単なSHRをしてすぐおしまい。なんだけど僕は先生にクラスの皆に声優だとバレましたと伝える必要があった。一応確認できたのはクラス内だけであることを伝えると、ならこれで堂々と早退や休みができるなと笑っていた。

 それでいいんだろうか、先生は。

 次の授業の準備をしているところで、多田君がアッパーを僕に手渡してきた。


「なあ間宮。折角だからこれにサイン書いてくれよ。一生モンの宝物にするわ」


「え、多田ズリィ!」


「俺も書いて欲しいんだけど!」


「私も!」


 男子以外にも冬瀬さんも何かを持って並んでいた。まあ、転売したりしなければいいか。

 僕関連の物に限定してサインをすることを伝えるとアッパーを持ってきていた多田君と蓮沼君、後は『パステルレイン』の漫画の初回特典に付いている奏太のラバーストラップを持っていた冬瀬さんだけがサインを書く物品を持っていた。

 男子は明日アッパー持ってくると息巻いていた。冬瀬さんなんて『スターライト・フェローズ』を持ってくるつもりらしい。まあ、良いけど。


 休み時間はそんな感じで過ごしていた。冬瀬さんが何故か筆ペンを持っていたのでそれで書く。子役の頃はMamiyaを崩して書いていたけどそれと全く同じだと『間宮沙希』だとバレてしまうので今はMitsukiを崩してサインにしていた。

 姉さんと鈴華ちゃん以来だな、サイン書くの。


 昼休みには水越さんから個人ラインが来ていた。『間宮沙希のサインちょうだい?』と書かれていたので、しょうがないなあと思いつつ良いよって返信した。光希としてサインは書いてあげるのに『沙希』の方は書かないというのも変な話だ。もう引退した芸名でも同じ人物なんだから。水越さんは『沙希』のファンだし。

 問題はどうやってこっそりと渡すかだけど、それは水越さんから解決策が出された。

 ミスコンのメイクを試す時に書いて欲しいとのこと。確かにそれなら二人っきりになれるな。『間宮沙希』のことがバレないならなんでも良いや。

 あと昼休みにクラス委員長の垣根君に話に行く。


「垣根君。申し訳ないんだけど今日の文化祭準備、五時半に上がって良い?」


「問題ないけど。あ、仕事関連?」


「実はそうなんだ。七時から配信をする予定なんだけど、一時間前には家に戻っていたいから。準備とかあるし」


「へー。声優って配信とかもするんだ。何するの?」


「アプリゲームのガチャ配信って言ってた。出演作の宣伝みたいなものだよ」


「なるほど。頑張ってね」


「ごめん。文化祭の準備も手伝いたいんだけど……」


「準備も順調だから気にしなくて良いよ。仕事も大事だってわかってるから」


 なんて優しいんだ。どれだけ準備が進んでいるのか確認していないけど、僕の事情を優先してくれるなんて。もう中旬になるけどそこまで慌てなくて良いのは本当に順調だってことだと思う。

 放課後になって本当に仕事がほとんどなくてビックリした。内装は細かい物を残して大分できており、調理組とか衣装班がどうするかという話ばかりだった。


 僕は校内を練り歩く時に持つ持ち看板の作成をすることになった。宣伝になるため、各クラスで持って歩いて良いらしい。でもクラスで二個だけらしい。簡単に木材で組み上げて、そこに画用紙を貼り付けて宣伝内容を書くだけ。画用紙の方は女子に任せて僕は看板の方を作る。

 釘を打ち付けるだけなんだけど、これと立て看板くらいしか残っている作業がないというんだから仕方がない。

 作業をして休憩をしている頃に冬瀬さんがスマホを持って近付いてきた。


「間宮君。『ソラソラ』リリースされたよ」


「あ、良かった。それなら今日の配信も問題なさそうだね」


 ガチャ配信をするゲームがリリースされていなかったら配信が成り立たない。公式からもリリースされることがずっと通知されていたから心配はしていなかったけど、ちゃんとリリースされて良かった。

 他の人たちも冬瀬さんのスマホを覗き込む。多重プラットフォームで展開されているからか、スマホのゲームながらもグラフィックがかなり良い。女子が覗き込んでいるが、僕はストーリーとかのネタバレにならないように今は見ないようにしよう。僕は僕で配信の時にちゃんと見れば良い。

 僕は休憩を終わらせて看板の作業を進めておいた。持ち看板は貼り紙を付けるのを残して完了した。その頃には五時半になりそうだったから僕は帰り支度を始めた。


「ねえねえ、どのキャラが間宮君のキャラなの?」


「この『アセム』ってキャラ。星三だから当たりやすいかも」


「ふーん。私もやってみようかな」


 こんなところで布教になるなんて。僕としても一演者として嬉しいことだ。

 クラスの取り纏めをしている垣根君に話しかける。


「ごめん。そろそろ帰るね」


「うん。ありがとう。助かったよ」


 皆にも一声かけて帰る。冬瀬さんは僕のキャラが当てられなかったようでリセマラを始めていた。文化祭準備は良いんだろうか。誰もあまり準備をまともにやっていなかった。良いのかな。今日の分はほとんど終わってるから後は雑談の時間ということだろうか。

 帰りにスーパーに行って食材を買い足しつつ、家に着いてからは食材を冷蔵庫に入れて軽く部屋を掃除しておく。部屋を掃除しつつゲーム機を起動して『ソラソラ』をインストールしておく。配信前に準備ができていないとどうしようもない。

 そんな準備を進めているとインターホンが鳴った。出ると津宮さんがいた。


「ヤッホー。お?もしかして一番乗り?」


「そうですね。まだ四十分以上前なので特別早いってわけでもないんですが」


「根本ちゃんがいないのはまずくね?配信準備とか根本ちゃんじゃないとできないし」


「機材を持ってきてコンセントと繋ぐだけらしいので大丈夫だと思いますよ。ネットの設定を前に教えてあるのでそこまで時間はかからないと思いますが……」


「ふうん?配信関係はよくわからないけど、そこら辺は根本ちゃんに任せるしかないか」


 津宮さんが来て、津宮さんもゲーム機でアプリを落とすために僕のネット環境を教える。今時ネットが使えないと色々不便だからね。

 津宮さんもアプリを落とし切ってから根本さんが来た。来てすぐ机の上に機材を準備し始める。準備が終わった頃に東條さんもやってくる。全員ゲーム機を設定して配信準備を整えていく。

 リハ配信をちょっとして音量調整も完了させて。SNSとかで呟く。

 そして、配信が始まる。


次も日曜日に投稿します。

感想などお待ちしております。ブックマークやいいねも。

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