表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君に、声を  作者: 桜 寧音
三章 高校一年(六月〜)
48/73

1−2 文化祭準備と忙しさと

あけましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いします。

 昨日の収録も終えて土曜日。朝の九時から学校に集まって文化祭の準備を進めることになった。僕は相変わらず教室内の内装を作る係で、ステンドグラス擬きを作る作業をしていた。いくら毎日作業をしている訳ではないとはいえ、かなり回数多く作業の時間を取っているのは事実だ。

 何でこんなに作業を上旬からやっているかと言うと部活の大会や練習試合、他にもバイトなどで時間が取れないことを考慮して集まれる内に集まろうという考えで行動しているから。特に本番が近い下旬には劇やダンスをやるクラスが多くの場所を占有したり、文化祭実行委員が校門に立てるアーチを作ろうと場所を優先的に使おうとするので場所取りが大変なんだとか。


 あとは部活での出し物の準備や練習があるから、クラスのことはできるだけ早く片しておきたいのだとか。三年生が最後の文化祭だからと張り切りすぎて部活動の出し物が凝った物になり、クラスの準備に手をつけられなくなる人が勃発するらしい。だからクラスのことはやれることはやっておきたいのだと言う。

 今日は土曜日なので運動部の人たちは普通にグラウンドや体育館で部活をやっている。集まっているのは文化部だったり帰宅部の人たちだけ。


 正直ステンドグラス擬きの作り方をきちんと説明していたからか、今日中に窓側の分は完成する。予算もあまりないからステンドグラス擬きは窓を隠すだけで終わりだし、後内装でやることはテーブルクロスとか座布団くらいで他にやることはないらしい。

 僕もあまり拘束されなくて済むかと思うと気が楽だ。劇とかをするクラスは小道具と大道具を用意してその上衣装も用意してセリフを覚えて動きを覚えてと、一ヶ月でやるのはかなり大変らしい。だから今からかなり詰め込んで準備を進めているのだとか。


 窓から中庭を見るとダンスをやっているクラスや、殺陣(たて)をやっているクラスもある。教室では僕たちみたいに衣装とか小道具を作っていてダンスとかできるスペースがないんだろうな。

 というわけで一緒に作業をしている女子と雑談をしつつステンドグラスを作っていると、何やら四人ぐらいの男女が僕の方を見ている。クラス委員長と副委員長に文化祭実行委員の二人。何で僕を見ているんだろうか。


 何かまずいことをした?

 心当たりがないまま作業を続けていると四人は僕に近づいてきた。やっぱり目的は僕らしい。

 クラス委員長の垣根君が気まずそうに、僕に話しかけてきた。


「えっと、間宮君。ちょっと良いかい?」


「垣根君、何か問題かな?」


「えっと、あの。……すっごい言いにくいことがあるんだけど」


「え、なんか嫌な予感するんだけど……」


「……ミスコン、出てくれない?」


「ミス、コン?」


 それって女子の可愛い頂点を決めるコンテストだよね。

 いや、ミスターコンテストの略もミスコンって訳すんだろうか。確認しないと。


「ミスターコンテスト?」


「いや、ミスコンテスト……」


「……僕、男だけど?」


「わかってる。だけどウチの学校ってミスコンも男女逆転なんだよ……。男子は女装して、女子は男装するって。で、クラスから必ず一人出さなくちゃいけなくて昨日のLHRでも話し合ったんだけど決まらなくて……」


 なるほど。僕がいなかった時に出た話だから僕にも聞いてきたんだろう。誰もやりたがらないから欠席裁判じゃないけど、いなかった僕に確認をしたかったのかな。

 男子も女子も出し物で男女逆転をするのに、ミスコンは嫌なのか。どっちも大人数に見られることは変わらないのに。


「誰もいなかったんだ?」


「それが見事に。閉会式の一個前のプログラムでやるんだけど、パフォーマンスもほとんどなくて本当に一言喋って終わりだから大したことしないらしい」


「壇上上がって喋って終わり?」


「余興みたいなものらしい。最後の表彰にミスコン賞があるだけでMVPクラスへのポイント加算とかはないから気楽にやれるらしいんだけど」


 ウチのクラスでも出場者が出ないって、他のクラスはもっと困難なんじゃないだろうか。

 これ、断ったらきっとクラスの全員が困るんだろうなあ。それに舞台に立つことだけなら僕が一番慣れてる自信がある。誰もいなかったら出ようかなと思う。


「一応さ。冬瀬さんと水越さんが間宮君を推してて。ダメかな?」


「二人が僕を売ったんだね?まあ、誰もいないならやるよ」


「ありがとう!助かるよ!」


 垣根君に手を握られる。本当に困っていたようだ。周りの人も安心したのか息を吐いたり喜んだりしている。

 そしてすぐに、垣根君が声を掛ける。


「冬瀬さん、水越さん!間宮君がミスコン出てくれるって!」


「「よしきた!」」


 それを聞いた二人が即座にやってくる。どうしたんだ一体。そんなに駆け込んできて。


「というわけで間宮君、控え教室行こっか!何を着るか決めるよ!」


「可愛くメイクもしてあげるから!早速メイクしよう!」


「何で二人してそこまでやる気満々なわけ⁉︎別に頑張ったからって優勝ポイントとかに関係しないんだからガチでやる意味ないよ!」


「「折角なんだから可愛くしないと意味ないでしょ⁉︎」」


 ええー……。何だろうこのやる気。

 二人も他の仕事を後回しにして、僕の仕事も他の人に任せて良いらしくミスコンのことだけを考えて良いらしい。

 準備室みたいな場所で着せ替えショーが始まる。色々と安売りの殿堂で買ってきた女子の服を着るように言われてYシャツだけ脱いでズボンとTシャツは着たまま服を着ていく。


 ナース服に婦警服、メイド服に不思議の国のアリスのようなエプロンドレス、ゴスロリを着させられた。ウィッグも既に用意されていて黒いロングヘアを付けさせられた。

 その上で写真を撮られる。参考資料にするらしい。

 何だこれ……。


「いやホント、どうするのこれ……」


「何でそんなに似合うの⁉︎女子として負けた気がする……!」


「いやあ、素材が良いと良いねえ。いじり甲斐があるよ。メイクも結構薄目で良いかもな〜。目は大きくした方が良いかも」


 メイクは水越さんが担当するらしい。座った僕をいろいろな距離から眺めてどうしようかとノートに書き込んでいく。スケッチをしているみたいだ。メイク案のようで、ドラマとかのメイクさんが書いてるものだ。

 顔を中心にした写真をたくさん撮られる。その上でうーんと考え込んでいる。


「……小顔ってずるくない?」


「ずるいって言われても生まれつきだし……」


「いやあ、褒めてるんだよ?色々とメイクすると映えるから。中性的っていうのはホント良いことなんだよ?男性ってやっぱり男性っぽく成長しちゃうから希少なんだよ」


「中性的って言われるのは、今ちょっと嫌かも……」


 女装云々より声優業界に問題を爆発させたオカマを思い出すから嫌だ。性別の境目を曖昧にされちゃうとあの人を思い出すから嫌になる。冬瀬さんと水越さんは純粋に女装が嫌なのかもと思ってるだけだろうけど。

 それに僕としては男として見てもらいたいから女装が似合うって言われるのも好きじゃない。性自認が確実に男なのに可愛いって言われるのはなあ。

 とりあえず座って好きにさせようと待っていると、水越さんがスマホを見ながらうーんと悩んでいる。その様子を冬瀬さんが覗き込んでいた。


「どうしたの?」


「いや、理想のメイク像があるのにどうすれば良いんだろって悩んでて」


「うわぁ、可愛い子。この子もドラマに出てた子なの?可愛い女の子だね」


「そうなの。やっぱり間宮君はゴスロリかシンプルなワンピースがいいと思うんだよね。あたしの理想はこれ」


「あ、同じ子なんだ。ゴスロリもワンピースも似合ってるけど、高校生くらい?」


「いんや?小学生」


 ……小学生で、ゴスロリやワンピースが似合っていて水越さんが推してる?すっごい嫌な予感がするんだけど。ミスコンへ誘われた時以上の悪い予感。

 冬瀬さんはそのまま、画像の中の子を褒める。


「子役なんだ!でもすっごく顔が整ってるね。将来美人さんになるんだろうなぁ。芸能界ってすごい」


「子役は可愛い子と情熱持ってる子、あとはコネ持ってる子が出てくるもんだからね。この子は可愛くて演技も上手いから選ばれたんだろうけど。間宮君も見なよぉ〜?すっごく参考になるから」


 ニヨニヨと、そんな効果音が聞こえてきそうな声で冬瀬さんは言う。確信したけど、ここで僕が何かを言うのは嫌だ。まだ冬瀬さんには隠しておきたい。

 スマホを操作して、どうやら動画を探しているようだ。世界で一番有名な動画サイトなら六年前のドラマのワンシーンくらい残っているだろう。

 ちょうど見付けたのか、ビジネス街を鼻歌交じりで歩いている見覚えのある少年(・・)の映像が流れる。


「ほらほら、やっぱり歩き方からして可愛いんだよねえ。フリフリの服を着ていても歩き方とかですぐ男の子か女の子かわかっちゃうんだよ。女装するなら動きから取り入れないとね!」


 本当に楽しそうだ。

 すごく参考にした女の子の歩き方を真似した当時の僕を指差して、同じことをミスコンでやれと言ってくるなんて酷い子だ。

 そりゃあ、今でもできるけど。


「間宮君って、こういう動きの訓練とかってしたことあるの?声優ってそういうことも学ぶの?」


「養成所で一通り学ぶんだよ。ダンスとか、舞台での身体の動かし方とか専門用語を一通り。だけど僕は知っての通り特殊なデビューの仕方だからね。僕は習ってないよ。そもそも足の状態もあったから学ぶこともできなかっただろうけど」


「あ、そっか……」


「でも動きなら大丈夫。同じ事務所に舞台俳優出身の方がいるから色々と聞いてみるよ。パフォーマンスの時間も少ないからそれくらいなら女子の動きもできるだろうし」


 冬瀬さんの質問も適当にはぐらかして、隣でお腹を抱えている水越さんは視界に入れないようにして。

 いくつかの動画を見ていく。冬瀬さんは僕だと気付かないままずっと可愛いを連呼している。僕の精神はガリガリと削られていった。なんて酷い仕打ちだ。僕は水越さんに何か嫌がらせをしただろうか……。

 好感度が低いのかもしれない。だからメイクについてアドバイスをしよう。


「水越さん。メイクは結構濃いめにした方がいいよ。遠くの人から見えるようにするならアイシャドーとかも濃いめに引いた方がいい。多分体育館でやるんだろうから照明をガンガン使うんだろうし、光が強いとメイクが薄かったら顔が真っ白になっちゃうんだよ。だからできるだけ濃くしないと意味ないかな」


「あ、それメイクの本にも書いてあった!舞台でのメイクだったら普段よりも厚化粧の方がいいって!」


「そうそう。……これ、そこまで本気でやんなくちゃいけないこと?」


「可愛い間宮君が見たい!」


「全校生徒の度肝、抜いてやろうぜ?」


 それはもう楽しそうに言う二人。

 準備にあまり参加できない分、こっちで貢献しますか。


次も日曜日に投稿予定です。

感想などお待ちしております。あと評価とブックマーク、いいねも。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ