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君に、声を  作者: 桜 寧音
二章 高校生(五月〜)
35/73

4ー2ー3 アニメ制作の裏側で

公表。

 少しばかり困惑して何もかもがフリーズしていたが、再起動を果たした僕はまず率直なお祝いの言葉を告げる。


「ご結婚おめでとうございます、智紀さん。福圓さんも。お二人が付き合ってるって知りませんでした……」


「公表していないもの。お互いあくまでファンと一選手の関係しか見せていなかったし」


 そう答えるのは喜沙さん。

 僕は福圓さんの『宮下智紀事件』も知っているから、智紀さんが好きなことを隠さないのはてっきりそういうネタというか、それを売りにしているのかと思っていたけど全然違ったらしい。本当に付き合っていたということは福圓さんは公共の電波とか世界中に残るインターネットで堂々と惚気ていたわけだ。

 この人に怖いものなんてないんだろうか。暴走特急声優と呼ばれるわけだ。

 というか、例の大告白事件から一切成長していないということなんじゃないだろうか。


「あの。どれだけの人が知っているんですか?」


「ウチの家族と私の所属してる事務所は全員知ってるよ。あと梨沙子ちゃんの事務所の社長と、トモちゃんの球団関係者。それくらい?」


 意外に少ないような。そこに僕が加わっちゃっても良いんだろうか。

 いや、明日には知れ渡ってることだから良いんだろう。ちょっとフライングしちゃっただけだ。

 球団や福圓さんの事務所が知っているのはそれこそ事件のせいで炎上してしまったから同じようなことが起こるリスクがあると知ってもらうためだったんだろう。喜沙さんの事務所は確か喜沙さんの母親が社長を務めているからその流れだろうし。


「意外だったかな?」


「相手は、そうですね。智紀さんと言えばご家族というか三姉妹ととても仲が良いことが有名ですので……。本当の姉弟ではないことも有名ですから」


「結婚を早めた理由はそれもなんだよ。早く結婚しておかないと三姉妹に襲われる。特に喜沙姉と美沙がなぁ……」


「私は美沙ちゃんみたいにアメリカまで追いかけてないわよ?やろうと思えばそっちに拠点を移せるんだからね!」


「ホント、その辺りの良識があるのは千紗姉だけだよな……」


 智紀さんが疲れたように喜沙さんの言葉に答えている。

 喜沙さんを見ればわかるように智紀さんの三姉妹はとても美人さんだとか。というか、妹さんはアメリカまで追いかけていて智紀さんのことがまだ好きなんだろうか。

 それは確かにマズイかも。梨沙子さんの活動拠点はどうやっても日本だし、結婚を早める理由にもなる。


「美沙ちゃんは管理栄養士として智紀くんの食事を担当していまして。千紗ちゃんはトレーナーで智紀くんを担当していましたけど、アメリカまでは来なかったんですよ」


「はあ。なるほど。それで喜沙さんもまだ智紀さんのことが好きなんですか?」


「うん!トモちゃん以上の人なんていないよ!」


「……智紀さん、ご結婚おめでとうございます」


「ありがとう。そんな感じで釘を刺したくて。美沙も流石に結婚すれば大丈夫だと思うからこうやってこっちに戻ってきたわけなんだよ。あっちでは球団の寮に住んでるから防犯対策はしっかりしてるけど、妹にそこまで警戒するのもバカバカしくて。……全く。俺は梨沙子さん一筋だって何回も言ってるのに」


 梨沙子さんの説明を聞いて喜沙さんの発言を聞いて。結婚を決めた理由がよくわかった。

 まだ二十四歳のはずだから結婚するにしても若いはずだけど、早めないといけない理由があるから結婚するんだ。

 なお。一筋だと宣言された梨沙子さんはとても嬉しそうに顔を真っ赤にしていた。凄く初々しい新婚さんだなぁ。


「いつからお付き合いを?」


「俺が高校二年生の時から。だからかれこれ七年は付き合ってる」


「それでも諦めない妹さんと喜沙さんって……?」


「そんな簡単に諦められるわけがないんだよね。私たち三姉妹なんて幼少期に全員トモちゃんに一目惚れだし、美沙ちゃんは物心ついた頃にはトモちゃんがいて当たり前の環境だったから。それが結婚できる相手だったらねえ?」


 なんというか、少女漫画っぽい。いや、実際にモチーフになるほどの人間関係だった。今僕が出演している『パステルレイン』がまさしくこの人たちなんだから。

 この場合、福圓さんって亀倉さんに当たるんだろうか。高校の時に知り合った異性という意味では合致しているかもしれない。


 七年も付き合っていることを世間に隠していた智紀さんと福圓さん凄いな。芸能人で恋愛関係や結婚していることを隠している人は多いけど、このビッグカップルは当分話題になるんじゃないだろうか。

 途中で挟まれた御釜に入った炊き込みご飯とお吸い物の味がわからないほど困惑するような告白だったんだから。


「まあ、結婚すれば私だって美沙ちゃんだって流石に諦めるわよ。……美沙ちゃんは二人が離婚するのを待つかもしれないけど」


「美沙はいつからそんな重たい女の子になっちゃったんだ……」


「え?トモちゃん何言ってるの。美沙ちゃんは昔からああいう子じゃない。自分への告白除けにトモちゃんを使ってたし、トモちゃんが告白されないように小学校から高校まで学校中の女子を支配してたわよ?」


「……そんなことしてたのか?知らなかった……」


 支配って。智紀さんを取られたくなかったんだろうけどそこまでできる小学生女子は怖すぎる。

 独占欲が強いのだろう。多分今も諦められないのは智紀さんの結婚相手が三姉妹の誰かじゃなく他人の福圓さんだからじゃないだろうか。

 そう考えると智紀さんを諦めた次女の方は凄くまともに思える。


「福圓さん、どっちから告白したんですか?」


「わたしからですよ。夏の甲子園が終わってすぐに。わたしとしては気持ちを伝えられるだけで良かったんですけど」


「まさか梨沙子ちゃんが一番乗りするとは思わなかったわー。最大の誤算だったかも。トモちゃんもOKしちゃうし」


「まあ付き合ってるって言ってもお互い部活と仕事で忙しかったから長期休みの数日の休みくらいしか出掛けたりできなかったけど。それ以外は基本電話かラインでやり取りするくらいだった」


 色々と聞けるのは楽しい。帝王は練習が相当ハードだと東條さんも言っていたから本当に会える日は少なかったんだろうな。

 話している間にも料理はどんどんと運ばれてきて、最後のお茶と和菓子が提供されていた。お茶は茶道で認めたようなドロッとした抹茶で、和菓子はお饅頭だった。

 ようやく苦味と甘さを理解できて、高級店と衝撃的告白のコンボは凄いと実感していた。


「明日の何時頃には公表されるんですか?」


「区役所に一番で行って、提出した後に一斉に報告書を出すからお昼前にはわかるんじゃないかな?」


「福圓さん、SNSで発表したりします?」


「しますよ。画像込みで上げるつもりです」


「わかりました。じゃあ僕も便乗します。共演した仲ですから」


 その辺りの確認もして、芸名は変えないのでこれからも福圓さんのことは福圓さんと呼ぶことを決めて。

 帰りのタクシー代まで払っていただいて解散になった。三人は智紀さんの実家に帰っていった。智紀さんはかなりの強行軍だったようで解散する頃には相当眠そうだった。明日もかなりの強行軍だから大変だろうなあ。

 それで打者として試合に出る予定だって言うんだから凄い。あの人の体力は化け物かと、アスリートの体力って規格外だなあと実感した。


 社長と松村さんに帰宅したことを報告してその日は寝た。

 そして翌日。月曜日なので学校に行って三限が終わった時には学校中が大騒ぎになっていた。智紀さんが結婚報告なんて大々的に発表したらインフルエンサーな高校生からすれば飛び付くしかない話題だ。蓮沼君も多田君もヤバイと思ったのかすぐに僕と話し始める。

 福圓さんのSNSは昼休みに確認すればいいかと思って二人の話に合わせる。


「間宮、ヤバイぜ⁉︎あの宮下智紀が結婚だってよ!早くね⁉︎」


「うん。僕も今見た。話題これで持ちきりだねえ」


「声優の福圓梨沙子って誰⁉︎間宮知ってる⁉︎」


「宮下さんが高校生の時にネットで宮下さんのことが好きですって告白した人じゃなかったかな。確か宮下さんの一つ上だったと思う」


「あー、いたなあそんな人!何回か話題になってる人だ!」


 一般人の蓮沼君と多田君にも若干とはいえ知られているなんて、福圓さんのやらかしたことは凄すぎるなあ。今教室中ではずっとこの話題だけだ。いや、教室だけじゃなくて学校中、日本中だろうけど。

 さっきから冬瀬さんと水越さんが騒ぎながらこっちを見ている。二人とも僕が福圓さんと共演したことがあると知っているために話したくて仕方がないんだろう。

 まあ、話せるとしたら今日は無理そうだ。ラインで学校が終わってからが妥当かな。


 この話題が凄すぎて四限はまともに開始できなかった。というか、先生たちも興奮しすぎて授業が始められなかったというのが実態だ。

 昼休みにちゃんと福圓さんの結婚報告におめでとうございますとあらかじめメモ帳に用意しておいたちょっとした長文をペーストして返信して、冬瀬さんと水越さんと三人のグループラインで知っていたと聞かれたので知らなかったと嘘をつく。


 このグループライン、僕のことが知られたからこの前作った。あんまり動かないけど今日はフル稼働だ。そして嘘をつくことも自然にできるようになっていた。これは子役の頃からの僕の生態だから勘弁してほしい。

 家に帰ってからニュースを見るとずっと宮下さんと福圓さんの話題だった。二人の関係とか例の動画とか、もう智紀さんが日本を出国しているとか。


 若干福圓さんが炎上しているけど、祝福のコメントも多い。どれだけ智紀さんのファンだったか知っている人は知っているだろうし、そもそも智紀さんと結婚できる可能性があった女性なんて三姉妹と福圓さんのような関係のある人だけだ。

 一般女性が福圓さんを僻んだってしょうがないのに。


 日本が大変なことになっていても僕は関係ないとばかりに学校の宿題と仕事の台本チェックを始める。

 この次の日。DHで出場した智紀さんが新婚パワーかサヨナラホームランを打って話題になった。あの人、本当にバイタリティが凄すぎる。


次も日曜日に投稿します。

感想などお待ちしております。あと評価とブックマーク、いいねも。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 智紀君出てきたことに驚いたけど、まさか福圓さんと結婚なんて! こういうクロスオーバー大好きです!
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