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君に、声を  作者: 桜 寧音
二章 高校生(五月〜)
29/73

3ー1 校外学習

お台場へ。

 『スターライト・フェローズ』のイベントが終わって水曜日。

 今日は学校行事でお台場に課外学習ということで行くことになった。学校でバスを用意して向かうことに。そこまで遠い場所じゃないんだけど、団体行動を取るならバスで一気に行動する方が教師からしても楽なんだろう。

 僕も足の関係があるからこっちの方が楽でいい。


 最初は学年で一斉に日本科学未来館に行くことになっている。ロボットや科学技術など、最先端の物がたくさん展示されていてどういうことができそうなのかを知ろうという場所だ。

 ここが終われば班活動で、お昼ご飯から好きに行動して四時まで自由行動。四時までに集合場所に戻ってきてその後はバスに乗って帰るだけだ。これが一日のスケジュール。


 班は男女四人で構成されていて、僕の班員は蓮沼君と冬瀬さん、それに冬瀬さんの友達の水越美咲(みずこしみさき)さん。男女半々にするようにって言われて多田君とは一緒の班になれなかった。残念。

 水越さんのことは正直あまりわからない。僕より背が高いスレンダーな姉御肌の人だ。いや、僕が背が小さいだけだろうけど。


 バスの席も班ごとにさせられたために隣の窓側の席が蓮沼君、通路を挟んで冬瀬さんと水越さんだ。お台場までは学校から四十分もあれば着く距離だからそんなに遠いって感じしないし、バスの中もただ和気藹々としてる感じ。


 僕ってこういう遠出をする学校行事は中三の時の修学旅行以来だから泊りがけじゃないイベントは初めてだ。その前までは子役としての仕事が忙しくて全部キャンセル。中二の時の宿泊学習は入院していてアウト。そんなこんなで珍しいイベントだ。

 できたら東京以外が良かったけど、その辺りは言ったって仕方がないか。


「でもなあ。富士テレビかあ」


「何か嫌なことでもあるのか?間宮」


「いや?一応課外学習なのにテレビ局ってどうなのって思っただけ」


「ウチの班はまだまともだぞ?他の奴ら、平気で遊びに行こうとしてるからな」


 皆ショッピングモールとかガ○ダムベースとか、アミューズメントパークとか、足湯とかまともに勉強する気がない。何でウチの班が真面目にテレビ局に行くことになったかというと水越さんがドラマとかのファンらしく、制作現場の一端を見たいと熱望したからだ。

 僕は疲れる場所じゃなければどこでもいいと言ってしまったし、蓮沼君もお台場はいくらでも行ったことがあるからどこでもいいと意見をして、冬瀬さんも行きたい場所がなかったようで水越さんの意見が通った形だ。


 決まってから僕はそこだけは嫌だったけど、決まってから駄々をこねるのはダメだろうということで言葉を飲み込んだ。

 冬瀬さんは僕が声優だから仕事関係の人がいるのかもと察してくれているので苦笑していた。声優の関係者はこの前の吉川アナウンサーが例外なだけでテレビ局にはいない。


 いるのは、「間宮沙希」としての知り合いというか関係者というか。あの局には結構お世話になったからたくさん知っている人がいる。僕の見た目は子役をやっていた二年前からあまり変わっていないのでディレクターとかだとすぐバレそうだ。

 誰にでもだけど、僕が「間宮沙希」だったことは明かすつもりはない。知っている人が確認してきたら認めるけど、当てずっぽうだったら誤魔化すつもりだ。

 そういう意味ではドラマとか映画が好きな水越さんにバレていないことはラッキーだと思う。


「これの後に何か提出って訳でもないから、ぶっちゃけ遊んできて仲を深めてください以上の意味はないと思うぞ?」


「だよねえ。じゃあゆっくり見学しようか」


「もしかしたらドラマの撮影とかしてるかもしれないから楽しみね!」


 蓮沼君の言葉に返した後、水越さんがテンションを上げてそんなことを言う。

 うん、それが一番嫌なんだよねえ。でもそれを言うわけにもいかない。

 ちょっと気落ちしていると、バスの中でカラオケ大会が始まった。歌いたい人が歌う形式だけど、隣から凄い熱い視線が向けられた。

 一応見てみると冬瀬さんが期待したように目を輝かせている。ファンとして僕の歌を聞きたいのだろうか。

 イベントでもファンサービスはするから、それくらいは問題ないけど。


「あー、次歌います」


「間宮、何歌うんだ?」


「『破面ライダー X』の主題歌、『激震』でお願いします」


 担任の先生にそう言って曲を入れてもらう。五年以上前の曲だからバスのカラオケにもちゃんと入っていた。同年代でも結構見てた人が多いし、こんな特殊なファンサービスもないだろう。その意図に気付かず冬瀬さんはアニソンじゃなかったことにがっかりしているけど、この歌を歌うなんて姉さんたちや社長たちとカラオケに行かない限り歌わない貴重な機会なんだけどな。


 水越さんは知っているようだけど、他の女子は知らないっぽい。『破面ライダー』は知ってるけど主題歌は知りません、という感じだろうか。

 水越さんにバレなければいいや。

 男子は知っているのか合いの手を入れてくれる人もいる。


「間宮、特撮好きなの?」


「いや、これと数作品だけ。全部はわからないよ」


 というわけで歌う。かなりアップテンポな曲だけど、そこは声優としての意地で歌いきる。

 これでも野原さんと一緒にミュージカルをやった人間だぞ。これくらい歌い切ってみせる。

 歌詞にもストーリーの伏線が入りつつ、それでもカッコよくて心が熱くなる曲だ。フルで歌うとちょっと疲れるけど爽快感もある。


 途中で男子が「行け!」と合いの手を入れてくれてテンションが爆上がりした。いやほんと、主題歌からキャストからストーリーから完璧な作品だったと思う。

 歌い終わった後、主に男子から拍手をもらった。


「間宮、歌上手いんだな」


「楽器は全然できないけどね。歌はスパルタで習ったよ」


「へー」


 そんなカラオケ大会を挟んで第一目的地である日本科学未来館に着いた。ここからはクラス行動で一階から順に館内を巡ることになった。

 最初に行ったのは人工衛星が撮影した映像をリアルタイムで地球儀のモデルに投射して世界の状況を確認できるというもの。各クラスに一人付いたガイドさんの説明に全員が耳を傾けてどうなっているのか聞く。


 詳しい技術についてはさっぱりだけど、刻一刻と変わる状況に特に男子が目を輝かせる。僕もだけど、男子は皆機械とか未知の技術とか大好きだからね。

 それから数字を用いた未来のシミュレーターによって五十年後の地球はどうなっているのか、街の様子は、乗り物は、といったような漫画の世界のようなモデルを見たり。


 男子が最も食いついたロボットやアンドロイド技術の展示物には興奮しすぎて先生に怒られた。けど技術の発展って凄いんだな。アニメやゲームで見たような近未来の技術に近しいものはこうやって実物として存在しているんだから。

 それから宇宙のことだったり、脳科学を調べる機械がある場所ではちょっとした自由時間が与えられて実機に触らせてもらえた。


 そこで空間認知能力を調べるというものがあったので男子は群がった。「俺はニュー○イプになる!」とか叫んでたけど並びすぎて僕はやらなかった。

 適当に歩いていると冬瀬さんがバスの中でのことを話すつもりなのか近付いてきた。そのことを察したのか蓮沼君も多田君も離れてしまう。別に居てくれてもいいのになあ。

 誰も周りにいないことがわかったからか、冬瀬さんは声優についてのことも聞いてくる。


「間宮君、歌も上手いんだね。作品とかで歌ったことないよね?」


「まだないよ。キャラソンとかのお仕事、もらったことないから」


「もったいないなあ。早く聞かせて欲しいよ。CD出たら買うね」


「気が早いなあ」


 そんなこんなで科学未来館についてはおしまい。お昼ご飯も合わせて班行動になった。

 お昼については女子二人に食べたい物を決めてもらった。僕たちは食べられれば割となんでもいいし、高くなければいいという方針だった。

 向かった場所はショッピングモールの中にある和食屋さん。ランチで学生でも食べられる値段のお店だったのでそこに入る。


 僕は親子丼を。蓮沼君はカツ御膳を。冬瀬さんは天ざるそば、水越さんは天丼セットにしていた。

 天丼セットは天丼にお味噌汁と小うどんが付くという結構ボリューミーなメニューなんだけど、水越さんはこれに決めていたらしい。


「これ、『一人のグルメ』に出てたんだよ!お台場に来たなら絶対食べようって思ってたんだ!」


「俺のカツ御膳より量多くね……?」


 蓮沼君が運ばれて来た物を見てそういう。僕は結構少食だからあんなに入らないな。親子丼で十分満腹になった。

 どうやら名古屋コーチンとその卵を使っていたらしくて、絶品だった。食べる前に写真を撮っておいて良かった。今度姉さんと鈴華ちゃんと来よう。


「間宮君、写真撮ってたけどSNSに上げるの?」


「いや?美味しかったから姉さんに教えようと思って。水越さん、美味しいお店教えてくれてありがとう」


「どういたしましてー」


 冬瀬さんが僕の身バレを懸念したのか聞いてくるけど、そこまで熱心にSNSは使ってないし、この写真を載せるつもりはない。

 水越さんがどうしても来たいと言っていたのでお礼を言う。食べ終わったら富士テレビだ。

 あーあ、行きたくないなあ。


次も日曜日に投稿します。

感想などお待ちしております。あと評価とブックマーク、いいねも。

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