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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

【完結済】兄をなくして一年グジグジしていた公爵家の跡継ぎは、婚約者の第4王女が俺と婚約破棄して勇者の婚約者となるらしい……俺は勇者を倒してでも愛する婚約者を取り戻す〜実はその勇者は俺の事だったらしい

作者: そう

 拙作を読んでいただいてありがとうございます。カクヨムでも連載させていただいているのでよろしければ、応援していただけると励みになります。

 心より敬愛した人がいた。

 しかし、一年前、突如として敬愛していた兄は死んだ。

 次期当主である兄を失ったサマセット公爵家は、消えかけた灯の中で揺らめく炎ように不安定でどんよりとした何とも言えない陰鬱な雰囲気に包まれている。

 俺は王都にある貴族学園を抜け出して、兄達の名前が刻まれた慰霊碑に花を供えに来ていた。一年もたったという事もあってか花を供えに来る人々も、日に日に減ってきていることをヒシヒシと実感していた。

 

「すまない兄貴……俺が……俺がビビってさえいなければ……俺を逃がすために……」


 俺は慰霊碑の前で膝をついて泣き崩れていた。

 燦々と照り付ける太陽を遮る何かが、俺を覆った。

 

「泣き喚いている暇があるのなら次期当主候補として励まぬかァ! この愚か者めがァああああああッ!!」


 俺は女軍人の女性とは思えない怪力によってぶん殴られた。

 体が石畳の上を数度バウンドする。

 その様子はまるで鞠のようであった。

 俺を殴った軍人の方を見上げた。

 そこには血を分けた姉が「あきれ返った」と言わんばかりの表情と態度でオレの事を見下ろしていた。


「ね、姉さん……」

「貴様は何をやっている? 学生の本分は勉強であろう? 兄の死を嘆き悲しむ事が兄の望んでいることだと本気で思っているのか? 少なくとも私はそうは思わない……一番アルトスに怒りをぶつけたいのは、義姉上あねうえの方であろう」

「……」


 俺は黙っていることしかできなかった。


「シークザヴァール様そろそろお時間です」


 周囲にいた軍人が、姉に声をかけた。


「フム。そうだなではなアルトスまた顔を見に来る」


 そういうと軍服の上から羽織ったマントを翻して、従者数人を引き連れて去っていった。

 

「あーあ、いいのお姉さんにあんなそっけない態度をとっちゃってさ……」


 どこかに隠れていたのか一人の少女がスタスタと、歩いてきた。

 決して目立つような派手な服装ではないが、ベージュブロンドの髪を結い上げており派手ではないが、目を引く容姿をしている。


「お前には関係ないだろ……」

「あはははは……まぁまぁそんな事言わないでくださいよ……今日は私が貴方の護衛何ですよ」

「はぁ……好きにしろ……俺は学園に帰るお前はその間散策でもしてろ」

「へいへい。わかりましたよ魔導貴族の次男さん」


 彼女はそういうと建物の窓や壁に足をか壁をよじ登っていく。まるで蜘蛛のように俊敏に屋根の上に辿りつくと、そのまま駆けてあっという間にいなくなってしまった。


「全く兄さんは何をするつもりであいつ等を召し抱えたのか……」


 俺は愚痴を言いながら愛馬に騎乗し、学園に向けて馬を飛ばした。



 ………



 ……



 …



 石造りの薄暗い密室の部屋の中、気品を感じる青年が一人。硝子の筒を手に、薬品を混ぜ合わせている。

 室内はジットりとしたインキで淀んだ空気が湿り気と、独特の臭気を帯びており馴れていない者が、この部屋を訪れれば顔をしかめる……そんな匂いだ。


「アルトス!! また授業をサボってこんなところで陰気なことしてないで、早く授業を受けに行くわよ!!」


 婚約者の第四王女アリシア・ヴァ・リンスターが俺を呼びに来たようだ。

 燃える焔のような赤い赤い長い赤髪を、ストレートヘアーとして美しく纏まっており暗いところは、暗く明るいところは煌めく炎のように明るかった。

 それでいて瞳の色は灰青色の鈍くしかし、美しい大空のような青い色をしていて、女性としては高身長でありながらも卵型の顔は小さく、その手足もスラリと長く、まさに絶世の美女と形容するべき美しさを感じる。


「はぁ。アリシア僕は、兄さんが死んでから分かったんだ。これからは魔術の時代じゃ人だって」

「今研究しているカガクがそれを解決するっているの?」

「あぁそうさ。俺は魔術と言う限られた人々のみが行使する事ができる奇跡を排除して、万人が平等に扱われる世界を作るために、神々が我々に与えた問題と言う名前のこの世の真理を探究する神学……それが科学だよ」

「言いたいことは分かるのよ? 魔術を使える魔術師は主祖しゅそと呼ばれる青血ブルーブラッドを受け継いできた。我々貴族の血脈やその血を分け与えられた従祖じゅうそである騎士などの下級貴族だけ……それでも私達は困ってないじゃない? カガクでできる事は、魔術でできる……ならそんな面倒なことをしなくても魔術でいいじゃない私もアルトスも魔術を使えるんだから……」


 彼女の考えは、この国では一般的なものだ。

 魔術とは、体内の魔力を用いて世界に干渉する技術を言う魔術を使えるものの多くは貴族または、貴族に準ずるもののみであり神官たちが用いる祝祷術しゅくとうじゅつは、神々の恩寵によって発動される者だとされており別の技術扱いされている。

 特権を守るためにも僕の様な化学者は忌み嫌われるのかもしれない。


 「昔の人は言いました。魔法の村の失敗は、皆が勤勉でなくなったからだと……僕は残念ながら勤勉ではないのでね。僕が楽をするために、みんなに楽になってもらう回ってくれば、僕が楽になるんだからその為の最小限の努力を最大限するだけさ」

「そうは、言うけどアルトスは、それで食べていけると思っているの?」

「ぐっ」


 図星を疲れ、てつい声が漏れる。


「まぁお兄様が戦死されていていて何か現実逃避したいと思って科学に打ち込んでいる……それは私も皆も分かっているの……ケドもうあの悲劇から一年……その一年もたっているの……お兄様のことは残念だけど皆もう前を向いて歩きだしているのよ! 貴方も何時まで泣いているつもり? 私との婚約だってもう危ないところまで来ているの! ねぇ私の事をちょっとは考えてよ……」


 彼女の秘めた思いを打ち明けられ俺は何も言えなくなっていた。


「ごめん……俺はまだ駄目そうだ……ケド間違いなく前を向いていくつもりだ」

「そう……貴方が一日でも早く立ち直ってくれることを祈っているわ。知っていると思うけど……近々神殿が勇者を発表するらしいの……だから最悪の場合あなたの婚約者から私は外されるかもしれない……だから……いえ……なんでもないわ……」


 そういうとアリシアは寂しそうな表情を浮かべ、研究室を後にした。


「馬鹿だな俺は……」


 俺は自嘲気味に笑った。


「何やってるんですか? 先輩」


 小馬鹿にするような、何処か呆れたような口調で俺を窘める声がした。


 声のする方を見ると研究室に隣接した資料室と言う、名前の倉庫から一人の白髪の小さな少女が表れた。少女の手元には俺が家からかっぱらってきた。少女の身の丈ほどもある大きな片手用の長剣が握られていた。

 少女の名前はメザン・レーナこの学園の二年生であり、この学園においては基礎学科を僅か一年で終了した才媛であり、我々レスター教授率いる探究科の新進気鋭のエースだ。


「聞いてたのか……」

「あははは……す、すいません……珍しいですね婚約者さんと喧嘩なんて……」


 謝罪の言葉を口にしたものの話題を、俺とアリシアとの関係に話をすり替えてきた。


「お前には関係ないだろ……」

「またそんな事言っちゃってぇ~~」

 

 俺の少しぶっきら棒な物言いに対して、年下の男の子や弟などの身近な年頃の男子を弄ぶ事を楽しむ、そんな女の表情を浮かべてまるで、ニヤニヤとチェシャ猫のように笑った。


「うっとおしいぞ!! と言いうか付与魔術は君の専門分野だろう? 解析を初めてもう半年そんなにこの剣の付与魔術は解明できないのか?」


 すこしだけ不機嫌なことも相まってキツイ言葉をかけてしまう。


「……すんません。最近はダンジョンや遺跡を持ち込んでくる鑑定品や、フィールドワークが多くて、中々先輩からの依頼品に時間使えなかったんですよ……それに大まかな効果は知ってるんですよね?」

「あぁ……身体の力強化と形状変化それがこの剣の能力だという……しかし近年ではただ良く切れて頑丈なありふれた性能を持ったた。だただ古いだけの魔剣……しかしこんな剣でも先祖伝来の家宝らしい。君ならこいつの不具合を治せると思ったのだが……」


 ハァとため息を吐くと彼女のデスクに座り、俺が預けた長剣を机に置いて複数の道具を机に並べた。


「まぁヒマな時に見てはいるんですけど……何分古い魔法ルーン文字ですしから、しかも何者かが大魔術でもかけたようで魔法ルーン文字も消えかかっています。しかも魔法ルーン文字もかなり崩してますからね~~今まさに古文書とにらめっこしてるので、もう少し時間ください」

「まぁ君が言うならそうなんだろうな……」


 俺はそう言いながら古の錬金術師がしたためた書物、その写本を開いていてその生涯の研究結果を確認していた。


「……まぁでも正直私は、この剣の封印を解く気にはなれませんけどね……」


 ボソっと、つぶやいたため俺には聞き取ることができなかった。


「幸いなことに今週は、神殿からのお仕事の依頼が入っているのでずっと王都にいれますので、空き時間で解析は進めておきますよ……」


 そう言いながら彼女は飴を嚙み砕いた。


「いいのか子爵の俸禄だと飴って高級品だろ?」

「いいんですよ。南大陸が魔王の手に落ちたとはいえ、まだ買えないことはないので……それよりも一刻も早く御伽噺フェアリーテイル救世ぐぜの勇者を神々が遣わしてくれる事を祈るしかないですね……」

「勇者ねぇ……」


 勇者それは神話と人間の時代の間の頃。

 魔王と呼ばれる悪神共の寵愛を受けた魔族の一人が、人類と争い神々の寵愛を受けた勇者と呼ばれる人類を救済する者にして神々の御剣。

 古の勇者は魔王を打ち滅ぼした後力尽きて、その身体は空に浮かんだ星となった。そして空に浮かぶ月が増えた。

 今でも紅月を見れば勇者の紋章である、不死なる鳳に剣を重ねたシルシが見える時があるという。


「……本当にいたのか?」

「まぁその気持ちはわかりますが……神殿はそれを歴史としていますし我が王国は、勇者を始祖とした王国ですからそれは、流石に不敬に値しますよ……まぁ公爵であれば、不敬罪もある程度は許されるでしょうケド……」

「太祖アルテュールの血脈に連なるという意味では、我が公爵家もそれは同じだ」

「まぁそれはそうですけど……公爵家の役割は取り込んだ国の旧王族や、王家が断絶してしまった場合の予備の意味合いが強いですからね……まぁ現在では宮廷三公がいらっしゃいますからね……」

「太祖の血の濃さや血統の古さで言えば、現王家は血が薄いからな……」

「まぁ千年前の事ですから眉唾ものですけどね」

「そりゃそうだ」

「じゃぁ私は解析を続けるので先輩は授業でも受けてきたらどうですか?」


 一瞬思考を巡らせる。


「それもそうだな……と言うかお前授業はいいのか?」

「私は天才児ジーニアスですから一年で基礎科目など諸々全て点は稼ぎました……まぁ体力に難があるので体育だけはダメですが……」

「その方が人間らしくていい……じゃぁ俺はメザンの勧め通り授業を受けに行くよ」

「えぇそうしてください。その方が気が散らないので……」

「はははは」


 俺は後輩のメザンの提案に乗って研究室を後にした。


「全く人の気も知らないで……仕方ない私はこの魔剣の封印を解くとしましょうか……全くなんで私がこんなことを……アリシアさんと先輩には大きな貸しが、出来るみたいですね……ね? 魔剣さん」


 メザンは棒のついた飴玉を噛み砕いた。飴の棒はくの字に曲がっていた。



 ………



 ……



 …



 俺は体育の講義に出ていた。体育とは言ってもスポーツをするわけではない。馬上での戦闘訓練や、剣や槍、弓などの武具の扱い方や武装して行う走り込みなどを行うそれが、この世界の体育であり貴族は指揮官としての能力を身に着けるそれが、貴族学園の役割である。

  

「せりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああッ!!」


 俺は振りかぶった木剣を振り下ろす。

 しかしガタイのいい大男が大剣で俺の長剣を防ぐ。


「フンッ!」


 大男が唸ると木製の大剣で俺の木剣を弾くと、そのままタックルをしてくる。

 

「うぉぉぉぉおおぉおおおおおおおッ!!」

「風ようねれ!!」


 風を操る魔術で小規模の上昇気流を作り、出し大男を吹き飛ばす。

 

「ぐッ!!」


 魔術を使えるのは貴族や聖職者に一部の例外のみであり、咄嗟に仕えるかどうかとは、別である。

 俺は剣を下段に構えながら走って、大男に近づいて攻撃の機会を伺う……。

 大剣を横にしてまるで盾の様に、防ぎつつ様子を窺っているようだ。

 上昇気流を作り出してはいるものの、決定打になってはいない。


 今だ!!


「消えろ!!」


 剣を振り上げて構えながら上昇気流の中を駆け抜けて、消去の呪文で魔術の効果を打ち消し、走り抜けスキを狙って必殺の一撃を叩きこむ。

 着こんだ防具の隙間へ鋭い一撃を当て、続けざまに火炎魔術をお見舞いする。


「よくやったな……これで剣の技能も上になったこれで授業に参加する必要もない研究に打ち込めるぞ」

「ありがとうございます」


大男……教師は嫌味を言いつつも俺に賞賛の声をかける。


「全く 上 の成績は卒業を保証する成績だがもっと上もある……折角なんだから器用貧乏オブオールトレイズじゃなく、万能者ユニバーサリストを目指してほしいんだがな……」

「ははは……すいません……俺は科学者志望なので卒業して領地を修める事が、出来るだけの能力があればいいんですよ……」

「科学……あぁミッシェル教授の……そうかじゃぁ細かいことは言わない……たまの気分転換程度でもいい他の授業に出てみなさい……」

「ありがとうございますそうしてみますよ……」


俺は休憩のため運動場の隅に移った。


「珍しいな? 研究バカのアルが剣術だなんて……明日は槍でも降るのか?」


 短髪の好青年と言ったいでたちの男が声をかけてきた。


「ウォルト、君こそ珍らしい……君が剣術の講義に出ているだなんてサーベル馬鹿が……今日は馬上訓練じゃないぞ?」

「言ってくれるじゃないの……確かにサーベルは馬上などの足場が、不安な場所での戦闘に向いているが、地上でだって戦えないわけじゃないんだぜ?」

「まぁ君の場合はそうだろうな……」

「馬上戦は貴族の花形だからな」

「おうよ! まぁ上級クラスに最初からいるアルトスには言われたくない」


 貴族と言ってもその立場はピンからキリまで存在する。

 絶対的な支配者である王、公爵、侯爵、伯爵。上位者に従う子爵、男爵、騎士爵、があり子爵より上を本物の貴族と呼び、上級クラスへの無条件参加資格を持つのは伯爵からであり、男爵や騎士は貴族ではあるのの格下に見られる事が多い。


「それもそうだな……馬上に乗る機会事態、騎士爵にはあまりないだろうかな……」

「そうなんだよな……馬って高いし何より魔族との戦闘で、農耕馬だって徴発されてしまう……しかも人間10人分の扱いだ!! 皆馬の方を喜んで差し出す」

「馬がいれば農業が楽になるからな……先ずは人の役に立つ研究から進めよう!!」

「お前の言うカガクが本当に実現するならそうしてくれ……今年でもきついんだ……これ以上税金が引き上げられれば、民は飢えて死んでしまう」

「わかってるよ……」

「できれば王に伝えてほしいもんだよ次期公爵様……」

「ウォルト!」


 今の発言が流石にまずい事ぐらいは彼も理解しているが、念のため釘を刺した。


「わかっている……お前の前でしか言わない……」

「ならばいいんだが……」

「俺はそろそろ行くよ……」

「おう、そうか頑張れよ」

「……あぁ……」



 ウォルト……彼と別れて思考を巡らせる。


 勇者そいつが表れれば、民は世界は救われるのだろうか? 

 例え愛しい婚約者が失われたとしても、受け入れなければいけない事なのだろうか?


 俺は亡き兄に質問を投げかけていた。



 ………



 ……



 …

 


 一週間後――――。

 神殿による勇者の発表の式典の当日俺は、招待客の一人として会場の中に潜んでいた。

 この一週間は剣を振り魔術を使い心身を鍛え上げてきた。付け焼刃なこと位は分かっているだがしかし、俺にだって譲れないものがある……兄が死んだ今。俺が守らなければいけないのは、家族と友だ。

 周囲には王族や公爵や侯爵に、他国の大使や神殿長などが座っており、席としては一等席と言って良く、落ちぶれたとは言え大貴族である公爵。流石の家各があった。 

 

 流石に武装は許されなかった。理由としては、当然ながら王族がいることに加えて、他国の王から任命された王の名代である大使がいるため、上級貴族の特権である帯剣の許諾も許されない。そんな特別な場それが勇者の発表式であり俺は、出たくもなかったのだが父は床に臥せ祖父は、年のため長旅ができない体となっているため代理として、俺が来るはめになった。

 俺は思わず「はぁ……」と溜息を吐くと、来客の世話をする神官の一人から水を一杯もい緊張からか、上がってくる胃酸の酸味を誤魔化した。

 

「先輩いらっしゃってたんですね……」


 するとこの場に似つかわしくない、知り合いの声が聞こえてきた。


「メザン!! どうして君が?」

「あははは……まぁ最近の研究が認められまして……それで招待されたんですよ……まぁ仮にもホンモノの貴族である子爵家の娘ですから、格はまぁギリギリですが……まぁ先輩のお力にはなれると思いますからね? 知り合いの少ない私を邪険にはしないでくださいよ」


 メザンは、片手には布で覆われた杖の様な長い物と、ドレスを身にまとっておりこの場で数少ない学生という事もあって、俺と同じく浮いていた。その申し出は俺にとってもありがたいものだった。


「もちろん後輩を邪険に扱う事はないよ……」

「それはよかったです……私のプレゼントを喜んでもらえそうですから……」

「もし? サマセット公爵次期当主のアルトス・ヴァン・リングスター様ではありませんか?」


 声をかけてきたのは、眩いほどに煌めいた黄金を溶かした様な長い金髪に、紫がかった浅い青色の大きなクリクリとした瞳を持つ、人形の様な整った顔立ちをした正に、傾国の美女と言った見た目をした長身の美女が声をかけてきた。


「貴女は……」

「もし分け御座いません例え名乗ったところで私の名は、知らないでしょう……フェイ・アンダルシアと申します……神殿で巫女をしております」

「アンダルシア……聞き覚えのない苗字ですね……先輩はご存じですか?」

「知らないな……」


 フェイはクスクスと上品に笑うと、フェイはその由来を話し始めた。


「古代語で、広大な農地を意味する言葉ですので、恐らくは統一帝国時代の豪農や貴族だったと思われますが、何分資料などもないので眉唾ものですが……私への神殿からの信頼もありまして、勇者を発表するこの場にご招待いただきました……見てみたいお方にも会えましたので、ではまたお会いしましょう……メザンさんとアルテュール《・・・・・・》さんも……」


 そう言い残すと怪しげな少女は、その神秘のヴェールをより分厚くして去っていった。


「フェイ、フェイ・アンダルシア……う~~ん何処かで聞いた事がある気がするんだけどなぁ……」

「過ぎたことはどうでもいいじゃないか……もうすぐ勇者様のご尊名の発表式が始まる戻ろう……」

「それもそうですね」


 他国の来賓のがスピーチを終えて、どうやらアリシアのスピーチの順番が回ってきたようだ。


「セントラス王国王女アリシア・ヴァ・リンスターです。ご来賓の皆様本日は我が王国の太祖アルテュールと、同じ女神の使徒である勇者降臨の発表式典にお集まりいただきありがとうございます。私も今だ学生であり皆様方のお力に比べれば、大変つつましやかな者でございますが、本日女神の仮装をさせていただき勇者様をご案内する名誉を賜りまして、誠に感激しております……では神殿長並びに父である国王が素晴らしいお話をしてくださると思いますのでどうかお楽しみにしてください」


 そういうと壇上からアリシアは降りた。


 やるなら今しかない……手洗いのために離席し短剣を胸ポケットから取り出した。


「……皆の者勇者とは創世の神ステイシアが自らの使徒と定めたただ一人の英傑を指す。そのものは無尽蔵ともいえる精霊と同格の尽きない魔力に、何人たりとも気付付けることの叶わない鋼の如き肉体を持つという……皆に問いたい勇者とはどうあるべきかと!! 私は心優しく愛のために戦う者が相応しいと思っている……」


 俺は脇にいあるドアからではなく正面にある、大きな儀式用の木戸を勢いよくバンと開けた。

 

「な、何事だ!!」


 護衛の神官戦士と、陛下の護衛に来ていた近衛兵ロイヤルガードが、正面にいる陛下や神殿長を守るように、立ちふさがった。

 先頭にいて指揮しているのは、俺とそう年齢の変わらない美青年で、女顔の優男と言った風貌であり、白をベースとした鎧に金の装飾を施している所から考えても、高位の戦士であることが容易に視察できる。

 

「あ、アルトス!!」


 婚約者のアリシアが俺の名を叫んだ。


「アルトス? あぁ……公爵家の……フン! コイツは俺が相手する皆は、さがってろ!!」

「し、しかし相手は……」


 従者の兵士が、俺の前で相対した美青年を窘めるように、声を上げたが「黙れ!」と一言発した瞬間。

 威圧とでも表現するべきプレッシャーに襲われる。

 緊張感とでも言うのだろう……意味もなく動けば、それが死に直結するそんな究極の選択肢が無数に存在し、悩めば悩むほど追い詰められていくようなゾクゾクとする悪寒が、背中を走り抜けた瞬間。


 刹那――――。


 美青年が動いた。

 不味い! 何か行動をとらなければ……用意していた短剣を逆手に構えて、防御の姿勢を取る。しかし俺の行動は、一瞬遅かったようだ。

 

 カキン!! と言う甲高い金属音を立てて、俺の短剣は弾かれてしまった。


「チッ!!」


 俺は唯一の得物を失ってしまった。もう勝負はついたも同然……だが俺は諦めるわけにはいかない。

 俺は彼女を笑顔にすると約束したのだから!!

 メイスや剣を持った神殿戦士や近衛騎士が、俺を取り囲むよう包囲していく……。

 獲物があればこの状況を打開できるのに……。

 

「先輩、預かっていた魔剣ですお返しするので使ってくださぁぁあああああい!!」


 メザンが投擲魔術を使い、剣を砲弾として射出した。その速さは、鳥のように早くそれを苦も無くつかみ取り、そのまま艶の無い黒い鞘から白銀の鋼刀身を抜き、鞘から素早く払うと剣を構えて戦闘態勢を取る。


「ありがとな」

「私の事フッたんだから王女こんやくしゃぐらいモノにして見せろぉぉおおおおお!」


 場違いなセリフを、メザンは叫んだ。自分を出しにしてアリシアに、俺の目的を明確に伝えるためだ。


「ひ、人聞きの悪いこと言うなよ……俺は婚約者を選んだだけだ! 付き合わせて悪かったな……俺も頑張るからよ……ここから先は俺の戦争だ!! お前はこれ以上関わるな!」

「えぇ先輩……男の意地に水を差すような野暮な真似はしません。それがいい女ってやつですよ」

「言ってろ……」


 魔力を流すと剣が淡い光を放ち、刻印された魔術が発動していく。

 【身体能力強化】や【硬化】と言った、一般的な魔術が発動するだけだ。


「ほう魔剣か……幾つもの呪文を魔術文字で刻む事によって、より素早く強力な魔術を行使する事ができる剣士にとって最上の獲物……よもや伝説のサマセットの魔剣を目にできるとは……」

「そこをどけ神殿戦士!! 用があるのはアリシアと勇者だけだ!!」

「それは出来ない相談だ! 俺は神殿と国から認められたエリートである聖騎士パラディンにして、神に選ばれた者だからだ!!」

「くッ!! 貴様が勇者か!」

「フンそれはどうかな……こちらも全力でいかせてもらう!」


 手に持っていた槍の長さが変化し、長槍から短槍へと変化した。


「そちらの武器も魔剣……否。魔槍と言うべきか……」

「その通り、この槍の柄は周囲の木々を殺す魔の木……その中心を削り出し加工した一品だったのだがこの魔槍は、柄が未だに生きていて魔術で操作する事によって、長さが変化する文字通りの魔槍でねこんな使い方もできる……」


 嫌な予感がする。


「守りの盾」

「芽吹け! 悪魔の木よ! 我が宿敵を打ち砕け!」


 刹那。

 槍の柄がウネウネと触手の様に蠢いて、意思を持った矢の様に俺を追尾し始める。


「生きているとでもいうのか!!」

「その通りこの魔物の木は生きているのだ!」

「チッ!」


 俺は魔剣に刻まれた魔法ルーン文字の一つ【飛刀ひじん】を発動させ、直剣で斬った直線上に斬撃を飛ばし、無数の根っこを切り飛ばして、相手の攻撃を耐え忍ぶ。

 

「燃えろ!」


 魔術を使い魔物と化した木の根を焼き払う。


「チッ! 根よ汝の自由は終わりを告げた」


 魔槍の固有能力を解除する聖句キーワードを唱えると、触手の様にうねり出現していた木の根っこが見る見ると、収束していき元の蔦をよじって作った縄の様な槍の柄に、戻っていった。

  

「もう終わりか?」

「あぁ……貴様がやるやつだという事は、十二分に分かった……盾と剣を持ってこい」


 従者に呼びかけ持ってこさせたのは、その実が隠れるほどの大盾と大剣の様な極太の片手剣であった。


「何だそれは……」

英雄病フィジカルギフテッドって聞いたことあるか?」

「……」

「簡単に言えば身体能力が、極めて高い状態にある症状を指す特異体質で、筋肉の一本一本に至るまで、魔力回路が行き渡っているいる特異体質であり、大飯喰らいのお荷物ってわけだ……でもな戦乱の世となれば話は違う……俺みたいな奴にとっては大剣は片手剣ほどの重さしかないこんな風にな!」


 鋭い斬撃をすんでのところでヒラリと躱し、魔剣の能力【飛刀ひじん】で斬撃を飛ばすが、大盾で防がれてしまう。


「なるほど……身体能力強化その恩恵を最大限に受けるという事か!」


 大剣を軽々と片手で振う。その攻撃を両の腕で魔剣の柄を握り締めて、足腰のバネを使って何とか弾き返したり、魔術で盾を作って何とか防ぐ。

 しかし何度も攻防をしているとミスをしてしまい、身の丈ほどもある大盾による突進や大盾で、殴られたりしてしまう。

 顔面を殴られてしまった衝撃によって、軽い脳震盪を起こしてしまい意識が混濁する。


「ぐッ!」

  

 横っ腹に強烈な熱さを感じる。違和感を覚えて、腹に手を当ててみるとヌメッとした生暖かくニュルニュルとした、感覚を指に感じる……指を見てみると赤い血液が付着しており、熱さの原因を悟った。

 

 腹を裂かれたのか……。


 白亜の大理石の上に敷かれた赤いカーペットを、口や鼻と言った傷口から滴り落ちる赤い鮮血が汚す。


「アルトスぅぅううううううう!!」


 アリシアの絶叫する声が聞こえる。


 体が暖かい何かに包まれた。炎が傷口を焼くように傷口を炎が包み見る見ると、傷口が治っていく。


「め、目覚めやがった……神殿長コイツは本物の勇者の能力ですよ……俺は伝説の幕開けを目撃しているんだ新たな英雄譚の幕開けだ」


 俺は血の混じった鉄臭い唾液を「ペッ」と吐き出し、俺を見下ろす聖騎士パラディンを見上げた。                                                

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                           

「俺が勇者? そんなわけ……あっ、ぐッあ、あぁぁぁあああああああああああッあ、あ、あぁぁあああああああああ、あ、ぐぅわぁぁぁぁああああああああッ!!」


 俺は急に蹲り声をあげて痛みと苦しみのせいで、頭を押さえ悶え苦しむ虫の様に、不気味な挙動で動き顔や頭を掻きむしり始める……爪が立っているせいか血が流れるが即座に炎が身を包む。しかし炎が焼き治すしかし、直ぐにまた搔きむしる。

 肩で息をする。疲労困憊と言う状態だが強靭な精神力で立ち上がり、長剣を握り床に突き刺して杖のようにして立ち上がると、誰の目から見ても明らかなほどの疲労困憊な状態でありながらも、精いっぱいの虚勢を張ってカラカラと笑うと啖呵を切る。


「ハァ……ハァ……はぁ俺は勇者になんてなりたくない!! だけど兄貴の命をもらっただからその価値ぐらいの仕事はしてやるよ!! 来いよ偽物!! 俺は救世主なんて器じゃないけどよぉ……お前よりは勇者やってやるからッ!! 俺の女に手を出すな!!」


 刹那。

 強烈な魔力が体の中から溢れてくる。

 俺ようやく思い出したよ……自分に掛けていた呪いが解けたから一年前のことを全て思い出した。兄さんが庇ってくれなければ、あの戦争で死んでいたのは俺だった。俺が死ぬハズだったんだ……全ては神殿のシナリオだったんだ。

 俺と兄は勇者の力を不完全ながらに受け継いでいた。俺には超再生の能力を、兄は精霊の如き無制限の魔力をしかし、そのままでは完全な勇者ではなく不完全な存在だっただから、神殿とセントラス王国は一計を案じた。

 完全な真の勇者とするために、二人の人物の能力を一つにまとめる計画だった。

 神殿側としては剣のシルシ……聖印クレストを持つ、長男であるケイこそ勇者にふさわしいとした。

 王国は鳳の聖印クレストを持つ、次男アルトスの聖印の能力で長男ケイを捕食・同化する事で、安全に二つの聖印を統合できるとした。

 そして教会のプランが採用され戦争の最中、俺は兄と同化するハズだったしかし兄に意識の主導権を、譲られることで俺は生き延び二つの聖印クレストが合わさった。勇者の聖印を持つただ一人の人物勇者となったのだ。

 

「はッ!!」


 魔剣を横なぎに振うと、先ほどよりも大きく強大な斬撃が出現し風の衝撃破が、聖騎士パラディン達を吹き飛ばす。


「焔よ連鎖し爆ぜろ」


 瞬間無数の小規模な爆裂術式が展開され、周囲を埋め尽くして爆発が連鎖していく。


 強烈な爆風が幾つも起こり、多少の粗後に慣れているメザンでさえも何とか立っているような状態だ。


「これが神々の娘である精霊の如き無尽蔵の魔力……」


 メザンがそうつぶやく声が聞こえた。


「おい聖騎士! 俺の婚約者は貰っていくぞ?」

「抜かせぇ!!」


 不可視の腕がアリシアを掴み俺の両腕の上にやさしく載せる。所謂お姫様抱っこと言われる状態で、抱きかえていた。


 一連の騒ぎの首謀者ともいえる神殿長は。何とか立ち上がると大きな声を張り上げて高らかに宣言した。

 

「実に見事だ! ウィリアム、勇者アルトス実によい模擬戦であった……彼の救世主誕生の際には、大箒星が現れたと言う。だが此度は、神々からの天啓が巫女に降りた。この者セントラス王国サマセット公爵家、次男アルトス・フォン・リングスタッドが救世の勇者であることをここに宣言する!! 此度の模擬戦で民も貴族も勇者の実力のほどは分かったでしょう……他の方々も文句はないですね?」


 と白々しく宣い。他の神殿長を牽制した。

 王都にある聖ヴァレリアン大聖堂の大広間に設けられた壇上の上に俺は立っている。それを取り囲むのは、大貴族や皇族それに司祭達権力者だ。壇上の中央に立つのは、禿頭の神殿長だ。 

 すると野太い男の声を中心にした歓声があちこちから上がる。 


「是非とも魔王を討伐してもらいたい」「憎き魔王に、これで対抗できる」とか、無責任な事を言っている。 

「では、アルトス殿には勇者の証を見せていただこう大聖印グランクレストを!!」 


 神殿長の言葉を合図に俺は、右手の甲の聖痕を掲げる。

 燃ゆる炎を背景に、両翼を広げた鳳の体を貫くような十字を重ねた意匠の複雑な紋様が碧く輝き空に大きく投射される。 


 「おお」と唸るような人々の歓声が聖堂に響く。

 サクラが白々しい。

 

「これが伝え聞く我らが太祖アルテュールの大聖印と同じ物か……」

 

 と老貴族が呟く。 


「あぁ。凄まじいこれが勇者の気迫か」 

「サマセット公爵家と言えば、名家じゃないか……」

「と言うことは、勇者様も、元々優れた御人なのか?」 


 と噂をする貴族や大商人の声が聞こえる。

 神殿長と副神殿長が今回の決闘騒ぎにフォローを入れる。


「これにて、お披露目を終了する勇者殿のお言葉は、また別の機会に行います」


 俺は、勇者から婚約者を取り戻すつもりだったのだが、自分が勇者であり兄が死ぬ原因であったことを思い出した……俺は勇者なんてたいそうな物には今はなれないと思う。我欲の強い俺にはきっと無理な事だ。だから俺は……勇者になんてなりたくない。


『全く魔剣の扱いがなってない上に優柔不断な勇者ヒトですね……ケイに頼まれたので面倒ぐらいは見てあげましょう……』


 もしかして、この魔剣って意識を持った武器インテリジェンス・ウエポンなのか?


『私以外誰がいるというのですか?』


 コイツ俺の思考が読めるのか……


『はぁ……詳しい話は後でしましょう……それまで【念話】はこちらからはしないでおきます』


 そうですか……


 客間の様なところに案内され皆椅子に腰かける。


「アルトス殿。貴方は、勇者として覚醒められた……その責務を果たしていただきたい……貴方の兄君を殺してしまったのは神殿と王国と言ってもいい……しかし、その怒りを人類にまでは向けないでいただきたい」


 老司教は、憂いを持った眼差しを向ける。 


「それは、人類のためですか?」 


 アルトスの言葉に、周りの司祭達は、驚きの表情を浮かべる。 

 余程驚いたのであろう。このような事で本心を晒すとは、教会と王宮は、魑魅魍魎の巣窟だと聞いていたが油断していたのであろうか? 


「もちろんだ。もし気が済まないのであれば、私を殺してくれてもいい……」


 神殿長はそういうと、首を切り落としやすいように襟を大きく開いて床に手足を突いた。


「すまないができれば、一撃で切り落としてほしい……神に仕える求道者とはいえ私も死ぬことは恐ろしい……私が命じた者たちは許してやってくれないか?」

「……」


「なぜ大事なことを黙っているんですか? 兄の力剣の印は体を蝕む諸刃の刃、鳳の印と対になっていないと使えないものだった……兄は20年と少し生きた兄にとってそれが寿命だったのです」

「……」

「何時から気が付いていた?」

「鳳の能力を使ったときに全て思い出しました」

「かなわんな……君には勇者として魔王を討伐してもらうメンバーは、各国が選りの精鋭だ無論どの程度の実力化と、偵察にこの会場にもいたかもしれないがな……それと各王家の姫君を娶ってもらう事となるだろうな……王権とは神が与えた神聖不可侵の権利……その権利に拍が付くからな創世神の使徒と言うものは……」



 長々とした神殿長の話を切り上げて、今日は疲れたのでまた後日と会食の予定を放り投げ、俺とアリシアは2人馬車の中で肩を寄せ合っていた。


 複数人の妻……それもアリシアと同格かそれ以上の女を娶ることは、仕方ないのかもしれない。でも今は、隣にいるアリシアを目いっぱい大事にしよう。


「アリシア……」

「何?」

「君を思わずさらってしまうぐらい好きだ!」



 俺は少し勇気を出して、彼女に……アリシアに愛の言葉をささやいた。


「知ってるわそんな事……」

「え?」

「だって私が貴方の事をさらいたいぐらい好きなのだから……」


 少し照れたような愛想の無い声で、アリシアはそう呟いた。


 彼女の頬は夕焼けのせいか紅が、さしていた。





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