1人
ミラはその日から本を見て見よう見まねで罠を仕掛けた。ヤギや鳥、兎を捕まえるためだ。それと並行して、小川の側の木々の間に父親が残した種を撒き育てた。全て自分でするしかなく生きていくために必死だった。
ヤギを最初に捕まえた。洞窟の側の木に繋ぎ毎朝ミルクを搾った。次に兎を捕まえることが出来るようになった。捌くのは可哀想だったが、背に腹は変えられなかった。そうして、薬草と合わせ毎日栄養のあるスープを食べることが出来た。
数ヶ月経つと撒いた種から作物もでき、父親の残してくれた本のおかげでパンも焼け食べるものが充実した。
生活が安定してくると、今はどんな世界になっているのか気になって仕方がなかった。自分が人の中で生きられる、魔女が受け入れてもらえる世界になっているのかが。
ミラは現状を知るために村に降りてみようかとも思ったが、魔女狩りが続いている可能性を考えると簡単には行動できなかった。
『夜にこっそり教会の図書館に行くのはどうかな…』
ミラは思う。本からだったら人に会わずに今がどうなっているか知れるかもしれないと。ミラはよく教会の図書館に行っていた。教会に図書館が併設されていることが多いのを思い出したのだ。
その夜さっそくミラは空を飛んで麓の村まで行ってみた。200年の間に大きくなったのか村というには家が多く町のようだった。家々の灯りが消えているのを見ながら教会を探す。村の中心に教会はあり、やはり図書館が併設されていた。こっそりと天窓から入り、窓から差し込む月明かりの中の魔女に関する本を探す。
『…あったわ。ここらへん全部魔女についてだ』
魔女についての本を何冊か手に取り、月明かりのさすテーブルへと腰かける。表紙をめくり読み始める。読んでいくほどミラの表情は曇っていった。
『150年前に最後の魔女がいなくなって魔女狩りが終わってる…やっぱりみんな死んじゃったのね…』
一緒に持ってきた絵本を見ると、挿し絵に画かれている醜い魔女の目はミラと同じ金色だった。
『文章にも魔女の目は金色と書かれている…私が人と会えば魔女とわかってしまうのね…この絵本もこの本も魔女を悪く書いてある。今私が現れてたら生き残りとして殺されるのかな…』
ミラは本を読み終わると元の場所に戻し夜が明ける前に洞窟に帰った。
『また晴れた夜に行って本を読もう。魔女のことを善く書いてある本もあるかもしれない…』
ミラは淡い期待を胸に棺の中で眠りについた。
それから、何度も図書館に本を読みに行った。だが、本は魔女を悪く書いているものばかりだった。直接人にきいてみたかったが、本の通り魔女に対して悪い思いを持っていれば殺される可能性が高く人前に姿を現すことが出来なかった。