表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

異世界での目覚め

 沢山の悲鳴を聞いたような気がする……美代は、ズキズキと痛む頭を摩りながら目を覚ました。寝かされていたのは、天蓋のついた豪華なデザインのベッドだ。

 美代は、映画のセットだろうかと考える。しかし、自分は映画ではなく、舞台をしていたはずだと思い出す。舞台はこの部屋のように広くはないし、お姫様の寝るようなベッドが出てくる内容ではなかった。

 そこまで思い出し、美代は大きな声で叫んだ。


「そうよ、舞台よ!舞台はどうなったの?」

 

 少しずつ思い出してきた。彼女は主演舞台の真っ最中に大道具が崩れてしまい、その下敷きになったのだ。美代が聞いた沢山の悲鳴は、彼女が大道具の下敷きになってしまった事で起こったものだった。

 あの瞬間の事を思い出すと、体が震える。


 美代の叫び声を聞きつけてか、天蓋が開かれる。天蓋を開けて近づいてきたのは、金髪碧眼で、まるで王子様のような格好をした青年だった。


「異世界のお嬢さん、お目覚めになられたのですね。」


 青年は跪き、恭しく美代の手を取ると、そのまま手の甲にキスをしてきた。

 

 まあ、なんてキザなの。この人、初めて見るけど新人の俳優かしら?王子様役だとおもうのだけど、かっこつけずにもっと自然に演じないと……

 

 まさか、本物の王子様だと思わず、美代は心の中で王子様に王子様役のダメ出しをしてしまった。しかし、美代は顔には出さず、新人俳優を傷つけないように優しく微笑んで見せた。


「まあ、素敵な王子様。いったい私はどれほど眠っていたのでしょうか?」

 

 美代は、おしとやかなお嬢様の役を演じて取り敢えず彼に合わせた。すると青年は、キラキラとした瞳で彼女を見つめ、力強く両手を握りしめてきた。


「ああ、姿だけではなく声も美しい。異世界のお嬢さん、どうか私のハーレムに入りませんか?」


 質問に答えてもくれないし、もう無理、合わせきれない!


 いくら美代が人気の演技派女優でも、何の情報もなしに異世界の王子様に演技で対応するのは難しく、ただ引き攣った笑みを浮かべる事しかできなかった。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ