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第40怪 イチャイチャして勉強するだけで一話使うとか正気か?(日常回)

 オカルト研究会三年生の面々は、勉強の日々である

 学校の期末試験までは時間があるものの、二年生の皆藤も含めて部室で勉強している。

 こういうときは、静かに勉強できる部室が与えられている文化系の部活動の特権を実感する。


 瑠璃子が、んん、と伸びをして、紙コップとトレーを持って席を立つ。

「休憩がてら、お茶入れてくるよ」


 給湯室から戻ってきた瑠璃子が人数分のお茶を配り、そのまま僕の横に椅子をくっつけもたれかかる。

 勉強の合間にイチャイチャするのはやぶさかではない。

 僕も成長したものだ。

 堕落かもしれないが。


「じゃあ、僕も休憩にするよ」

 と声をかけると、他の二人も休憩することにしたようだ。


 勉強の息抜きタイムには、雑談をする。

 たわいもない話から、差し迫った現実の話まで。


「みんなの将来の夢は?」

 僕は受験よりも先にある、みんなの夢を聞いてみたかった。


「お嫁さん」

 瑠璃子が一秒と間を開けずに答える。


「それは前に聞いたな」

 僕のこと好きすぎない?


 多恵が答える将来の夢は、予想通りだった。


「拙者は漫画家でござるな」

「そうだろうな」


「ウチは法改正して同性婚を認めさせることですね」

 皆藤が答える。


 なんか壮大なのが来たな。

 連って女性が恋愛対象らしいし、性転換しなければ普通に結婚できると思うんだけど、そういうことじゃないのかな。


「それは……頑張ってくれ、としか言えないな」


 休憩が終わる前に、勉強に関することも聞いておきたいな。


「そういえば、みんなどの科目が得意なんだっけ。僕は自信があるのは現代文だけかな」

「古文と漢文と英語は得意だよ」


 瑠璃子は一部に特化しているが、確かに得意であった。

「オカルト関係だけな」

 それでも得意と言えるまでになったのはすごいと思うが。


「歴史は得意でござるよ。新選組とか特に。むふふふふ」

 多恵が答える。


「そうだろうな」

 僕も、薔薇界隈で人気のあるジャンルについては、多恵が詳しいだろうなと思っていた。新選組がそうなのかは知らないが。

 皆藤は数学が得意らしい。


 見事にばらけているので、教えてあったら効率がいいのかもしれない。

 まだ休憩が続きそうな雰囲気なので、そのまま雑談を続ける。


「瑠璃子と多恵の進路は? 僕は紙浜(かみはま)国立大学の経済学部だけど」

「勇児と同じ大学」


 さすが瑠璃子である。


「それでいいと思うけど、後悔しないのか? 僕もやぶさかではないけど」

「ん、問題ない」


 言いながら瑠璃子は僕の膝の上に乗る。

 僕は瑠璃子を落ちないように抱きしめる。

 頭にあごを乗せる。


 イチャイチャする僕ら二人を無視し、多恵は、将来について語り始める。


「拙者は、東京の短大に通いつつ、持ち込みをする予定でござるな。一応、今ついている担当の人とも連絡は取り続ける予定でござるが」


 おお、マンガ家志望っぽい進路だ。


 多恵はすでに、薔薇界隈で有名な出版社に担当が付いたらしい。

 え、担当が付くのって難しいんじゃないの。

 すごいな。


 人生経験のために、短大に通いつつ、アルバイトをしてみるなど、社会経験を積みつつデビューを目指すらしい。

 東京では、同人でお世話になっているお姉さんたちとシェアハウスをする予定になっている。


「多恵はすごいな。まあ、僕たちも、なんだかんだ言って、結構楽しい学生生活だったよな。会ってみたかったオカルトとか、本当は行ってみたかったオカルトスポットとかあるか?」


「拙者は幸運を呼ぶ座敷童が出るという家に行ってみたかったでござるな」

「僕らが大学に入って、余裕ができたら、声かけるから遊びに行こうか」

「ん、行こう」


 僕の手を握りながら瑠璃子も同調する。

 夢は広がるばかりである。


 皆藤は、苦笑いしながら、行ってみたかった場所を述べる。

「セッションしないと出られない部屋は、入ってみたかったですね」

「それは本当にごめん」


 セッションしないと出られない部屋をオカルト研究会で訪れた際、皆藤は一人締め出されており、外から心配しているだけだったので、かわいそうな役割であった。


 一人と言えば、と僕はふと気が付いた。


「そういえば、僕らが卒業したら、オカルト研究会はどうなるんだ?」

「また同好会扱いに戻って、粛々と続くのではないでござるか」

「ウチは一人でも平気ですよ」


 部室においてある鳩時計が、カッコウと鳴き、十七時を知らせる。


「来年の事を言えば鬼が笑うと言うし、僕たちの将来のことはこれくらいにして、勉強に戻ろうか」

「鬼が来たら世界は滅ぼせるかな?」

「滅ばないんじゃないかな?」


 そんな簡単に強い鬼が出現するなら、世界は毎日のように滅んでいるに違いない。


 下校時間まで黙々と、時にわからない問題を教えあって、定期試験や受験に向けた勉強を進めていく。

 帰りは自転車を押しながら手をつないで帰る僕と瑠璃子であった。


 こうして日常の日々は過ぎていく。


 ****


 時は過ぎる。


 受験に配慮したのか、自分から足を踏み入れなかったおかげか、都市伝説に遭遇することもなく、受験当日を迎えた。


 同じ大学を受ける瑠璃子とは、受験前に抱き合って、周りから嫉妬の目を向けられつつ、会場に向かい、平常心で試験を乗り切った。



 僕と瑠璃子は同じ大学に合格し、多恵は短大に合格した。相模金剛は仏教系の大学に合格し、進路に向かって一歩踏み出した。


 都市伝説に関わって、オカルトづくしだった学生生活もあとわずかである。

 季節はもうすぐ春。

 桜の開花が近づいた頃である。


 続く


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