第33怪 休憩所に寄りたがる彼女(文化祭回)
チョコレート喫茶では、瑠璃子は調理を担当し、僕は給仕を担当した。
チョコレートドリンクやケーキのデコレーションで、瑠璃子がかたくなにハートを書こうとしなかった。お客さんに出すものでも、僕以外には愛を伝えたくないらしい。
クラスメートからは一途だ、バカップルだと囃し立てられたのは、いい思い出になりそうだ。
そういうところはかわいいよな。
クラスのシフトが終わり、せっかくだからと衣装そのままに、文化祭を回ることにした。
エプロンだけとはいえメイド姿の瑠璃子と行動するのは、まさに文化祭って感じだ。
クラスを出て、近くの教室を除きながら歩いていくと、瑠璃子が何かに気づいたようで、声をあげた。
「あ、休憩所だって! ね、寄っていこうよ」
「休憩所ってそういう意味の場所ではないからな? 文化祭に何を求めているんだ」
既成事実を求める瑠璃子を軽くあしらい、飲食店のスペースを見て回る。
瑠璃子の手を引っ張り、チュロスを食べさせたり、カップル用の二人で飲むタピオカドリンクを買ったりした。
ひととおり回った僕らは、自分のクラスのチョコレート喫茶に寄って、ここでも瑠璃子とカップル用のドリンクを飲む。
ついでにケーキも頼んでおいて、運ばれてくるのを待つ。
一部の男子がチョコレート、口移し、何かを思い出しそうだ、とつぶやいているが、無視するしかない。
去年のバレンタインで死者を出したという、チョコレート口移し事件のことだろう。
他人事のような顔をしているけど、犯人は教室で堂々といちゃついた僕と瑠璃子だ。
瑠璃子のアプローチは他人の目を気にしていないので、イチャイチャしようがいまさらである。
たまには先手を取って、僕からもあーんでもするか。
ケーキをフォークですくって瑠璃子に食べさせる。
あーん。
調理スペースからチョコレート口移し事件の再来か、との声も聞こえるが、今日はそんなにいちゃついてないだろ。
ケーキを食べ終えて、クラスの喫茶店を出た僕らは、音楽室に向かった。
軽音部の体験コーナーでは、ドラマー対決という企画があった。太鼓を使った音ゲープレイヤーとしては、これは外せない。
僕の得意なゲームは和太鼓だけどな。
太鼓の鬼退治ガチ勢の本領を発揮して、本職と互角に渡り合った。
自由行動の時間が終わり、僕と瑠璃子はオカルト研究会の部室に働きに行った。
去年より予約が多い分リストとの照合は大変だったが、読みたいと思う人に届いたのならいいことだろう。
文化祭終了時刻になると、一旦クラスに戻る。
クラスのチョコレート喫茶も無事閉店となり、締めの挨拶となった。
「おつまる!」
「お疲れさまでした!」
「おっつ~」
思い思いの挨拶をしていて、締まらない。
令和の高校生、多様性の世代である。
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文化祭も終わり、解散したあとのことである。
暗がりの中、ミラーボールのきらきらした光だけがその場を支配していた。
壮大なイントロから、突然のシャウトが始まる。
「ごぉぉぉとぅぅぅぅじょうどおおおおお!」
「じょうどー!」
僕と瑠璃子の二人は、カラオケ店で、ジャーマンスープレックスババアの曲を歌っている。
クラスメートはそれを見て盛り上がっている。
要するに、文化祭の打ち上げというやつである。
文芸部の会報の販売と、クラスのチョコレート喫茶の片づけがつつがなく終わった。
打ち上げと称してクラス内でハンバーガー食べ放題を行った後、盛り上がりに足りないと判断した一部に加え、僕と瑠璃子は、カラオケに来ている。
教室の打ち上げで配られたハンバーガーは、水泳部男子の差し入れだ。
百個買ってきて、そのままおごりだった。
気前のいい奴らだ。
ハンバーガーを食べたくない人も、余ったチョコレートドリンクなどで、わいわいと、盛り上がった。
二次会としてカラオケを提示され、僕は歌うのが得意というわけでもないと断ろうとした。
しかし、クラスの集まりにあまり顔を出さないからと、拉致られて参加が決定した。僕が参加ということは、瑠璃子も必然的に参加である。
クラスで一番男子からの人気のあるギャル、長尾愛から、何か二人で歌えば? と選曲マシーンを渡された僕と瑠璃子は、二人がわかる曲を探す。
瑠璃子は端末を操作し、候補となる曲を探す。
見つかったようで、うれしそうな声をあげる。
「ね、世紀末覇者の『藁人形』は?」
瑠璃子は曲のチョイスまで、オカルトっぽいものなんだな。
「歌えないなぁ。『オニカマ3000』なら歌えるんだけど」
ちなみに『オニカマ3000』は太鼓の鬼退治の最難関曲である。
このまえ、ついに、フルコンボに成功した。
え、どうでもいいって?
「オ、ニ、カ、マ……。ん、これ、歌うところないよ? あ、これどうかな」
「カラオケに入っているのか……。まあ、それなら……」
こうして二人はジャーマンスープレックスババアの曲『浄土インヘブン』をデュエットすることになった。
浄土なのか天国なのかよくわからない曲名だ。
知らない曲も盛り上げる、長尾や水泳部男子のテクニックに励まされて、何とか歌い切った僕ら二人は、そのまま女性陣に拉致られて、恋バナを延々とさせられたのだが、それはまた別の話である。
文化祭と言えば、創作物では後夜祭に花火を打ち上げるなんてことがよくあるが、宵ヶ浜高校ではそのような催しはない。
クラスの打ち上げ、三次会では行こうという雰囲気みたいだが、瑠璃子と二人でイチャイチャするという名目で抜け出してきた。
イチャイチャはするんだけど。
こうして、二回目の文化祭も無事終わり、季節は冬へと移り変わる。
続く




