第32怪 会報のファンがほとんど腐女子である件について(文化祭回)
恐怖の修学旅行の後、文化祭に向けた活動をこなした僕たちオカルト研究会は、無事に会報『宵闇の宴』を完成させることができた。
円子先生とファンの薔薇への愛はとどまるところを知らない。
昨年の薔薇|(に見える)マンガが好評を博したらしく、その筋と思われる女性ファンから、取り置きの依頼が殺到していた。
「はい、これで予約五十部、と」
友人経由での予約申込書をパソコンの予約リストに写しながら、僕は、ふぅ、とため息をついた。
人気ありすぎだろ。
今年度も、会報に掲載する文章は三人とも同じジャンルであった。
僕がフィールドワークの調査結果をまとめたもの、瑠璃子が世界滅亡計画をSF小説風に修正したもの、多恵が薔薇っぽく見えるマンガである。
瑠璃子の世界滅亡計画は、この一年で僕への愛が膨らんだおかげか、世界に二人だけが残る設定になっており、いわゆるセカイ系の様相を呈してきている。
全ての人類を滅ぼそうとしていた昨年に比べると大きな変化であった。
今年は皆藤が部員に加わったことで、一人当たりの分担が減るかと思いきや、瑠璃子も多恵もたくさん書くので変わらず、僕の書くべき量だけが半分になった。
それでいいのか。
皆藤もフィールドワーク調査を書きたがったので、僕と分担することで、皆藤が初めて書く文章の量を減らせて、ちょうどよかったのかもしれない。
フィールドワークの調査については、今年は都市伝説に加えて、宵ヶ浜高校の七不思議についても扱っているので、よりローカル感が強くなっている。
また、皆藤は都市伝説とは別に、異界から持ち帰った石の観察日記を書くつもりらしい。
石を観察して何か変化がありえるのか、それは作者の皆藤のみが知る。
苔でも生えるのだろうか。
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僕らは二年生となって、クラスの出し物の自由度も上がっている。
おかげで、部活動での展示・販売以外にも時間がとられている。
僕らのクラスは、抽選の結果、食品販売可能な教室が割り当てられたため、やる気のある出し物を計画しており、バタバタしていた。
話し合いの結果、チョコレート喫茶をすることに決まった。
チョコレート喫茶ってのは何だろうか。
主に女性票により決まったメニューを見たところ、飲み物としてホットチョコレートや、チョコレートを使ったケーキやクッキー、チョコレートそのものを扱う喫茶店らしい。
喫茶店ということはコスプレか、と水泳部が盛り上がっている。
さすが性欲の獣として評判の名高い水泳部だ。(偏見)
そういえば水泳部は、去年、水着喫茶とかやっていたな。男子だけだったが。
飲食はけっこう条件が厳しくて、提供前に加熱料理しないものを提供するには、出来合いの物を購入しておいて、冷蔵庫から提供する形となる。
クッキーは手作りで、他は近所のケーキ屋から卸されてくるものだ。
ホットチョコレートはレンジで温める必要がある。
このあたりの提供方法に慣れるのは大変そうだ。
ロングホームルームの今の時間は、当日の制服をどうするかで女子が盛り上がっている。
男子は執事にするか、海パンにするか、と話題になっているが、海パンは水泳部だけにしてほしい。
結局、女子はメイド風のエプロン、男子はお菓子の柄のエプロンをつけることでまとまったので、まとめて購入申請となった。
装飾や調理、それぞれ分担しての作業は楽しいものだった。
毎日僕に手料理をふるまっていることが周知の事実の瑠璃子は、クッキーづくりなどで教える側になっている。
そういえば、手作り弁当は毎日食べているけど、瑠璃子のお菓子を食べたことはほとんどないな。
バレンタインのときくらいか。
こうして、クラスの準備であわただしい日々を送りつつ、オカルト研究会の会報『宵闇の宴』の予約をさばいてバタバタして日々は過ぎていった。
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文化祭当日となった。
会報を求める女性客が多く、薔薇を求める層の厚さを感じるオカルト研究会であった。
そんな中、事件は起きる。
一人の女子大生風の一般来場者が、多恵に声をかけてきたのだ。
「あの、サークルアンサー先生ですよね?」
「ぐふっ」
多恵は苦しそうな声をあげた。
多恵がサークルアンサー先生として、ナマモノ同人誌を書いていることは、公然の秘密であった。
あれ? 気づいたのって僕だけだっけ?
会報の在庫がはけて、販売終了となった後、多恵が僕に、落ち込んだ様子で話しかけてきた。
「まさか、正体がバレるとは思っていなかったでござるよ」
何と答えるべきか迷った僕であったが、友人の秘密を守ることに力を注ぐことにした。
「え? なんだって?」
さすがに苦しいか。
「……今どき、難聴系主人公は流行らないでござるよ」
僕もそう思います。
苦しいとは思ったものの、この手段でしか多恵を守ることはできないと判断し、演技を続行する。
「え? なんだって? 皆藤は多恵とファンの会話、何か聞いたか?」
「いいえ。何も聞いていません」
皆藤も何かを察知したらしく、乗ってきた。
いい後輩だ。
瑠璃子は素で話を聞いていなかったらしく、不思議そうな顔をして話を聞いている。
「ね、何の話?」
「さあ、よくわからないな」
そこは聞いておいてほしかった。
多恵は納得した様子で、顔をそむけた。
「あっ、そういう感じでござるか。かたじけないでござるな」
ちょっと泣きそうになっている。
そんなにほっとしたのか。
知人バレって恐ろしいんだな。
こうしてオカルト研究会の面々は、何も聞かなかったことにして、平穏が保たれたのだった。
「ね、何の話?」
瑠璃子だけはわかっていないようだったので、後で教えるという体裁でデートをすることになった。
といっても、文化祭を一緒に回るだけなんだけど。
続く
もう一話文化祭です。




