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第25回 都市伝説的な旨さのハンバーガーショップ

 宵ヶ浜周辺に展開される、地域密着型ハンバーガーチェーンの噂を聞いたことがあるだろうか。

 全国のハンバーガー好きには有名らしく、そのためだけに宵ヶ浜近辺を訪れるものも少なくないとまことしやかにささやかれている。


 水川(みずかわ)瑠璃子(るりこ)は、世界滅亡には関係ないじゃん、と興味を示さなかったが、僕こと才谷(さいたに)勇児(ゆうじ)は、時給やチェーン店の中でも一風変わった和仁志津(わにしず)駅前店に興味があった。


 ちなみに、ハンバーガーの美味しさは都市伝説級らしい。


 ****


 僕は修学旅行で使うお小遣いの捻出のために、短期でアルバイトを入れることにした。

 ティラノバーガーという、地元のハンバーガーチェーンである。


 個性的な名前だが、別に全国的な都市伝説のように、何か別の肉を使っているということはない。

 ティラノサウルスの肉を使ったハンバーガーが食べられるなら僕も食べてみたいものだ。

 ティラノサウルスが現代に生きているはずもないが。


 ティラノバーガーの面接は過酷を極めた。

 何せ肉体言語による面接だからな。


 いや、なんでだよ。


 ハンバーガーショップの面接で懸垂(けんすい)とかスパーリングを要求される意味が分からない。


 日ごろの鍛錬のたまものか、店長の肉体言語による面接を無事耐え抜いて、無事に合格した僕は、ようやくアルバイト初日を迎えた。

 こう見えて僕は毎日ランニングと筋トレを欠かさないからな。


 レジの打ち方を習って、人が少ない時間を見計らっての、レジ打ち挑戦である。

 面接の意味あった?


 お客様の注文を聞いて、無事に打ち終わった僕は、お金を受け取って、お釣りを返す。そして、肉体言語が一番場を支配していそうな、マッチョ率の高い厨房に声をかける。


「オーダー! ワン、デスバーガーセット、ポテト、オレンジジュース! サンキュー!」

 注文票を印刷して壁に貼り付け、お客様には少々お待ちくださいと伝える。


 厨房から、筋肉をアピールしながら、了承の返事が返ってくる。


「ワン、デスバーガーセット、ポテト! オレンジジュース! サンキューベリーマッチョ!」


 厨房からふざけているのかと思う声が返ってくるが、これがこの店の文化であった。

 うすうす気づいているだろうが、何を隠そう、ティラノバーガー和仁志津(わにしず)駅前店はマッチョばかりで構成されたハンバーガーショップである。


 マッチョ魂あふれる店長と、筋肉の美しさで採用されたという噂の店員たちの圧迫感に加えて、高級路線で、客層も悪くないため、ハンバーガーショップとしてはかなり働きやすい店である。

 これほど働きやすい環境は、高校生のアルバイトではなかなか見つけられない。

 同じくらい好待遇なのは、友人の相模金剛の実家の寺くらいである。


 なお、マッチョばかりという謎の路線にもかかわらず健康志向に配慮してカロリー控えめにしたレタスサンドなどのメニューを売っているため、主婦の客も多い。

 マッチョが目当ての可能性もないわけではないが。


 瑠璃子も一緒に働こうと言ってきたが、マッチョ魂あふれる店長に毒されてほしくはないので、彼氏として阻止することにした。

 そもそも面接を突破できないだろう。


「あそこは筋肉面接があるから、瑠璃子には向いていないよ」


 自分で言っておいてあれだが、筋肉面接って何だよ。


「筋肉面接が何かはわからないけど、勇児と一緒に働くためなら筋トレを始めるのも悪くないよ」


「瑠璃子はマッチョにならない方がかわいいよ」

 これは本心である。


「そっか」


 以上のようなやり取りを経て、瑠璃子の、一緒の職場で働こう計画は阻止された。

 瑠璃子がマッチョを目指さなくて良かったぁ。



 ティラノバーガーのアルバイトは、まかない代わりとして、セットメニューの一部を帰りに格安で買える。

 この点も、男子高校生としてはポイントが高かった。

 今日はまかない代わりにオーガポテトを買って退勤する。


 オーガポテトは、焼きおにぎりとポテトが半分ずつ入ったセットである。

 ハンバーガー屋とは何なのか、もはや存在意義を疑うメニューであるが、マッチョな店長は細かいことを気にしていない。

 脳筋だからな。


 そのまま、店外のイートインスペースに立ち寄り、終わるタイミングを見計らって店に来ている瑠璃子と一緒に食べて帰ることにしている。

 終わるタイミングを見計らって出てきているだけで、アルバイト中陰から眺めたり、盗撮したりしているだろうことはわかっているが、あえてツッコミを入れるものでもない。


 マッチョの店長からは、毎回彼女と帰るとはさすが高校生、ハッスルしているな、ガハハ、などのありがたいお言葉をもらうなどしている。


 瑠璃子はオーガポテトの袋から、ポテトを取り出すと、一本ずつ食べさせてくる。

「あーんしてあげるね」

「え、あ、うん」



 こうしてアルバイト後に毎回いちゃつく様子を見せているが、店員のマッチョたちは筋トレをしながら温かく見守っている。

 マッチョは細マッチョに対して心が広い。


 無事に一か月の労働を務めた僕は、修学旅行などで使うための小遣いを得た。

 鏡を見ると、ここでの経験から、少したくましくなったように見えた。

 表情が、ではなく、物理的な意味で。

 筋肉ついたなぁ。



 続く


お読みいただきありがとうございます。

推理物を書こうが、VRものを書こうが、ラブコメを書こうが、マッチョが出てきてしまいます。


今回の怪異

マッチョの多いハンバーガーショップ:美味しいらしい。筋肉は世界を救うぞ!


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