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第21回 姉に勝てる弟は都市伝説的存在

 姉に勝てる弟は存在するのだろうか。


 姉に勝てる弟、それは、海に面した宵ヶ浜市に住む学生どころか、日本に住む虐げられし弟たちの間でささやかれる、都市伝説的存在である。

 優しい姉という同じく都市伝説的存在を持った、幸運な弟を除けば、ほとんど存在しないと、まことしやかにささやかれているのだとか。


 いや、もう、別に優しくなくてもいいから、絡み酒さえしなければ十分な気がしてきたな……?


 ****


 僕、才谷(さいたに)勇児(ゆうじ)には大学生の姉がいる。名前は才谷(さいたに)有栖(ありす)である。

 大学では心理学を専攻している。

 講義の関係で早めにゴールデンウィーク突入したため、最近は酒を飲みながら家でゴロゴロしている。大体酒臭い。


 弟には、毎朝、シャワーを浴びた後で顔を合わせるたびに自分をほめる習慣をつけさせている。

 おかげで姉弟の仲は悪くない。主に僕の努力のおかげだが。


「おはよう、姉ちゃん。今日も美人だね」

「おう、そうだろ。自慢の姉だぞ。もっとほめろ」

 などと日々やり取りをしている。


 なぜ今さら姉の話をしているかというと、僕の家に来客があるからなのだった。


 ゴールデンウィークを前に、オカルト研究会四名が才谷家に集まった。

 今年の文芸部|(実質的にはオカルト研究会)の会報の打ち合わせである。


「それでは、今回の議題ですが、今年の会報についてです。今年も都市伝説巡りをするのか、それとも他の題材で書きたいものがあれば提案してください。なお、僕たちは去年もやっているので、一年生の皆藤(かいどう)の希望が優先されます」


 僕が仕切って、今年の活動方針を決める。


「ウチは、去年みたいな都市伝説巡りと、宵ヶ浜高校の七不思議調査をやりたいですね」

 新入部員の皆藤(れん)は、聞いたという七不思議の話や、行ってみたい都市伝説の話を語った。


 話が終わったタイミングで、聞き耳を立てていたのか、部屋をノックする音が聞こえた。

「どうぞ、って、姉ちゃんか」


 姉の有栖がお茶を持って乱入して来る。


「瑠璃子ちゃん、久しぶり」

「お久しぶりです、お姉さん。いつもありがとうございます」


 クリスマスの時よりも瑠璃子と仲良くなっている。

 普段からやり取りをしているのか。

 あれか、姉に対していつもありがとうってことは、もしかして、机の二重底にしまっていたエッチな本の内容を、瑠璃子が知っていたのは姉のせいなのか。


 敵は身内にあり。


「お、君が皆藤ちゃんかな。勇児から話は聞いているよ。後で私のおさがりの私服をあげようか?」

「いいんですか? やったー!」


 皆藤が女子力の高い喜び方をしているのをみて、姉は満足そうな表情を浮かべた。

 いい話なんだけど、姉ちゃんは酒臭いんだよな。

 客が来るのに朝から深酒してるんじゃないよ。


 その後、オカルト研究会の話し合いは姉を観客としたまま続いた。

 皆藤の提案により、調査する都市伝説が決まった。


 まずは、包帯だらけの中学生である。

 これ、ただの厨二病かと思われるが都市伝説になるのはかわいそうじゃないか?


 次は、全裸になる駅前のサンタクロース像である。

 酔って全裸になったおっさんを見間違えただけかと思われるが、大丈夫か?


 それから、宵ヶ浜南高校の動く人体模型である。

 これは普通だ。


 宵ヶ浜北高校に七不思議がある、隣町にもたくさんの都市伝説がある、など、調査対象のリスト化が進んだ。

 ちなみに、動く人体模型の話は七不思議には入っていない。

 王道なのに。


 姉も大学で聞いた話などを教えてくれたので、有意義な話し合いになった。


 話が終わってから、皆藤は姉の部屋に呼ばれた。

 姉のスカートを借りた皆藤は、嬉しそうにしている。後で何着か袋に入れてもらえることになったらしい。


 普段気にしていないそぶりを見せているが、皆藤も普段から苦労しているのだろう。


 ****


 オカルト研究会のメンバーが帰ることになり、瑠璃子を家まで送って帰ってきた僕は、自宅のソファーで一息ついていた。


 そこに、姉がどっかりと座ってきて、そのまま肩を組んだ。


「よう、勇児。瑠璃子ちゃんにちゃんと毎日愛をささやいているか?」


 まだ酒臭いんだけど。

 一体いつまで飲んでたんだ。


「姉ちゃんをほめる習慣がついているからね。顔を合わせるたびにほめたり好意を伝えたりはしているよ」

「そうか。姉による教育の成果が出ているな」


 その点は感謝しても良いかもしれない。


 姉は立ち上がって冷蔵庫まで移動した。

 冷蔵庫から缶を取り出し、食器棚から取り出したグラスに注ぐ。

 まだ飲むんだ。


「姉に勝てる弟。それが都市伝説でなくなる日は来るのだろうか」

 おっと声に出ていた。


 姉は缶チューハイを飲みながら反応する。

「少なくとも我が家では永遠に来ないから、ストロングなアルコールに合う、コンビニの唐揚げ買って来てくれない?」


 今日も弟は敗北した。

 マジかよ。



 続く


お読みいただきありがとうございます。

次回からは学校の怪談編です。※ホラーとは言っていない


今回の怪異

姉に勝てる弟:そんなものはいない。


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