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第11怪 宇宙人襲来(体育祭回だよ)

 宇宙人といえば、言わずと知れた、都市伝説的存在の花形である。

 地球人も宇宙人の一種であるとすれば、存在していることは間違いないのだが。

 地球以外に知的生命体はいると思うのは、ロマンを求める者だけだろうか。


 ************************☆彡 ☆彡 ☆彡************************


 天高く馬()ゆる秋、本日は体育祭の日である。

 宵ヶ浜高校はなぜか体育祭に力が入っており、陸上競技に球技、綱引きや騎馬戦もある。


 さて、オカルト研究会も、名義上の名前である文芸部も、いずれにせよ文化系の部活動であることに変わりはない。

 僕はゲームセンターにある「太鼓の鬼退治」の筐体を効率よくプレイするために、筋トレやランニングによる体力増強に努めているため、人並みには体力がある。

 さらに、部活動でも、たまにフィールドワークで遠出している。


 それでも、日ごろ運動している運動部の面々と比べると、普段の運動量は落ちる。


 体育祭において、文化系の部活動の面々が活躍することはあまりないだろう。


 午前の種目が順調に消化されていく。

 僕も自分の出場種目に向けて移動した。

 ピストルの音で二十人が一斉に走り出し、千五百メートル走のスタートである。


 ******


 特に波乱もなく、僕が個人選択で出場した千五百メートル走を六位で走り終えると、恋人である瑠璃子が駆け寄ってきて、タオルを差し出してきた。

 ゴールの少し先で、若干注目を集めているのは恥ずかしい。

 だが、拒否する理由もないので、受け取って汗をぬぐった。


 瑠璃子は拭き終わったタオルを回収し、代わりにドリンクを渡してくるので、僕はゆっくりと飲んでそれも返す。

 ドリンクを飲んでいる一瞬で、瑠璃子はタオルに顔をうずめて、僕の汗のにおいを嗅いでいた。

 えぇ……?


「えぇ……。本人の目の前で即嗅ぐのか……」

 困惑を隠せない。


「はあ……、いいにおいだね。あ、間接キスももらうね」

 ドリンクを受け取ってそのまま飲み始めた。

 間接キスが主目的らしいが。


 瑠璃子はマイペースであった。


 観客席からは、イチャイチャする僕らを囃し立てる声が聞こえる。


 僕の出場種目は、もう一つ、男子全員参加が強制されている綱引きだけである。



 昼食前に実施される、綱引きを終えた僕は、大した活躍もせず出番が終了となった。

 綱引きのコツは、体重をかけて引くことなので、綱をワキに挟んで、そのまま後ろに倒れ込むように引っ張るのがベストと聞いたことがある。

 僕一人がそうしたところで、チーム全体には影響せず、僕のチームは敗退したが。


 後は応援だけだし、まったりできるな。


 そんな感じでオカルト研究会が体育祭において、記録を残さず、記憶に残るような行動をする一方で、異常な成績を上げる男がいた。

 個人選択種目は最低一つであるのだが、希望すれば四つまで掛け持ちで出場できる。

 そして、出場するほぼすべての競技で圧倒的な差をつけて一位を取っている、その姿はまるで宇宙人である。


 彼の名は右藤(うどう)宙人(ひろと)である。


 陸上部所属で、中学時代は短距離の全国大会に三年連続で出場していたらしい。

 ま、右藤の実績は、特に僕らには関係ないか。


 午前最後の種目だった綱引きの後片付けが終わり、昼食休憩の時間となった。

 昼食休憩は、観客席のベンチに座り、瑠璃子と二人で弁当を食べている。


 体育祭で活躍して話題となった右藤について話しながら、瑠璃子が作ってきた重箱を食べる。

 僕は体育祭自体にあまり乗り気ではないし、自分の出番も終わったので、もう右藤にも体育祭にもそれほど興味はないんだけど。


 瑠璃子とはぼんやりと会話をしつつ、気づいたらあーんをされて、卵焼きやタコさんウインナーを口に突っ込まれているし、瑠璃子にお願いされたらあーんをしてやっている。

 卵焼きは甘いタイプで、僕の好物であり、砂糖多めにもかかわらず焦げ目がないことから相当に練習をしたことがわかる。

 こういうところは本当にかわいいな。


「右藤は、名前をもじって宇宙人と呼ばれているらしいね」

「宇宙人! 宇宙人なら世界を滅ぼせるかな」

「そういうタイプではないかな。どちらかというと人差し指で交流を図ってくるタイプのやつだと思う」


 運動会ではお弁当には唐揚げやカツが定番だが、運動する前に油物を食べるのは消化に悪いということで、入っていない。

 鶏肉は照り焼きである。


 僕はもう午後に出場する種目はないが。

 瑠璃子も残りはダンスだけじゃなかったかな。

 ダンスでどうやって勝敗つけるのかはよくわからないが。


 照り焼きうまいな。

 保温容器に入れてきた、ほっとするホットの味噌汁も用意してあり、もはや熟年夫婦かのような食事風景である。


 そういえば、と僕は運動着姿の瑠璃子を見ていた。

 細くて健康とは遠そうであり、付き合う前からの病弱そうなイメージは変わらないが、ストーカーやフィールドワークをこなす体力も意外とあり、見た目ではわからないものだな、と感心していた。


「熱心に見てくれるのはうれしいな。勇児って体操服フェチだっけ? 部活前には毎回着替えようか?」

「いや、そういうのではないかな。あとどちらかというと、制服の方が好きだよ」


 制服より水着の方が、いや、余計なことを言うと、毎回本当に着替えそうだ。

 やめておこう。


 昼休憩の時間が終わり、午後の競技が開始となった。

 午後の目玉の一つは借り物競争である。他にはリレーとダンス、騎馬戦がある。


 借り物競争にて、真っ先に噂のヒーロー、右藤が僕らの方に向かってきた。


 それを見た瑠璃子がかばうように前に出た。

 飼い犬が低い鳴き声でうなっている様子を思い浮かぶ。がるるる。

 がるる瑠璃子だな。


「水谷さんだっけ。お題にピッタリなんだよね。来てほしいんだけど」


 瑠璃子が低い声で反応を返す。


「あ、やんのかコラ。瑠璃子は渡さねぇぞコラ。ってうちの勇児が怒るからダメ」

「瑠璃子、無意味なアテレコはやめるんだ。あと僕はヤンキーみたいなキャラじゃないから」


 右藤に向き合って、僕は質問を投げかける。


「右藤だっけ、話したことはなかったと思うけど。お題は何?」

「それはゴールしてからのお楽しみってルールだよ」


 瑠璃子は変わらず、がるるる、と警戒している。

 右藤は、僕ら二人の姿を見て、こう告げた。


「ちょうどいい。二人とも来てくれる?」


 右藤は僕の手を取り、コースに戻る。

「僕もかよ」


 一部女子から、手をつないだ僕と右藤に黄色い声援が飛ぶ。

 薔薇教の信者だな。


 僕は右藤にひかれる形で、そのままコースに向かっていった。


 瑠璃子は僕につかまって一緒についてきた。

 がるるるる。

 まだ吠えているのか。


 僕と瑠璃子は右藤に引っ張られて、コースを走る。


 右藤は僕ら二人に合わせてくれたのか、ゆっくり走ったが、それでも瑠璃子は男子二人の速度についていけず、遅れ気味である。

 焦った瑠璃子は、コース途中でこけてしまった。


 右藤が眉を八の字にして困った顔をしながら、提案して来る。

「もし二人がよければ、俺が彼女をおぶって走ってもいいかな」


 僕は意外なほど嫉妬心がわき、思わずアテレコと同じセリフを吐いてしまう。


「あ、やんのかコラ。瑠璃子は渡さねぇぞコラ」


 僕らしくないセリフだ。

 もしかして昼ごはんに何か盛られたのかな。後で問いただそう。


 瑠璃子は目を輝かせて見ている。

 ここまで期待されたなら、僕が運ぶしかないだろう。


「瑠璃子くらいなら僕が運ぶから、右藤は黙って見ていてほしい」


 そういって僕は、腰を下ろし、瑠璃子を体の正面に抱きかかえて、立ち上がった。


 右藤は意外そうな顔で、横に立った。


「才谷だっけ。なかなかいい筋肉をしていると思ったが、想像以上に体力があるな」


 右藤の掛け声を聞きながら、僕は走り出す。


「筋トレしたからな」

 主に音ゲーのために。


 観客席から、おい、あれ見ろよ、だとか、かっけえ、だとか、やはり筋肉は世界を救うな、などの声が聞こえてくる。

 誰だ、その筋肉フェチみたいな感想を投げたやつは。


 黄色い声援も聞こえてくるが、さすがに応援に耳を傾けるほどの余裕があるわけではなく、僕はただ一心にゴールへ走る。


 お姫様抱っこをしながら、盛大に目立ったカップルと宇宙人の三人は、見事二位になった。


 宇宙人といわれてもてはやされている傑物(けつぶつ)、右藤が今日初めて二位になったにもかかわらず、会場は今日一番の盛り上がりである。

 盛り上がる分にはいいのか。


「右藤、僕たちを連れて行くなんて、結局、お題はなんだったんだ?」

「え? あぁ、お題は『バカップル』だよ。こうなると誰が見てもお題達成だ。選んで良かったよ」

「まじか」


 宇宙人と呼ばれる右藤宙人に、クラスも違うにもかかわらず普通にバカップルだと思われていることに、ため息をついた。

 ま、それも悪くないな。


 そもそも、バカップル以外は大勢の観客の前で、お姫様抱っこで疾走などしないのであるが、毒されてきた僕は気づいていなかった。


 瑠璃子はお姫様抱っこに感激したのか、噂の宇宙人にもバカップルだと認識されて嬉しいのか、二位の旗の周りを楽しそうにくるくると回っている。

 あ、こけた。



 体育祭は紅組が勝利したが、気にするオカルト部員など存在しなかった。


 結局、大活躍した右藤より、僕のお姫様抱っこカップルが話題をさらった。

 オカルト研究会部長の多恵も、あきれ顔でこうオチをつけざるを得なかった。


「もう貴殿らが、都市伝説でいいでござるよ」


 今日はもう、そういうことにしておこう。


 続く


モブA「あの二人が連れていかれるってことは、お題はカップルだな(血涙)」

モブB「ラブラブカップルかもしれん(血涙)」

モブC「夫婦かもしれん(吐血)」

 

モブA「お姫様抱っこ……だと……(血涙)」

モブB「あいつらのリア充力は53万です……(即死)」

モブC「俺も来るべき時のために筋トレ始めるか……」

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