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H×H!  作者: 霧間ななき
7/14

7.

7.

「ユウリ君、ちょっとこのあと職員室来てくれますか?」

「あ、はい、わかりましたキノト先生」

「よろしくお願いしますね。では皆さん、また次の授業で」

 古文のキノト先生に授業終了後呼び出される。あまり珍しいことでもない。

呼び出しとは言え悪い意味ではないし行かない理由もない。


「ゆぅちゃんいいなー。キノト先生のお気にだよねー」

「みたいだな。ありがたいことだ」

「お前文系強いもんなー。羨ましい限りだぜー」

「いや、お前の場合文系理系全部ダメじゃねぇか、悪友1」

「いやだから2以降イルノデスカ!?いい加減それヤメレ!」

「勉強できなくてサボりがちで不真面目、やたらと絡んでくる。間違いなく悪友のやることだろう?」

「否定できない自分が口惜しいっ!」

「ならがんばれよ」

「ムリ!」

 返事だけは元気なダメ人間だった。本当にどうしようもない奴だ。


「ちょ、そんなもうどうしようもないなって蔑む目で見るのやめて!?目覚めちゃう!」

「うわぁ、本気でキモい」

「アギトくんガチでキモチワルイ」

「うはぁ!?お姉さまにまで言われた!?俺もう生きていけない!」

「まぁこんなのほっといて待たせてもあれだし俺行ってくるわ」

「え、無視!?無視ですか!?ほっとくの!?俺死んじゃうよ!?マジで!」

「うん、いってらっしゃーい」

「え、マジでいっちゃうわけ!?本気で死ぬよ!?」

「死ねば?」

「うわーん、親友がいじめるー!?」

「ここまで言われて親友と言えるお前のその神経には感服するよ」

「そう?照れるなー」

「全く褒めてないんだが」

「ガーン!?」

「帰ってきたら相手してやるから待ってろ悪友1」

「だからいい加減名前で呼んでヨ!?って、え?相手してくれるの?マジで!?」

「行ってくるわ」

「いってらっしゃい、待ってるぜ!大好きだユウリ!」

「キモい、死ね」

 ハイテンションなアギトを置いて姉貴に軽く手を振りつつ教室を出る。

悪い奴ではないのだがどうしようもなくバカな奴だった。

相手していて遠慮なく言えるので気楽ではある。




「失礼します」

 ノックしながら職員室に入った。キノト先生のところへ行くと早速切り出される。


「雑用になってしまって申し訳ありませんが資料室の整理を放課後にお願いしたいと思うのですが大丈夫でしょうか?」

「放課後ですか。今日は部活もないので大丈夫です」

「私用になってしまうので本当に申し訳ないんですがお願いします」

「いえ。あ、でも一人では厳しいので姉と一緒でも構いませんか?」

「あ、そちらでも助っ人を呼んでくださるのならお願いします。もう一人神秘論研究会の部長さんにもお願いしていますが人手は多いに越したことはないので」

「ハジメ先輩も来るんですか。それなら百人力ですね」

「彼に現場指示はお願いしてありますので彼の指示に従って整理の方お願いします」

「はい。お話はこれで終わりでしょうか?」

「えぇ、わざわざすみませんでした。よろしくお願いしますね」

「了解しました。それでは失礼します」

一礼して職員室を出る。


 少し面倒ではあるが資料室は古書が結構置いてあるので好きだったりする。

整理ともなれば珍しい本も見つかるかもしれないし行かない手はない。

それにハジメ先輩と一緒に作業するのはいろいろと参考になるので見ておきたいし。

姉貴もとっさに名前を出してしまったが誘えば喜んでついてくるだろう。

姉貴も俺と同じで古書好きだし。


 あー、ミナギも誘ってみるか。

あいつも資料室はよく使ってるしな。喜ぶかもしれない。

 アギトは……、まぁ言うまでもなく嫌がるだろうな。



「ただいま」

「おかえりー。なんだったのー?」

「やっと帰ってきたな、ユウリー。待ちくたびれたぜー」

「姉貴、放課後資料室の整理するんだが一緒に来るか?」

「あ、うん、行く行くー!資料室の整理とか楽しそう♪」

「ん。ならオッケーだな。あとは」

「整理かー、ぼく結構整頓とかうまいんだけどなー」

「ミナギ」

「何々、どうしたのユウリ君」

「こう見えてぼくってば結構力あったりするんだよなー。最近力有り余ってるなー」

「放課後空いてるか?」

「え?えぇ!?ちょ、ちょっと待ってね?空いてるけど、何かな?」

「きっちりそろえるのとかもかなり得意だったりするんだな、これが!」

「資料室の整理をするんだが一緒に来るか?」

「あー、そう、そういうことね。うん、行くよ。いつもお世話になってるし整理手伝えば新しい発見とかもあるだろうしね」

「うぉっほん」

「よし、んじゃこのメンバーでいいか」

「ちょっと待ってよ!?なんでぼくは誘わないわけ!?役に立つよ!?」

「あぁ?お前誘ったってどうせ来ないだろ」

「そんなことないよぼくだって行くよ!」

「そうか、本当に来るんだな?」

「あぁ行くよ!もちろんだよ!んで、何するんだっけ?」

「聞いてなかったのかよ……」

「整理とかなんとか聞こえた気がするけど」

「資料室の整理だ」

「あ、ぼくちょっと放課後用事思い出しちゃったなー、申し訳ないなー、また明日なら大丈夫なのになー」

「来るんだろ?資料室整理」

「い、いやちょっと用事が」

「もちろん行くって言ってたよな?」

「そ、そんなこと言ったっけかなー?覚えてないなー?」

「そんなことないよぼくだって行くよ!とか言ってたのはどこのどいつだっけ?」

「そんな無責任なこと言ったのはどこのどなたさまなのかしらー?」

「来るんだろ?」

「え?だから用事が」

「ないんだよな?」

「そ、そんなこと」

「来るんだよな?」

「え、えっと」

「来・い・よ、アギト?」

「は、はい」

 自分で言い出してこれだからなぁ。これだけ言い含めても逃げ出しそうな予感はするが。


「ゆぅちゃんって時々強いよね」

「いや、ユウリはいつも強いじゃん……」

「ヘタレって言ったのはどこのどいつだよ」

「どこのどいつなのかなー?」

「てめぇだよ。もういいから飯食うぞ。時間なくなる」

「うぇー、しかし資料室整理とかめんどくせー」

「来るんだろ?」

「あー、行きます、行きますよ!」

「ハジメ先輩も来るらしい」

「あ、そうなんだー。なら百人力だねー」

「指示とかはハジメ先輩がしてくれるらしいからよっぽど安心して作業できるだろ」

「あの人そんなにすごいのかー」

「お前は本当に何も知らないんだな。部活入ってるくせに」

「だって入部するときの一回っきりしか会ってないんだからわかるわけねーじゃん」

「偉そうに言えることじゃねぇだろ。反省しろよアホが」

「へーへー、すみませんでした。んで、そのオワリ先輩だっけ?その人何がそんなにすげーの?」

「ハジメ先輩だ、お前ふざけてんのか」

「ごめんなさい、マジで怒った顔しないで」

「はぁ……、ハジメ先輩は文化部連盟長だよ」

「ナニソレ」

「お前本気で何も知らないんだな」

「だってぼく部活行ったことないし」

「それにしても連盟長知らないってどういうことだよ」

「ごめんごめん。わかんないもんはわかんないんだからしょうがないじゃん。教えてよ」

「この学校は結構文化部に力を入れてることは知ってるよな?」

「あぁ、うん、それくらいなら」

「他の学校は知らないがうちの学校は文化部が50近くあるらしい。で、だ。そんだけ多ければ当然なかなかうまくまとめられないし生徒会では処理しきれなくなってしまう。それでできた機関が文化部連盟」

「ほ~。具体的に文化部連盟は何すんの?」

「まぁ基本的には予算管理とか文化部棟の管理、文化部設立審査や部活動の活動審査などなど。名ばかりで遊んでる部活がないか審査したりするんだよ」

「それって神秘論研究会引っかかんないの?」

「神秘論研究会をなんだと思っている」

「ただくっちゃべってる部活」

「自分の入ってる部活の活動内容くらい把握してやがれこの腐れ悪友1めが」

「うわーん、また名前が悪友に!?」

「自業自得じゃん、アギトくん」

「まったくだ」

 確かに普段はしゃべっているだけの部活ではあるのだが基本的には個人の研究が部活内容である。

そして俺や姉貴、ミナギにとってはこの会話の時間が結構研究内容に関わってくるのだ。

仲良し三人組は三人で意見を交し合っているし、部長と副部長は本を読むことが研究に繋がっている。あれは無意味な行動ではない。


 ちなみに俺は行動原理、と言う人の行動の元になる何かを神秘として研究している。

何故この人はこういう行動を取ったのか、そこにはどういう意味があるのか、と言う。

幼児体験によって左右される小さな行動の癖なども研究対象になっているのだ。

それゆえ俺は人の行動や会話の節々の癖などを見極めながら研究している、というわけ。


 姉貴は愛情について。様々な表現や会話の内に秘められた想い、行動の中に秘められた想いを研究している。俺やミナギは結構隠すタイプなので研究対象としてすごくいい対象らしい。


 そしてミナギは言葉。言葉という神秘。もう言うまでもなく言葉というのは不思議なものであり、神秘だ。様々な意味での研究を行っているらしい。

それゆえかなり言葉に敏感で、この前みたいにちょっとした変化ですら気付いてしまう、というわけだ。


 そんな感じで俺たちが部活中に会話しているのは決して無意味な行動ではない。まぁ、こいつみたいに単純な奴にはわからないのだろうが。


「まぁそんなわけで文化部ってのはたくさんの人が在籍しているわけだ。その文化部連盟の長であるハジメ先輩がどれだけの手腕を持っているのかって言うのはさすがのお前でも想像が付くだろ?」

「確かにさすがにすごいなとは思うけど。そんな人が神秘論研究会にいていいの?」

「お前はどんだけ神秘論研究会をバカにしてんだよ!?」

「ご、ごめんってば!」

「ったく。もし小さい部にいたとしてもその人の実力まで小さいとは限らないだろ」

「そっか、確かにそれはそうだね」

「信頼に足る人物だよ、ハジメ先輩は」

「ユウリがそうはっきりと認める人って珍しいもんな」

「そうだよー?ゆぅちゃんが珍しく本人に対して尊敬していますって言っちゃうくらいの人なんだよ」

「そ、それはすげぇ!?」

「俺はどんだけ素直じゃないと思われているんだ……」

「素直じゃないじゃん」

「素直じゃないよねー?」

「姉貴はともかくお前に言われるのはむかつく!」

「理不尽だー!?」

 悪友だけど、なんだかんだでこいつがいると笑いが絶えない気がする。

バカだし、どうしようもない奴だけど。

それでも、友達で居続けられる程度にはこいつのことを嫌いではないんだろう。

まぁ、はっきりとは言ってやらないが。


 なんだよ、結局俺素直じゃないじゃん。

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