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「晩ご飯何がいいー?」
「あー、牛丼と豚汁がいいな」
「いいねー、それじゃそうしよっか」
姉貴と二人で買い物に来ていた。駅から少し歩くとあるショッピングモール。
ここと例のミナギに見かけられたスーパーの二つで普段買い物している。スーパーのタイムセールでめぼしいものを買ったあとでこちらへ来るのだ。
タイムセールで買ったものからメニューを考えて残りをショッピングモールで買う。そうするとメニューも考えやすいし安めで済む、と考えてのことだった。
まぁ誰かに教わったわけでもなく姉貴と俺が二人で考えた結果、なのでもっといい方法もあるのかもしれないが今のところそんな感じで普段生活してきていた。
「あ、サトイモさんが安いよー。ラッキーだね」
「サトイモとか久々だな。煮物とかには最高だがなかなか下処理が面倒だし」
「ゆぅちゃんがやってくれるからお姉ちゃん知らなーい♪」
「いや、やるけどな?それ当たり前みたいに言うか?」
「ゆぅちゃんがやってくれた方がおいしいよー」
「それはわからねぇが。まぁ、いいか」
別に料理嫌いじゃないしいいんだけどな。朝は毎日姉貴に任せているわけだしそれくらいはやらなくては罰が当たるというものだ。低血圧な俺は朝めちゃくちゃ弱い。姉貴は朝からハイテンションだから特に朝が苦手と言うことはないようだった。羨ましい限りだ。
「こんなところか」
「だね~。特に他に買ったほうがいいものってあったっけ?」
「んー、特に思いつかないが」
「じゃあ帰ろっか」
「だな」
荷物をほとんど俺が持ってそのまま帰途へ就こうとした、のだが。
「あ、みぃちゃんだー」
「しぃちゃん、それにユウリ君」
「よっ」
姉貴がパタパタとミナギを見つけて寄っていくので俺も付き合わざるをえず、ミナギに片手を上げて見せる。ミナギも笑って手を上げてくれた。ノリの良いやつだ。
「よっす。買い物?」
「その通りだ。よくわかったな」
「そのエコバッグを見てわからない人がいたらむしろびっくりだよー」
「実はこのエコバッグ俺の手作りなんだ」
「え、またまたぁ。そんな出来のいいの手作りなわけが」
「なくはないんだなぁ、これが。ゆぅちゃんってこう見えて手先が器用で裁縫とかすっごく得意なんだよ~♪」
「ということなんだ」
「え、えぇええ!?」
そこまで驚くことか?てかそれって結構失礼じゃね?
待てよ、姉貴もこう見えてって失礼だろ。
「すごい、しっかり縫ってあるし……」
「いや、そう難しい形でもないしミシン使ってるからそんなに大したことはしてないぞ」
「いやいや、男の子がここまでできるのってそれだけでポイント高いよ!」
「何のポイントだよ」
「モテポイントだよ~。ゆぅちゃんモテモテ~♪」
「モテたことねぇよ。そもそも自慢することでもないから他人に言ったことないしな」
「ゆぅちゃんってそうやって自分が優れてるとことか人に見せたがらないよねー」
「ユウリ君目つきであんまり人が寄り付かないしねぇ。良い人なのに」
「目つきは好きでこうなわけじゃねぇし。良い人でもねぇよ」
「見た目は不良男子高校生!頭脳は乙女!その名はシノノメ ユウリ!」
「黙れその口ふさぐぞクソ姉が!」
「ゆぅちゃんが怖いよ~」
「ユウリ君口ひどすぎるよ。もうちょっとやわらかく」
「黙りやがってくださいませ、そうしてくださらないのならその口を縫いとめて差し上げますよ」
「むしろ恐怖が増大したよ!?」
「注文の多い奴だ」
「あたしのせい!?」
「ならどうしろって言うんだ」
「静かにしてくれないともう口利いてあげないんだからねっ(チラッチラッ」
「ツンデレかよ!?しかもちらちらって擬音わざわざ口にしたらただのぶりっ子にしか見えねぇよ!」
「静かにしてくれないとその口にオレの指ぶちこんじゃうゾ☆」
「なんだそのキャラ!?指ぶち込むとかのど危ないだろ!?」
「口縫いとめるとか言った人のセリフじゃないよね」
「いや、自分でも思ったけどな」
「現実から目をそらすな!真実を受け入れるんだ!ユウリ君、君は女の子なんだ!」
「女じゃねぇよ!?どこからどう見たら女に見える!?お前こそ現実を見ろよ!?」
「えっと、目を瞑って耳をふさいでユウリ君を思い浮かべたら」
「ただの妄想じゃねぇかよ!」
「そうとも言う」
「そうとしか言わねぇよ!?」
そしてそのやり取りはミナギから漏れ出したクスクス笑いでようやく打ち切られる。釣られて姉貴が笑い、俺はため息を吐いた。
「やっぱりユウリ君って面白いよね」
「それはお互い様だろ」
「あ、てことはあたしも面白いこと言えてるってこと?なら嬉しいなぁ」
「みぃちゃんもゆぅちゃんも面白かったよ♪すっごく楽しい~」
「ミナギとはなんか話しやすくてな」
「あたしもユウリ君とは話しやすいかも」
「いいなー、私もそういう問答みたいなのやってみたいー」
「また今度な」
「しぃちゃんも相手見つけるといいよー」
「そだね♪」
「それじゃ時間取らせちまったな。しかし楽しかった。また明日な、ミナギ」
「ううん、こっちこそ楽しかった。またね、ユウリ君、しぃちゃん」
「ばいばい、みぃちゃん」
なんだかミナギとは相性がいいみたいですごく話が弾む。ミナギもそう感じてくれているみたいでいつもこうやって唐突に始まる問答。すごく楽しくて、ミナギも楽しんでいるのが伝わってきて。それが、なんだかとても嬉しかった。
本当に、ミナギからはいつも不思議な感覚をもらう。