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「ゆぅちゃーん、お昼だよー♪」
「テンション高いな。ご飯のたびに喜ぶって何歳のガキだよ」
「16歳のおっきなおねーちゃんだよー、いえー」
いえー、とかいってピースサインを出す超優等生で変態な姉貴。周りはもう慣れたのかあからさまに変な顔はしない。遠巻きにちらちらとは見ている。気になるのでやめてほしいんだがまぁ姉貴の外見は間違いなく目を引かれる美少女なわけだから仕方がないか。
あれさえなければ誰にでも自慢できるような姉貴なのだ。
「昼は何持ってきたんだ?」
「うんー、それじゃ準備するよ」
「ん」
姉貴が弁当の用意をしていくのを横目にこっちはお茶を用意していく。ちなみに姉貴は別のクラスだ。そうじゃなかったらやばかったのでありがたい。中学のときは同じクラスになったこともあって、そのときに起きたのが授業中に我慢できなくなりやがった姉貴が走って俺の指をなめにきたと言う事件があったせいだ。
なんか俺の勉強姿を見ていたら我慢できなくなったとかで。そのせいでその後お姉ちゃん係とか言う勘弁してほしい名称の役をおおせつかったと言うオチがあるのだが。
別のクラスならとりあえず授業中は我慢できるようなのでその辺は学校の判断、なのだろうか?わからないがとりあえず今のところ助かっている。
「できたよー」
「んじゃ、アギトが来たら食うか」
「アギトくんどこ行ったの?」
「トイレじゃね?」
「そっかー。また先生からの呼び出しなのかなと思っちゃった、てへ」
「てへじゃねぇよ。そう頻繁に呼び出されてたら留年するわ」
まぁその心配がないとは言い切れないのが悲しいところなんだが。友人よ、少しは真面目に勉強しやがれ。
「今日は呼び出しじゃありませんとも」
「おかえり、悪友1」
「また悪友1!?だから悪友2以降いるのデスカ!?って言うかぼくを悪友扱いするのもひどくね!?」
「今頃気付いたのか」
「日ごろの行いのせいなのよ~♪」
「ちょっ、お姉さままでそんなこと言うのですか!?アレー?ぼくってそんなに日ごろの行い悪かったっけー!?」
「悪くなかったと思えるお前がすごいよ」
「ふふふ、ぼくってすごいポジティブだからね!褒めても何もでないよ?」
褒めてねぇ。ジト目で姉貴とともにアギトを注目。ガチで言っていたらしくきょとんとしているアギト。こいつの人生は本当に気楽そうでいいなぁ。
絶対になりたいとは思わないが。
「あふぃふぉひゅんにぉふぉにょみゃへみゅふぃひゃゎみにゃわいひゃいよにぇー」
「いきなりくわえてんじゃねぇよ!姉貴は十分前向きだからそれ以上アギトみたいにはならないでくれ!」
「え、今ので何言ったかわかったの、ユウリ。さすがに愛情のレベルが違う!おみそれいたしました!」
「ゆぅひゃんにょあひひゃふふぇふぇわひゃひにぉみょにぉにぁにょー」
「黙れこのブラコンやろうが!俺はシスコンじゃねぇ!」
「会話が成立しているのか全くわからないけどなんとなくお姉さまの言葉はユウリの反応でわかる気がするね」
「あひひゃふふぁひゅひりゅはりゃゆぅひゃんゎわひゃひにぉふぉひょわはゎひゃりゅにぉー」
「そう言われると反応したくなくなるんだが」
「通訳してー」
「それより離せよ姉貴。もういいだろ」
「みょーひょっふぉー」
さすがにアギトも呆れ顔というか、いや、羨ましがってるのかこれ……
「マジでうちにもお姉さまがほしい!」
「こんな変態でいいのかよ」
「おーるおっけー!むしろ最高!ひゃっはー!」
「え、ちょ、二人ともなんでそんなに離れるの!?」
「キモい」
「ふぉぁうぃ」
「端的なだけにガチで傷付くよ!?って言うかくわえたままだったのに何その息の合い具合!!ずるい!」
「姉貴、今度からそっちの教室で食べようか」
「ふぉーひよっふぁー」
「ちょ、ごめんなさい、もう変なこと言わないから一緒に食べようよ!?」
「……」
「ひー」
じー、っと二人でアギトを見つめる。アギトはたじたじとしながらその視線を受け止めていた。
「はぁ、まぁ休み時間がなくなっても仕方がないし食べるか」
「んー、にむぷりゅっ」
言いながら姉貴から指を抜き取る。微妙に恨みがましい視線。
「抜かないとご飯食べれないだろ」
「イケル!」
「根拠がねぇよ」
二人で席に戻る途中、クスクスと笑う少女が一人。
「いつも楽しそうでいいね」
「そう見えるか?」
「違うの?」
「まぁ、否定はしない」
「そっか、ちょっと羨ましいかも」
「あんな変態どもの相手でもか?」
「うん」
「……変な奴だな、ミナギは」
「たまに言われるけどひどいよー」
その苦笑いの表情に少しだけ胸が高鳴る。何故かこの少女、ミナギの前でだけはいつもと違う感じがするんだよな。よくわからないが。
「どうしたの、ゆぅちゃん?お茶冷めちゃうよ?」
「散々時間取らせたのはお前らだろうが……」
ため息を吐きながら席に戻っていく。もう一度クスクスとミナギの笑い声が聞こえて、少しだけ顔が熱くなった。ホント、なんなんだかな、この感じ。