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5 男性陣の情報共有

「ロザリーは、完全に捨て駒だね」


 昨夜、眠ってしまったロザリーの心と記憶を探ったクリスは、そう結論付けていた。


 今、クラレンスの執務室にいるのは、クラレンス、ダグラス、次期宰相候補でありキャロルの兄であるリオンである。

 クリスは、執務室を人払いした後に、更に結界を張っていた。

 アルンティルの暴君王のせいで、王宮内はちょっと物騒な事になっている。

 用心をすることに、超したことは無い。


 今いる、このメンバーはいわゆる精鋭という奴で、一人でも脱落されると痛いとクリスは思う。

 今回の、賢者が戻ってきている状態を、次世代に引き継ぐのは自分だけでは無理だと判断していた。

 特に、ダグラスは、現国王の側室である母親と弟妹の身の安全を保証して貰うという条件を呑んで、母親の実家のウィンゲート公爵家の跡取りになる覚悟をしている。

 狡猾で油断ならない人物として、生涯、現政権の政敵を演じなければならない。他の貴族が頭角を現さないように。


「ロザリーが捨て駒?」

 クラレンスがクリスに聞き返していた。

「そう。アルンティル王国は、ここ2~300年ほどの新興国だけど、独特の制度を保っているんだよ。ロザリーに限らず、他国に出される可能性のある人間には、自国の情報を全く与えない。行った先の国に従順であれと教育されてるだけだ」


 自白剤を警戒しているというより、クリス王子を始めとする、心を探れる者達を警戒しているのだろう。

 賢者といい、ピクトリアン国王といい、未だにそういう能力を保持している者は少なからずいる。


「それでは諜報活動をする可能性は、無いのでしょうか?」

 リオンが訊いてくる。向こうの情報が入らず、こちらの情報がダダ漏れなのが一番困る、と言う具合に。

「そういうつもりなら、国王か王太子の側室にという条件を付けているだろう? 深層まで潜ったけど、ロザリーの無意識下にもそれをにおわすような指示(きおく)は無かったからねぇ」

「まぁ、そうだな。こちらの制度を知らなくても、王宮を出て行くかもしれない人間には、普通、嫁がせないよな。しかし、アルンティル王国か……」


「何か、気になることでもありますか?」

 リオンがダグラスに訊く。

「いや……、結構、武器を仕入れてるよなと思って」

 ダグラスも、頭の中に帳簿を浮かべながら言っている。アルンティル王国は、何だかんだ言っても、ウィンゲート公爵家のお得意様だ。


「ずっと戦争しているからね。ある程度の国土になるまでは、近隣を潰していくんだろうね。勢いに乗っているから、今、あの国とは戦争したくないな」

「勝てませんか?」

 リオンがクリスに訊いてくる。

「勝てるけど……勝ち方だよね。勝てたけど、国土の半分焼け野原なんて、シャレにならないでしょう?」

 賢者と共有している部分で、何度シミュレートしてもそう言う結果しか見えない。

 あの暴君王は、確実に後の世に英雄王として名を残すだろう。

 勝てるだけマシだと思って貰いたい。


 そういう会話をしている中、クラレンスは黙って考え込んでいる。

 いや、ある可能性について思い付いたは良いが、口に出して良いものか迷っているようだった。

「クラレンス。君の考えはある意味正しいと思うよ。僕も、その可能性については昨夜考えてみた」

 クリスが、クラレンスの心を読んで、代わりにと言うように口を開いた。


「なんだ? その可能性って」

 ダグラスが聞いてくる。

「ロザリーをここで死なせるために、送り込んできたと言う可能性だよ」

「なっ」

 冷静なクリスに対し、ダグラスは絶句する。

「アルンティルの、あの暴君王ならやりかねないって話。どんな形でも我が国(ここ)でロザリーが死んでしまったら、正当な理由で戦争を仕掛ける良い口実になるだろうね」


「アルンティル王国からすれば、うちは目障りだろうから。潰せるものなら潰しておきたいんだろうな。しかもこの作戦、失敗してもアルンティルには傷一つ付かない狡猾さだよ」

 クリスの発言を受けてクラレンスも自分の考えを言う。

 二人の発言に、固まってしまったダグラスとリオンに対して

「まぁ、僕らの憶測だよ」

 クリスは、軽く言った。

 心の底では、面倒くさいことになったなと思っていたけれど。


「と言う事で、あの子は僕の好きにして良いって事で、かまわないかな? 国王陛下からせっかく貰ったんだしね」

 そう、みんなに確認していた。


「かまわないけど……。その言い方、キャロルの前ではしないでくれよ」

 クラレンスは、お前はそんな言い方しか出来ないのかって感じで言ってる。

「そうですね。後が大変なので、お願いします」

 リオンの方は、妹の憤慨する姿が目に見えるようで、うんざりした感じで言っていた。

 そういう二人を無視して、クリスはダグラスに話を振っていた。


「あっ、ダグラス。今度、身内でのお披露目パーティーがあるじゃない。お願いがあるんだけど……」

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