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「では、私から話そう。まず、占い師の内訳だが私目線、誰がもう一人の真占い師なのかまだ分かってはいない。しかし皆の言うように、ここには各敵陣営の一人ずつが混じっているのだと思っている。狐か背徳者、人狼か狂人は分からないが、しかし陣営の者達には推測出来ているだろう。人狼なら狂人が潜伏していると知っているだろうし、狂人なら人狼が潜伏していると分かっているということだ。狐はお互い分かっている者同士なので、この限りではないが。ただ、あの勢いから見るに、私は人狼の方が出ているのではと思っている。霊能者なら吊られる可能性があるし、狂人をそっちに回そうと考えるはず。もっとも、狂人が知らずに出てしまって狼陣営が二人出てしまっている可能性もあるが、それは霊能者が出て来た時の数で予想出来るだろう。」
彰でなくても、それは予想出来ることだった。なので、皆は分かっている、という風に頷いて先を促した。
「それで、啓子さんが白と出ているわけですが、他の占い師の結果を見てどう思っていますか?」
登が言うと、彰は答えた。
「俊の美津子さん白は分かると思った。彼女は積極的に村を見て考えようとしている姿勢が見える。敦也の憲二黒は、私目線でもないわけではないので、それだけで狂人だと疑ってはいない。玲が私を占ったのも、私がこの中では一番年上だろうし、言葉が強いので脅威を感じたと言うなら分かる気がする。それに、彼は後から出て来て占い先を言っているのに、わざわざ占い師に出ている私を占って白だと言った。人外なら、私に何か出そうとしていたとしても、占い師ならば悩むだろう。同じ占い師に白を出すと、後々私を黒塗りすることが出来ないし不利だと思うのだ。なので、本当に占って結果を見たのでそれを言っている真占い師なのかもしれない、と、他の占い師より少し信頼目は私の中で上がっているな。」
それを聞いて、敦也は少し眉を寄せた。昨夜は間違いなく彰は、自分を占い師だと思っていたはずだ。それが、今朝の占い結果を見て、そう思ったというのか。では、自分はやっぱり彰を占ったら良かったのだろうか。
だが、何も知らないだろう玲と比べて、自分は彰とあんな風に話をした後なのだ。それで彰をとなると、恐らく玲とは違った感想になっていたのかもしれない。
登は、頷いてから俊を見た。
「じゃあ、次は俊。お前はどう思う?」
俊は、答えた。
「オレは、彰さんの啓子さん占いは分かると思った。オレも寡黙な人達にするか迷ったんだ。結果、場を動かして行けそうな美津子さんにしたが、初日は寡黙でも良かったと思う。玲の彰さん占いも、オレと同じように場を動かして行く人を見るって事で理解出来る。敦也は…占い理由は、ちょっと弱い気がかりするな。それで白ならまだしも黒なのが、いまいち信用出来ない。とはいえ確かに占って出たなら仕方ないし、オレ目線でもあり得る事だから投票するほど怪しんでいるわけでもない。」
登は、腕を組んで俊を真剣に見つめた。
「じゃあ、お前の結論は?この中でお前の相方は誰だと思う?分からなかったら、偽だと思うのは?」
俊は、眉をぐっと寄せて他の三人を代わる代わる見たが、それから、息をついた。
「…分からない。彰さんの自信に満ちた感じは信用しようかと思わせる何かがあるし、玲の彰さん占いは真だからこその選択の気がするし…あくまで消去法だが、オレから見たら敦也かな。ちょっとの差なんだが。まだ話を聞いてみないと決められない。」
敦也は、それを聞いてやはり黒を引いているせいか、と口惜しく思った。とはいえ、本当に黒なのだから仕方がない。自分は、昨日は怪しい所を占うことばかりを考えていたが、それでは初日はこんな弊害があるのかと少し、後悔していた。
登は、どう思ったのか分からないが、次に敦也を見た。
「で、ちょっと疑われた形になるけど、敦也はどう思う?」
敦也は、どう言えばいいのかまだ考えがまとまらなかったが、嘘を付けば絶対に後々不利になると分かっていたので、正直に答えた。
「オレは昨日、怪しい人を占うことばかり考えて、話す人話す人、怪しくないかばかりを探って見ていた。最初は、彰さんがあまりに頭が切れそうなので、敵だったら怖いから占おうと玲と同じように考えていた。それから、キッチンで会った女性達の話を聞いていて、話し方から怪しいと思った人が居たのでその人にしようかとも迷った。だが、キッチンから帰って来る時に、今度は二階で憲二と俊に会って…今度は憲二が、どうも敵を作りたくないような感じだったので、人外なのかもと思った。だから、オレは昨日、この三人で悩んだ。彰さんが訪ねて来たので、彰さんとも話して、考えを聞いたら自分と考えていることが似ていたので、怪しくないと思った…なので、他の二人と悩んだ結果、憲二を占ったんだ。そうしたら、黒が出た。オレなりに悩んで選んだ結果だったのに、それで黒を当てて疑われるのに参ってる。」
登は、うーんと唸ってから頷いた。
「だな。占い師が二人しか出てなかったら、そもそもお前の黒は喜ばしいことだからなあ。で、他の占い師に関してはどう思う?」
敦也は、慎重に答えた。
「考え方が同じという点で、彰さんが一番相方に近いと思ってる。ただ、俊も嘘を言っているように見えないし、玲も、オレが話す前はそもそもが占おうと思っていた先を占って白を出してるから、考え方が同じという点で疑うにはまだ早い気がする。そう考えると、別にオレを怪しいと選んだからとかではなくて、嘘を言っていないように思うって漠然とした理由しかない俊が今の時点では怪しいと、オレ目線では思うかな。」
登は、息をついた。
「言ってることは分かるよ。難しいわな。じゃあ、最後に玲は?」
玲は、特に緊張する感じでもなく、答えた。
「そうだねえ。今の話を聞いてても、誰も怪しくないんだよー。占い師が実は4人だったって言われた方が信じるなって思うぐらい。でもねえ、僕が占った先の彰さんは白で、真占い師で無かったら狂人か背徳者になるでしょ?彰さんは、そんな風には絶対見えないんだ。もし占って無かったら、真でなかったら狼かなって思えるほど自信にあふれた感じで。だから、僕としては彰さんが僕の相方かなって。この中で、唯一僕が占い師に出てる人を占ってるでしょ?他の人達と目線が違うんだ。」
登は、うんうんと頷いた。玲の説明に納得したようだ。
「玲の目線だとそうなるよなあ。とすると、玲から見たら敦也と俊が怪しいって事になるか。」
玲は、困ったように首を傾げた。
「うん。でもね、その二人も怪しい所が今のところ無いんだよね。だから困ってるんだ…でも、僕は占ってるから。彰さんは少なくても狐でも狼でもないってことは知ってるよ。これからの話次第で狂人かもとか、背徳者かもってなるかもしれないし、はっきり言いきれないよ。」
登は、頷いたが少し考えて、他の者たちを見回した。
「で、誰か今のを聞いて意見はあるか?」
すると、希美が手を上げた。
「玲君の話だけど、この状態だとあからさまに彰さんを囲いに行ってるように見えるよね。でも、狂人には人狼が見えないから、狂人じゃないと思えるし、人狼は狂人を庇う必要が無いしやっぱり見えないから、玲君はどっちでもないって思えるわ。だとしたらお互いを知ってる背徳者と狐の組み合わせを思い浮かべるんだけど、両方が占いで露出するなんてあり得ないし、考えられない。だから、玲君が真占い師の一人にやっぱり見えるかな。」
だが、それには美津子が反論した。
「でも、もしかして白を出した先が人狼だったから、つまり、彰さんが占った先の美子さんが人狼だったから人狼が狂人と思って庇ったのかもしれないわ。」
だが、それには雄大が首を振った。
「だとしても、人狼は狂人を庇わないよ。まして同じ占い師に出てるのにさ。それに、仮に美子さんが黒だったとしても、人狼には彰さんが狐なのか背徳者なのか狂人なのか分からないのに、わざわざ占い結果で庇うなんてあり得ない。だから、美津子さんの考えは違うと思うな。」
忠彦が、腕を組んで口を開いた。
「だな。オレも雄大と同じ意見だ。こんな初日でしかも第三陣営が居るのに人狼が庇うとかおかしいしさ。玲は本当の結果を言ってると思うんだ。だから玲目線、彰さんが限りなく真に近いってのもその通りだと思う。となると、他の二人なんだけど、今のところ怪しい所が見当たらないんだよなあ。これ、ほんとに今の状態で占い師吊るのか?決め討つには情報が無さすぎるし、全員吊るには縄がもったいない。狐と猫又が居るから、今縄が8縄あっても一気に減る可能性だってあるんだぞ?どうせ縄を消費するなら、黒を吊った方が良いんじゃないのか。」
それには、純次が言った。
「それはそうだが、霊能者だって二人、酷い時には三人出て来ることだってあり得る村なんだぞ?黒を確定できるとは思えないし、占い師の真贋がそれでつくとは思えない。占い師は、あくまで呪殺してもらわないと信じられない状態だろ?」
すると、彩芽という、肩までの髪の明るい女子が口を開いた。
「どうするの?じゃあ霊能者を出してみて、黒を吊るか決める?もしたくさん出て来たら、そっちから吊る方向が良いんじゃないかな。そしたら人外がたくさん出て来るし、占い師の情報も出て来るし、占い師を決め打ちするにしても間違いにくくなるんじゃない?」
皆が、黙って登を見た。登は、じっと眉根を寄せて考えて皆の意見を聞いていたようだったが、唸るように言った。
「…困ったな。確かにそうなんだけどよ…霊能者に任せるよ。別に明日出るって決めたなら、それでもいい。一人だったら鉄板守りするから、心配しなくて大丈夫だとだけ言っておこう。そうでなかったら、まあ霊能ローラーになるんだろうけどさ。」
美津子が、頷いた。
「そうしましょう。グレーの数が多すぎるのも考え物だし、初日に出しちゃって露出させちゃったら、そっちの方が破綻も誘えるかもしれないし良いじゃない。人外も、吊られると思ったら簡単には出て来れないんじゃない?あんまり出て来ないと私は思うわ。もしかしたら、確定するかもと思ってるぐらい。」
希美も、頷いた。
「そうよね。霊能者に任せたらいいと思うけど、ここは一度COを募ってみましょうよ。」
少し待ったが、他の者たちに異論はないようだ。
登は、頷いて皆を見回した。
「よし、じゃあ霊能者、出ようと思うなら出て来てくれないか。」
すると、すっと奈津美が手を上げた。
「はい。」皆が、一斉に奈津美を見る。奈津美は、言った。「私が霊能者よ。」




